「呪いの 160㎝サイズ魔法少女抱き枕」
カタリは古い骨董品屋で、一つのオルゴールを購入した。
見た目は普通の木製オルゴールだったが、店主はなぜか引きつった顔で言った。
「……あんた、本当にそれを買うのか?」
「ん? まあ、ちょっと気になったからな。」
「いや、そのオルゴール……呪われてるんだ。」
「そうか。Suicaは使えるか?」
「使えるわけないだろ骨董品屋だぞ」
「確かに!」
カタリは淡々と頷き、会計を済ませた。
家に帰り、さっそくオルゴールを鳴らしてみる。
カラン……カラン……
ノスタルジックな音色が部屋に響く。
「ほう、いい音じゃないか。」
しかし——
突然、オルゴールの音が歪んだ。
「お前を呪ってやる……」
ふいに、冷たい声が響く。
——呪いのオルゴール、本物だった。だが、カタリは微塵も動じない。
「なるほど、呪われたアイテムってわけか。」
「店主言ってただろ……」
「説明書は読まないタチなんだ」
すると、オルゴールの中から、黒い霧のようなものが立ち上る。
「お前を呪ってやる! 死ぬまで苦しめてやるんだからな!!」
「ならば仕方あるまい、本体を破壊するしかないな。」
「ざーこが! たとえこのオルゴールを壊したとしても、私は別の物体に乗り移ることができるのだ!!」
「ほう?」
カタリは少し考えたのち、部屋の隅から一つのアイテムを取り出した。
「ここに。160㎝サイズの、魔法少女の抱き枕があるんだが」
怨霊の気配がピタリと止まる。
「…………だからなんだ?」
「これに宿ってくれないか?」
「何故だ」
「オレの願いだ」
「誰がお前の願いを叶えると言った!」
怨霊は少しキレていた。しかし、カタリは淡々と続ける。
「ああ、声を聴く限り。君は良い感じのロリボイスだなぁって思って。魔法少女に、ロリボイスの怨霊がつく。完璧な組み合わせだ」
「はぁ!? 何言ってんだ!? ふざけてんのか!?」
「嫌なのか?」
「嫌に決まってんだろ!!第一それ、半分、裸じゃないか!なんで私がそんな恥ずかしいものに宿らなきゃいけないんだ!!!」
「怨霊さんの気持ちを考えて、何が一番いいかな?って思ったら、これしかなかった。」
「え?え?意味が分からない」
「ところで、君は自分で宿り先をコントロールできるのか?この距離でオルゴールを破壊すれば一番近いこの枕に移るしかないんじゃないか?」
「っぐ!や、やめろぉぉ!お前、このオルゴールの音いいなって言ってただろ!」
「すまん、ありゃ嘘だ」
「何だとコイツ!!!」
カタリはスッと武器を掲げる。
「まさかDIY用に買ったハンマーがこんなところで役に立つとはな。」
「待てぇ!わかった!お前を呪うのは止める!だから!!!」
「気にするな!ロリカワボイスに一生なじられるとかご褒美です!」
「やめろぉぉぉぉぉ!!!」
「光になれっ!」
コパァーンッ!気持ちのいい破壊音が部屋に響いた。
「……ッッッッ!!!」
怨霊、謎の唸り声を上げたかと思うと、オルゴールから黒い霧が一気に動き出す。
——ズブズブズブ……!!
そして霧は、160㎝サイズの魔法少女の抱き枕に吸い込まれていった。
抱き枕の方から、小さく震える声が聞こえる。カタリは満足そうに頷いた。
「よし。」
「よくない!!」
抱き枕(に宿った怨霊)ブチギレ。
「お前!絶対呪ってやるからなぁ!!!二度と安眠できると思うなよっ!!!!」
「ああ、でも君。抱き枕だな」
「はっ!…………お前、まさか、そんな、そんな酷いことを」
「これから毎日一緒に寝ようぜ!」
「くそがぁぁぁぁぁ!!!誰か助けてくれぇぇぇぇぇ!!!!」
それから数日後——
カタリは友人を家に招いていた。
「お前さ、なんか最近、家の雰囲気変わったな。」
「まあ多趣味だからな。部屋の模様替えなんてよくあることだ」
「つーか、この抱き枕、なんかすげえ睨んでこない?」
「光の加減でそう見えているんじゃないか?残念だが、飾っておくことで手を打とうと話し合ったし」
「?いや、明らかに舌打ちみたいなのが聞こえるんだけど。」
カタリは無言で、抱き枕に軽く触る。
「チッ……!触んな」
「ほらな。(今、喋らなかった?)」
友人、ドン引き。
「心配するな、この部屋ではよくある!」
こうして、カタリの部屋には**新たな相棒(?)**が加わったのだった。