カタリ、母校の旧校舎へ 〜第二回:音楽室のピアノ〜
カタリは旧校舎の音楽室にいた。
**第一回「トイレの花子さん」**では、見事、花子さんをセクハラ行為で圧倒し、彼の株価は止まることを知らない。(下に)
そのせいか、同行する呪いの人形や座敷童子からの視線が痛い。
そんな中——
「抱き枕? 君、なんか動いてないか?」
カタリは違和感を覚え、ふとしゃべる抱き枕に目を向けた。
そこには、160センチの魔法少女イラストが描かれた抱き枕——だが、
「お前への恨みでイラストを動かせるようになったんだ。もう二度とお前が楽しむことのないようにな」
さながら、アニメーションのようにイラストが動き出していた。
「そうか……。こっちも動くのか?」
カタリは反対側を確認するため、抱き枕をひっくり返そうとする。
「やめろぉぉ! そっちは見るんじゃないぃぃ!!!」
「どうせ動くんなら、肌色面積の多い方がよかったんだが」
「誰がお前の希望に答えると言ったぁぁぁ!!!」
「おい、夜中だぞ、静かにしろ」
「お前を髪が伸びる裸人形にしてやろうかぁ!!!」
カタリの持ち物が次々と進化(?)する中、彼は次なる目的地へと向かう。
そう——
「旧校舎の音楽室」。
旧校舎の音楽室の怪談
この音楽室には、こんな怪談があった。
「深夜になると、誰もいないはずのピアノが勝手に鳴り響く」
「ピアノは悔いている」
「……悔いている?」
カタリはその言葉が気になりつつも、音楽室の扉を開けた。
——ギィ……
古びたグランドピアノが、月明かりに照らされている。
カタリは鍵盤にそっと触れる。
——ポロン……
すると、突如、ピアノが自ら音を奏で始めた。
——ポロロン……ポロロン……
それは、どこか悲しげな旋律だった。
「このピアノ、自動演奏機能が付いているのか!」
「別に珍しくもないね」と、ハエトリグモ(ジャックダニエル)。
「待て、コンセントが繋がってないぞ?!」
「鍵盤も光らないよ?!」
「ヴィンテージものの上に内蔵電池式なのか……」
やがて、かすれた声が響く。
「私は……悔いている……」
「しゃべったぞ!」
「音声機能まで付いてるんだね!」
「こいつは高く売れるかもしれない」
「さっそく持って帰ろう!」
「待て……! お前たち、何を言ってるんだ!? 現実を見てしゃべれよ!」
呪いの人形がツッコミを入れる。
「確かに、この大きさでは家に入らないな」
「せめて、もう少し小さければね……」
「違う! 持って帰るかどうかの話じゃない! 今まさに心霊現象が起きていると言うてるんだ!」
「おいおい、心霊現象なら家を出る前から起きているだろう」
「そうそう、私も心霊現象だった。こいつは一本取られたわ……って馬鹿!」
呪いの人形はノリツッコミを覚えた。
数分後——
ようやく状況を理解したカタリは、グランドピアノに問いかける。
「なるほど、悔いているらしいな。君は何を悔やんでるんだ?」
「……私は……全校生徒に歌われるような曲を弾きたかった……!」
「ほう。」
カタリは考える。
「なら、その願いを叶えてあげよう」
「え?!」
——深呼吸。
そして——
「まかはんにゃーはーらーみーたーしんぎょー!!!」
カタリ、何を血迷ったか般若心経を独唱。
般若心経隊、集結
ドドドドドドドドッ・・・・・・・
その瞬間、地の底から響くような大勢の発音のいい声が聞こえてきた。
「「「ぎゃーていぎゃーていはーらーぎゃーてい!!!」」」
!!!
カタリと、唱える者たちの般若心経セッションが再び開幕。
奏でるピアノの旋律を覆い尽くすように、音楽室内に般若心経が響き渡る。
「な、何がしたいんだ?!」
「いいから、このまま弾いてみろ! 君もこの学校のピアノならば承知のはずだ……俺野小学校校歌!!」
「はっ! 俺野小学校校歌!」
「俺野小学校校歌」、開幕
——ポロン……ポロン……ポロロン……ロンロンロン
『俺野小の仲間たち』
作詞:学校関係者
作曲:学校関係者
編曲:グランドピアノ
歌:カタリ&般若心経のみなさん
「「「朝日が照らす道を行こう 力強く、みんなで進む」」」
「「「俺野小の仲間たち 一丸となって夢を追いかける」」」
「「「声を合わせて歌おうよ 俺野小の空 広がるよ」」」
「「「どんな困難も乗り越えて 俺小、俺小、未来へ!」」」
「「「手を取り合って走り出す 挑戦する勇気を胸に」」」
「「「俺野小の教室から 学びを深めて、未来へ進む」」」
「「「声を合わせて歌おうよ 俺野小の空 広がるよ」」」
「「「どんな困難も乗り越えて 俺小、俺小、未来へ!」」」
「おい、何で般若心経のみなさん、ここの校歌歌えるんだ???」
しかし呪いの人形は無視された。
ピアノ、感涙。
「これだ……! これこそ私が弾きたかった合唱曲!!!」
そして——
ピアノはついに「思い残すことはない」と満足し、静かに鍵盤を閉じた。
……かと思いきや、
「……まだだ……他の曲もやってみたい!!!」
カタリ、腕を組む。
「いいだろう。合唱隊の体力は永遠に減らない。気の済むまで奏で唄い続けるがいい!後は任せたぞ、友よ!!」
般若心経隊、親指を立ててグッ!
ピアノ、歓喜。
それからというもの、深夜になると勝手に鳴り響くピアノから、ピアノと合唱が聞こえるようになった。
心霊現象は、さらなる高みへと進化したのだった。 カタリは腕を組みながら満足げに呟く。
「……進化する怪異は、強いな。」
「おい、落ちてないぞ」




