カタリ、母校の旧校舎へ 〜第一回:トイレの花子さん〜
カタリはオカルトマニアだった。
そして、今夜は母校の旧校舎に現れるという霊を確かめるため、深夜の学校にやってきた。
事前に仕入れた情報によると、旧校舎にはいくつかの怪談が存在する。
そのうちの一つが——
「女子トイレの3番目の個室で『花子さん』と呼ぶと、返事が返ってくる」というものだった。
「定番だな、よしやってやろうじゃないか」
カタリは特に恐れることもなく、淡々と準備を整える。
優秀なサポーター陣
髪が伸びる呪いの人形
アダンソンハエトリグモ(ジャックダニエル)
しゃべる160センチ魔法少女抱き枕
座敷童子
「もう、何も怖くない」
「お前はそうだろうな?だけど相手のことを考えろ。深夜にエロ枕と日本人形持って独り言言って歩いている奴なんて怖すぎるわ」
抱き枕は即座にツッコミを入れる。
「それは君自身の事だろう?何を嘆く必要があるんだ。自分に自信を持て。抱き枕」
「お前がエロ枕に写したからだよ!!」抱き枕はキレていた。
「おい、うるさいぞ。相手のことを考えろ」と、呪いの人形。
「お前もエロ枕にしてやろうかぁ!!」と、抱き枕。
「楽しいメンバーだね!」と、ハエトリグモ。
「チッ!(舌打ち)」座敷童子。
「さて、ともかく行くか。」
カタリは世間の目とかそういうのは色々とお構いなしなのだ。
そう、彼はトレンドやブームに流されない確固たる意思の持ち主なのだ!
それはどうでもいいとして夜の旧校舎に足を踏み入れた。
カタリは旧校舎の3階の女子トイレに向かった。夜の学校は静かだ。
足音が床に響き、どことなく不気味な雰囲気が漂う。
そしてそこを厄介な男が歩いていた。この学校に通う生徒たちは、まさか、自分たちの先輩が日本人形とエロ枕を小脇に抱えて旧校舎を徘徊しているとは夢にも思うまい。日本人形と抱き枕はとんだとばっちりだった。
そして、目的のトイレの前に立つ。
「ここが噂の場所か……。」
「お前の母校なんだから噂は聞いて知ってたんだろう?」
「いや、オレが通っていた時はギリギリ新校舎の方だったからな。」
「友達との話にあがったりしなかったのか?」
「友達がいなくてな」
「そうだろうな、悪かった」
「さて、花子さんとやらを呼び出すか。」
——3番目の個室。
伝承によると、ここで「花子さん」と呼ぶと、返事が返ってくるという。
カタリは個室の扉の前に立ち、ゆっくりと息を吸った。
そして——
「花子さん?」
……。
「花子さん、遊びましょー!」
——シーン。
返事はない。
「返事がないな」
「察したのではないか?関わっちゃいけない人だと。」
「はたから見たらヤバい奴だしな」
カタリはしばらく待ち、もう一度声をかける。
「花子さーん、いるか?」
——コン……コン……コン……
個室の扉をノックする音が返ってきた。
「おお、本当にいたぞ。」
カタリは躊躇することなく、扉を蹴破る。
「物を大切にっ!」
そしてそこには——
花子さん登場。赤いスカートの少女。黒髪ボブ。青白い肌。まさに噂に聞く花子像だ。
しかし、花子さん。めっちゃこっちを睨んでいる。
「……なんか怒ってるか?」
「そりゃあ、女子トイレの個室を蹴破ってきたら怖いだろう」
「お前、どこかで見たことあるな……?」
花子さんは腕を組みながら、ゆっくり口を開く。
「あ……お前、座敷童子をもみくちゃにした奴だろ?!」
……確かに、以前泊まった旅館で、座敷童子をモフモフしまくった結果、激怒&舌打ち攻撃を受けた過去がある。
「……情報回ってるのか?」
「チッ!」
カタリが考え込んでいると、背後で座敷童子が舌打ちをした。
すると、花子さんは目を見開いた。彼女の表情が変わる。
好戦的な雰囲気。異様な光を帯びた瞳。
「座敷童子を弄んだ程度で調子に乗るなよ!奴は我々おかっぱ四天王の中でも最弱っ!」
——その笑顔は、どこか狂気じみていた。花子さんは拳を振り回しゆっくりと歩み寄る。
「逃げた方がいいぞ」
「オレは大丈夫だ」
「お前に言ってねぇよ」
「どこから声が?」
「ここから」
そう聞かれてカタリは抱き枕を花子さんの前に突き出す。元々なかった花子さんの血の気が引いた。
「お、お前……。何だそのイラストは?何故、少女が素っ裸なんだ!」
「描いた人に聞いてくれ」
「そ、それで私を呼び出してどうしようと言うんだ!寄るな!」
「待ってくれ、これは………。誤解だ」
「あながち誤解ってわけでもねぇだろ。」
「うわぁあああああ!!!」
花子さんは変質者から逃げた。そして薄らと消えていき、姿を消した。そして辺りは静けさを取り戻した。
カタリは悲しい目で抱き枕を見やる。
「抱き枕………。そんなイラストして恥ずかしくないのか」
「お前が憎いぃぃぃぃいぃぃぃぃ!!!」




