ギルド酒場ーカエル姿焼きー
「おまたせしましたー」
お手並み拝見といこう
「カエルの姿焼きです!」
なんだって?
あ、あのー明里さん?
異世界初心者に対して結構ハードな物を勧めてくれるじゃないの
店員さんも丁寧に手際よくコンロに火を着けて焼き方と食べ方の説明までしてくれてて大変恐縮なんだけれども…
店員さんと目が合った
爽やかに微笑みを返されてしまいましたわ
愛想いいな可愛いぞこのやろう
いやいや、そうじゃなくてね
「明里さんや…これはなぁに?」
「これはカエルです」
英文の例みたいな返答してんじゃないよ!
店員さんがセットしてくれた網の上で焼かれているコイツはやはりカエルで間違いはないらしい。
皮は剥かれてるし、ちゃんと内臓は出してあって頭も切り落とされてるから【カエルの姿焼き】という字面から受ける印象ほどはグロテスクじゃないけどさ
なんなら筋肉質なもも肉が美味しそうではあるけどさ
初心者にならもっとこう…
もうちょっと優しめの食材とかあったでしょ?
ほら、あんたのお母さんがくれた美味しい雑草みたいなさ!
「そろそろひっくり返すけど写真とか撮っておかなくて大丈夫?」
「え、あ、じゃあ…」
あまりに自然に聞いてくるからノリで撮ってしまったわ
ねぇ気づいて!
『私、気が進みません』の顔してるよ
平然とカエル焼いてる明里にちょっとだけ引いてるよ
ひっくり返すのお上手ね!
「おぉ、いい感じじゃない?ほら、足とか美味しそうだよ!」
「ホントだ、美味しそう!カエルってどんな味なんだろう?私食べるの初めてなんだよね」
ホントにちょっと美味しそうに見えてきた。
焼目がついてて香ばしそうだし、むっちりした足はカエルってことを忘れたら普通に美味しそうな鶏肉みたいに見える
カエルは鶏肉みたいな味がするって聞いたことあるし
明里が美味しいって言うならちゃんと美味しいんだろうな
でも、ニヤニヤしてる明里になんかイラッとくるものを感じる。
コイツ…私がカエルに引いてるってことに気づいてやがるな
「昔オタマジャクシいっぱい捕まえて持って帰って明里のお母さんに怒られたことあったよね」
子供の頃の恥ずかしい話で悶えるがいいわ
「あったあった、田んぼに返して来なさいってすごい怒られた!由美香は怒られなかったの?」
「私持って帰ってないもん」
「そうだったっけ?私、あの頃からカエル食べてみたかったんだよね!お母さんにアマガエルは毒持ってるからダメって言われちゃって…」
怒る所そこなの!?
そこじゃなくない?
てかアマガエルって毒あるんだ知らなかった。
「コイツは何ガエルなの?コイツは食べても大丈夫なカエル?」
「ウシガエルだから食用だよ!毒もないし美味しいよ」
良かった
よく考えたらお店で出してるんだからそりゃそうか
「このカエルは大丈夫だけど、寄生虫とかがいて怖いから野生のカエルを食べる時はちゃんと火を通すように気をつけてね」
寄生虫いるの!?
しかも、なんだって?
野生のカエルを食べる時は??
食べないよ
お店で食べるだけで充分でしょ
「もう良さそうだね、そろそろ食べやすいようにカットする?」
「そっか焼けたらカットしてソースか塩つけて食べるんだっけ」
カットってどこを切るんだったかな
足でいいのか?
メインの可食部は足だし、そうだよね
「足を切っていいんだよね?」
「そうそう、食べやすい大きさならどこでも大丈夫だよ」
骨もそのままだけど切れるのかな
おそるおそるハサミを入れると意外とすんなり切れた
足一本と胴体部分もくれた。
ていうか勝手にお皿に乗せられた
「ソースと塩どっちがオススメ?」
「まずは塩でシンプルにお肉の味を試してみてほしい!」
さすが常連はなんでも知ってるねぇ
今からカエル食べるのか。
楽しみなような怖いような微妙な気持ちだ
「じゃあ…いただきます!」
ん?なんか…あれ?
おいしい
おいしいぞ!
口に入れた瞬間は鶏肉っぽい感じなんだけど、鶏肉より柔らかいしジューシー
そんでもって旨味が強い!
鶏肉より旨味あるんじゃないかな
でもなんか、旨味のジャンルが魚っぽい気がする
脂身がないからさっぱりいくらでも食べられそう
「美味しい!塩だけで全然いける!」
「そうでしょ?こっちのバターソースも美味しいから食べてみてよ!」
さっきの塩だけでも充分美味しかったのに
バターソースなんて絶対美味しいやつじゃん
食べなくてもわかる。
もう美味しい
「バターソースはたっぷり付けちゃお!」
はわわぁ美味しいよぉ
カエルの脂身のなさをバターが補ってくれてる感じだ
バターの香りもカエルの旨味と相性良すぎ!
カエル、オイシイ、ワタシ、オボエタ
胴体部分も変わらず美味しかったけど、やっぱり骨が多くて食べにくい。
「カエルって美味しいんだね、びっくりした!」
「そうでしょそうでしょ!次はガッツリ系のお肉だよ!」
普通のメニューもあるって言ってたけど食べさせる気ないな?
ここまできたらなんでも有りだ
かかってこいやー!