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甲子園のヒーロー達

 優と竜也は甲子園の優勝バッテリーだ。

 そして高卒でプロ入りし、一年目から活躍した。

 自然、ファンも多い。


 その今年最初の対戦に、球場は大賑わいだった。

 さて、なにを打とう。

 優は考える。


 今回の竜也は万全だ。

 いや、優の知っている竜也よりひとつ上のレベルの存在だ。

 球速は百五十を超え、変化球のキレも磨きがかかっている。

 正直、早くメジャーへ行けとしか言いようがない存在だ。


 どう対処しよう。

 優は考える。

 答えが出ぬままに、バッターボックスに立った。


 真剣な表情で竜也がマウンドからこちらを見ていた。

 一瞬視線が合った。

 互いに真顔だ。


 高校時代、微笑み合っていた関係はすでにそこにはない。

 二人は少ない席を争い合うライバルだ。


 懐かしい過去に一瞬思いを馳せたが、すぐに現状の壁となった彼の攻略法に意識がいった。

 変化球を打とう。

 そうと決めた。


 と言っても、速球クラスの高速シンカーと高速スライダー。

 横浜のクリーンナップクラスでも対応に困るところだろう。


 しかし、自分なら。

 自分なら対応できるという自信が優にはある。


 一球目。

 綺麗なフォームだと思わず見惚れた。

 高校時代は夜通し野球談義をした仲。

 彼の研究熱心さはよく知っている。

 それでも、見惚れた。


 次の瞬間放たれた球に衝撃を受けた。

 細長い腕から放たれるサイドの速球。

 それは、対角線上にホームベースを横切って、優の内角を突いた。

 クロスファイア。左サイド投手の生命線。


 速い。

 球速以上に速く感じる。

 変化球を待っていたから、だけでは済まない。

 優は反応できない。


「スットラーーーーイ!」


 審判が絶叫する。


(わかってるよ)


 半ば拗ねながら優は思う。

 優も竜也も負けず嫌いはお互い様だ。

 あるいは、プロになるレベルまで至る人間というのはそんなものなのかもしれない。


 しまったな、と思う。

 今反応できなかったことで変化球狙いが露骨にバレた。

 プロの捕手ならそんなところ見逃さないだろう。


 さて、どうするか。

 やはり、変化球だ。

 相手の自信のある球を打つことで動揺させる。

 自分に自信がある努力者ほどその攻略法には影響を受ける。


 二球目。

 球は優側に曲がりつつ内角の厳しいところを突いた。

 体が自然と反応する。


 捉えた。

 そう思った。


 そう、捉えていただろう。

 高校時代までの竜也が相手ならば。


 球は当時よりもよりえぐりこむように内角を穿った。

 鈍い音がする。

 球は地面を転々として、竜也のグローブに収まった。


 竜也は球をファーストに投げ、アウト。

 ここまで一人も走者を許さず上位打線を乗り切った。


「竜也、ナーイス! 三神君も頑張れー!」


 俯いてベンチに帰っていた優は、その声に思わず顔を上げた。

 龍樹が試合を見に来ている。


 負けるものか。

 何故か、強くそう思った。



続く

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