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『第4回 下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞』

転生したら缶コーヒーで、推し様の手の中でした。

作者: 佐藤そら
掲載日:2022/12/05

 あれ?

 

 目を覚ますと、辺りは真っ暗だった。

 目を開けているのに、何も見えないのだ。

 そして、妙なぎちぎち感に息苦しさを感じる……。

 

 しばらくして、暗闇になれてきた。

 しかし、状況を把握するのには、どうやら時間がかかりそうだ。

 

 わたしは、狭い空間にはめ込まれている。

 抵抗しようにも、その体はビクともしない。

 

 もしや、わたしは監禁されている!?

 わー、誰かここから出してくれぇ!!

 ジタバタしたが動けない。

 

 

 誰かが迫る足音だ。

 

 犯人がこちらに近づいて来る!?

 

 分厚い壁の向こうからジャリジャリと小銭が入って来る。

 そして、『ピッ』と音がした。

 

 わっ!

 

 わたしは突然、下へと突き落とされ、再び狭い空間内でとどまった。

 

 びっくりした! これはアトラクションか?

 

 あーもう! 一体何でこんなことに?

 早く帰って、わたしは推し事したいんだよ!

 今こうしてる間に、見るものが、聴くものが、どんどん積まれていく!

 わたしに暇な時間などない!!

 

 ふと、周囲をよく見ると、同じ形状のものが綺麗に沢山整列していた。

 そして、わたしも同じ形状だった。

 皆ポーカーフェイスだが、外に出られるのを今か今かと待っている。

 

 

 そうか、わたしは転生して、缶コーヒーになったんだ……。

 

 

 

 すっかり自分を理解したある日のこと、わたしはこの日も、またひとつ下へと突き落とされた。

 もうこの感覚にはすっかり慣れてしまった。

 

 ん? もしや次、外に出られるのでは!?

 

 

「お疲れ様でしたーっ!」

 

 分厚い壁の向こうから、元気な聴き覚えのある声がした。

 きっと、推し不足による幻聴だろう。

 

 ジャリジャリと小銭が入って来る。

 誰かが外で、品定めをしている。

 そして、『ピッ』と音がした。

 

 わっ!

 

 下へと突き落とされた衝撃と、突然の光。

 あまりの眩しさに目がくらんだ。

 

 誰かが、わたしを覗き込む。

 外に出してくれて、ありがとう。

 

「あったかい」

 

 ささくれが気になるその手で、誰かがわたしを包み込む。

 

 くはっあ!!

 

 わたしは、推し様の手の中にいた。

 

 体が熱い!

 ううん、違う。

 わたしがホットコーヒーなだけ。

 

「新しくなってる!」

 

 そんな、無邪気な笑顔で見つめないでよ。

 

 

 

 彼はわたしを開けると、コーヒーを口に運ぶ。

 

 はぁあっ!!

 

 こ、これは、推し事で済まされぬぞ!!

 

 

 彼は真剣な眼差しで、台本らしきものに何かを書き込んでいる。

 この後も、お仕事なのだろう。

 まったく、忙しいんだから。

 

 いつも、お疲れ様。

 わたしは、ランドセルを背負った少年のように駆けて行く彼の背中を見届けた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] きゃー、これは悶絶ものですね。 推し様の手に包まれて、飲まれちゃう?? とんでもないものに転生しましたね。 読んでるこちらまで、体温が上昇しました。
[一言] 飲まれるってどんな感覚なんだろ。 想像するとすごく興奮する(え?
[一言] 読ませていただきました! なんて素敵な転生なんだ…(*ˊ˘ˋ*) 推し様に飲んでいただけるなんて幸せすぎる! だって体の一部になっちゃうんですよ〜っ!! あっ…取り乱しました。すみません…
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