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第5話 親には親の事情ってのがあるからそれは黙って見送るしかない

 母達の修行や教育に明け暮れ、寒い季節となりもうすぐ5歳が近づく今日この頃。


 今日も朝、社員食堂では叔母さん達そして珍しく母さんが朝飯を作っている。


 今日は、ソーセージの卵包みとサラダ、出来立ての熱々コッペパンだ。


 このパンに切れ込みを入れ、ケチャップ マヨネーズを塗り、ソーセージの卵包みとサラダと挟んで食べると………「ほふほふ」とがっつく音が出る程美味い。


 自分が寒い中モソモソと満悦にご飯を食べていると、見慣れない子供が一人自分の前へ頬杖をつき座る。


 ご飯も、何も持たず自分の顔を黙って見つめている。


 ――――――何か恥ずかしいじゃないか。


 ツーマン団(クラン)には家族住みの子供もそこそこいるのである程度ほとんどの顔が顔見知りである。


 父さん達がいなくなった後の引き継ぎも兼ね現在入社している人から新しく入社した人の家族構成まで一通り目を通している。


 だが、この子は見たことのない。


 見た目は10歳くらい、女の子なのか…男の子なのか…、イケメンなのにイケ女みたいななんか中性的な雰囲気である。


 だがどこかで見たような、毎日みている気がするが…見たことはない。


 じーっとお互い見つめあっていると、しびれを切らしたのか相手の方から話し出した。


「さて私はだれでしょう?さて私はどんな存在でしょうか?

 ヒントは私の名前はオールと申します。以後お見知り置きを。」


 ―――――――オールとは全て、良く母さんが「全てのことで一を知り、一のことで全を知る!そんな錬成術士となれ!」と教育していることから、母さんの繋がりであろう。


 毎日見た様な顔…自分にも似ている、良く見ると母さん、おばさん、父さん、おっちゃん、セーラーを足した様な顔をしている。


 そうか、前に教育係うんぬん言ってたのはこいつにちがいない。


「オールと言う名前から自分達家族を1つにした生命体と言う説明で良いかな?ホムンクルスかキメラかは解らないが。

 作成者はまず母さん、自分のラボに籠りっぱな母さんが珍しくご飯作りに混じってる時点でどんな対応を俺達がとるかを見ている(実験体観察)のだと思う。」


『正解っ!』


 母さんとオールが二人が自分の中前に身を乗り出しハモる。


「流石に英才教育(スパルタきょういく)されただけあって良くわかりましたね。自分自身の一部であれど自画自賛したくなりますよ。私が今後ツーマン団の統括補佐オール・マンと申します。

 性別は不明で体は10歳ベースで作られております。ホムンクルスかキメラか言えば足して2で割ったよう感じですね。以降お見知り置きを。」


 簡単に自己紹介してくれたが、実に簡単過ぎて対応に困る。


「まあフログ、オールは今後私達の代わりにツーマン団を仕切る感じにはなっていくと思うのよ。何せ家族全員の細胞と知識を統合して、肉体もフログとセーラの不老不死両方を引き継いでるから。

 ある意味母さん達が年取って引退したり、不慮の事故でお陀仏になっても、クランが消えない限りはオールが永続して続けていける様に作られた存在な訳よ。後はフログ達の教育者としてもね。」


 母さんも簡単に言ってくれるが、不老不死だなんてインチキ!詐欺レベルにも程がある。


 俺も堪忍袋の緒が切れた。


「いきなり自分達の教育係なんて認められんぞっ!俺は母さん達に教えられるのが良いんだ。いきなり家族ってのも認められんっ!俺は不愉快だ!帰るっ。」


 本音で言えば嫉妬である。


 俺は、年取らないだけだぞ。


 不老不死ってだけでもなんかムカつく、鼻につく!!


 知識も苦労して得たものだ。


 自分もそれなりな努力はしてきたと思う。


 しかもまだ4歳児だぞ。


 もう少しで母さんが冒険に出ると言うだけでも実は強がってるだけで本音で言うと行かないでと言いたい所のこんな状況の中にいきなりこんな突拍子ない事、上から目線で言われたら普通の4歳の子供なら明日から母さんと口聞かないもんね!と言っている。


 俺は中身はまだまだ子供なのは十分に理解している。


 知識だけが先に行ってるもんだからただそれに合わせて精神年齢が早歩きしているだけなんだ。


 母さん達を安心して送り出したいだけなんだ………。


 自分は部屋に入るなり布団を被り泣いた。


 子供の様に…いや、子供だから今まで我慢した事を思い出しては涙が止まらない、嗚咽が止まらない程泣いた。


 母さん達の代わりなんていらないんだよ。


 母さん達の代わりなんて言うなよ。


 冒険なんてしないで平穏無事に普通に暮らしたかった。


 一時泣き続けて―――――泣き止んだ頃に部屋の扉を叩く音がした。


「母さんだけど入っても良いかな?」


 自分は何事もなかった様に見せる為、涙と鼻水を布団でごしごし拭いて、大人びた口調で返事をする。


「良いよ。」


 若干まだ鼻声だ。泣いたことがもろばれである。


「母さん、取り乱してごめんなさい。自分もまだまだ子供でした。オールはただ自己紹介しただけだったの――――」


「フログは子供よ。それのどこが悪いって言うの。事実じゃない。オールが出来上がって嬉しくてテンションが上がってしまった…。フログの気持ちなんて全然分かってなかった。親としては失格ね、いつもフログに無理ばかりさせて私こそごめんなさい。」


 自分の口から出そうな大人びた謝罪のセリフを遮る様に母さんが口を手で塞ぎ謝る。


 謝るのをやめてくれ、母さん。また…また泣いちゃうじゃないか……。


 悪いのは逆ギレした自分じゃないか。


 母さんも泣くなよ、もう涙が出てくるじゃないか。


 その後は二人揃って泣いたのであった。


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