10話 鬼軍曹
数日、ゴーレムに乗り込み近隣の森を走り込む。
大分体が慣れてきたので普通に動かせれる様になって来た。
様になるってヤツだ。
「揃いも揃ってヌルい訓練しおってからに!」
フィールドに集中していた俺たちを不意に現実世界へと引き戻す怒号が鳴り響く。
ラボ内に現れたのは迷彩柄の服を来た初老のどっかで見たことのある…あ、あれはマンじいちゃんだ。
始めましてすら挨拶してないや。
そういえば面倒見てもらう話してたのに一回もじいちゃん訪ねてなかったわ…
「はじめまして!マン名誉会王ことおじいちゃんです。あなた方がいつ来るか毎日美味しいお菓子準備とかして待ってたんだけど、いつまでたっても来やしないんで、こっちからお仕掛けちゃいました。
私も修行?しょうがないなと思って、外のゴーレムなんかをね、一緒にね、走って観察しよったわけですよ。
まあストーキング行為を行っていたのですよ。
そしたらまあ只々走って筋力を付けるだけの、修行してるの表向きってな修行してるからに、わしもこんなん修行呼べるか、こんなんしてる暇あったら孫の顔見せにこんかいってな勢いで突撃させてもらいました。ごめんねっ!!」
一瞬で物凄い情報量だぜ?マンじいちゃん。
「まずは体の基礎を作ってから。これが最適な修行なんですよ。まだ始めて数日どこが悪いんですか?」
オールは自分のトレーニング方法にケチをつけられ憤慨している。
「はじめまして、セーラだよ。美味しいお菓子用意してたのにごめんね。」
「自分も始めまして、フログと申します。最初挨拶に行くべきでした。今回の不手際誠にお怒りの様で誠にすみませんでした。」
誠意を込めて謝る。
「んなこめけぇことは良いんじゃよ。オールと言ったかのう?基礎ばかりじゃなく、実戦も含めなければ体に変な癖がつくぞ。特にフログ、オール。中身がまあ成長しすぎているから戦い方を早めに叩き込まないと戦闘の幅が狭まることになる。
精神年齢の早期成長は考え方を凝り固めるからのう。
本当はまだまだ子供で良いんじゃよ、フログ。子供なんだからごめんねくらいで謝罪はいいんじゃよ。」
言われてみれば指摘のある通り、自分の精神年齢は20歳くらいと母さんに言われていた節もあり、考え方に柔軟性はあまりなく、このまま実戦を積まずに行くと戦い方の戦略の幅を狭めかねない。
「わしが来たからには修行にわしも加わる。ゴーレムをこちらに呼び一緒にビシバシ指示をするからそれについてこい。わし対お主等で実践じゃ。
いきなりモンスター実践だとゴーレムが壊れた時が問題じゃからな。ワシとの実践が為ラボ前に連れて来るのじゃ。ここなら壊れても即修理出来るじゃろう。」
「じいちゃん、言っとくけど自分達父さん達の技術ダウンロードしているんだぜ。実践はまだだけど、じいちゃん三人がかりで大丈夫?」
「生意気な小僧じゃな、フログ。わしゃ若い頃はイケイケでのう。小童如きゴーレムに乗ろうとも全然相手にならぬ。
遠慮せずかかって来るが良い。びびって小便ちびんなよ。」
自分達に実践の経験がないにしろ、この国の重鎮を3人がかりで相手して何か起きた時は大丈夫だろうか?と言う心配が出てきた。
「そんな顔をするな。万が一ワシに何かあった時はワシの責任と一筆書いても良かろう。だがそんなこと素人のお主等には有り得ないことじゃがの!どれ力を見せてやろう。
ふんぬっ!!」
そう言うと、上着の迷彩服を筋肉で弾け飛ばした。
何という筋力。
「ほれ、準備万端!ゴーレム持って来なされ。」
ゴーレムをラボに用意する。
一応ゴーレムには模擬戦用に作られた俺は大剣、セーラは剣と盾、オールは二刀流ナイフを装備した。
故障してもラボ施設のメンテ機器に入れれば物の数分で修理も完璧だ。
「じいちゃんは武器はいらないのかい?」
「小童相手にはゲンコで充分じゃ。
かかって来なされ。」
その合図と同時にセーラが飛びかかる。
セーラは何も考えている様子もなくただ遊び感覚的突っ込んでいったようだ。
「じいちゃん、セーラと遊ぼうね。」
だがじいちゃんに触れることもなく地に転がるセーラ丸。
「ったく、考えて突っ込んでこんかい。」
その通りだ、ただセーラが転がった様にしか見えなかったが、あのじいちゃん体勢を崩し一気に転がしたのが見えた。
「かかってこないならこっちからいくぞ。」
目の前にじいちゃんが急に現れた。
捉えきれない速度と急に現れたことにより、考えもなく大剣を振り回す。
………重い。父さんが使っていたからそのまま使えると思っていたけれど、ゴーレムの制御だけで今はまだ剣に振り回されているだけだった。
ただ普通にゴーレムを動かすことが出来るだけ。
ただそれだけ。じいちゃんの拳が腹に突き刺さる。
ボディは貫通し激痛が走る。
ゴーレムには痛覚の信号を送るようにしてある。
実践で攻撃を避ける大切さを知るためである。
だが、じいちゃん容赦ない。
痛覚が遮断されゴーレムが停止した。
メンテ機器に入れないといけない故障である。
オールはと言うと、それなりに二刀流のナイフで攻めていたが、微動だにしないじいちゃんに傷一つつけられず、頭を蹴られ頭がちぎれメンテ行きとなった。
「だから言ったんですよ!!基礎がまだまだって。
フログなんかは剣に振り回されてただけですよ。」
オールの言うことがごもっともであったが、自分の今の弱さがわかり少し凹んでしまいそうだった。
「だが、戦闘の緊張感こそが人を底上げするスパイスだとワシは考えている。今の現状がワシとお主等の差じゃ。
それを見せたかった。現状を見せた後の訓練も予てな。どれ、今のは現状を見せる訓練。今からのはどうすれば良いのかの訓練じゃ」
メンテが終わったゴーレムを再起動させ、また訓練が始まる。
「まずは無手での戦闘訓練じゃ、武器なぞまだいらぬ。ワシの攻撃を読み、ガードする!避ける!スキが見えたら攻撃する!
以上のことを踏まえ訓練に励むと良い。安心しなされ壊す攻撃はしないから。」
まずはじいちゃんが自分に攻撃してくる。
さっきより格段に遅い。
避ける、直撃を免れない様な攻撃はガードする。
ガード後じいちゃんの攻撃を弾き、自分が攻撃する。
その攻撃をじいちゃんが避け、さらにじいちゃんの反撃を避けそこから反撃。
「形になってきている」
オールが観察しながらつぶやく。
「次は私!早く私もフログみたいに踊りたいなぁ。」
セーラ、踊っているのではなく戦闘訓練です。
「なんとかゴーレムに振り回されず、緊張も抜け、肩の力も抜け本来の姿が朧気ながら出来たのう。」
最初にボロボロの状態にされたことがあった為、良く相手を見て行動することの大切さを学んだ。
最初のあの動きに比べれば今の動きなんか、スローモーションだ。
「次セーラ!行くぞい。」
自分の番手から移り変わりセーラだが、セーラ丸に関しては踊っている様にしか見えない。
踊るように避け、反撃…反撃…反撃とじいちゃんを休ませる暇すらない。
そのうちじいちゃんに手刀がかすった。
「なかなかやるのう、フログより年下と思い手を抜いとったわい。フログと同じくらいの強さで行くとしよう。」
ギアが一ランク上がったようで、セーラも避けるのとガードで手一杯の様子。
だが、ついて行っている所を見ると俺と変わらない様に見える。
兄貴分としてはセーラに負けてらんないな。
「最後にオール、この中では生まれて間もないが肉体的にはお主は年長、少し厳しめにいかなければあっという間にフログ達に追い抜かれてしまう。きついと思うがすまぬが覚悟してくれ。」
「そこは想定の範囲内です。手厳しくお願いします。」
そう言うとオール丸はいきなり吹き飛ばされ、もの凄い速度で攻撃されている。
しかし大半は避けガードし反撃の機会を伺っている。
だが、そろそろガードするのが限界でもう駄目かと思った時……じいちゃんの体が大きく吹き飛んだ。
「因果応報!!今までガードで溜めていたダメージを一気に叩き込む我が息子マンダリンの一つが技。なかなか渋い技を使いおって」
オール一撃当てちゃったよ。
流石年長者、こちらにも負けてらんない。
だがじいちゃんは無傷の所みるとまだ全然本気を出していないのだと思う。
流石父さん達の父さん。
後は順番に訓練しその日はご飯を食べたら泥のように眠ったのであった。




