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7 地下の実態


 地下で最初に感じたのは、異臭だった。


 充分な換気がされておらず汚物と化学物質の悪臭が入り混じった強烈な臭いだ。


 次に感じたのは地下空間の広大さだ。昔科学の本で読んだ水害時の地下貯水槽のように広かった。


 地下では大量のやせ細ったみすぼらしい格好の人達が過酷な労働を強いられていた。


 ある者は重い荷物を手で運び、ある者はラインに流れてくる流体をひたすらこね回し続けていた。


「二十七番、三二八番、二〇十六番の方、作業パフォーマンス低下率が二十五%を超えました。よって高圧電流を3秒間流します」


 ビリビリビリビリ。


 手を止めていた作業員につけられていた腕輪に電流が流れた。作業員達は激しい苦痛に身悶えていた。


 過酷な作業が繰り返される中、当然のように人が倒れていく。


 倒れていった人間は他の作業員によってリアカーに乗せられ、そのまま焼却炉へ捨てられていく。


 足りなくなった人間は続々と補充される。多くは俺と同じくらいの十五歳前後の少年達だ。


「驚いただろう。こいつらが何をしているか分かるか?」と、尊端漲は言った。


「皆目見当もつかない」


「不死身薬を作らされているんだよ!」


「なんだって!?」


「不死身化薬はフェニク草を加工しフェニクノイドを抽出し作られている。その工程にはただならぬコストがかかる。それを全対象者分供給するとなったら、こうやって地下の戸籍のない人間達を違法就労させるしかないんだ」


「でも不死身化薬って全世界で作られてるって……」


「世界中のビル型都市の地下が不死身化薬の工場になっているんだ。計算上、一人の人間を不死身化するのに十人の地下の作業員が犠牲になってる。地上と地下で人類は完全に二分化されてしまったんだ」


「そんな……」


「博士を拉致した理由はフェニク草を使わないかつ安全に作製できる合成不死身化薬の開発し特許権を渡してもらう事だった。そうすれば地下の人間が犠牲にならずに済むと思ったんだ」


「まあ私達は研究さえできればどこであろうが構わないのだがね」と、博士は言った。


「そうは言っても博士、拉致して特許権の剥奪は良くないですよ。いくらなんでも」


「迷惑極まりない事は承知だ。しかし事態は刻一刻と悪化の一途を辿っている。私も死んだ作業員の補填となる人間を作る赤ちゃん工場に引き渡されそうになったところをなんとか逃げてきたんだ。迷惑ついでに私達に知恵を貸してくれないか」


「知恵か……」と、言って博士はしばし黙考した末、こう言った。


「ならば地上で広報するのはどうだろうか」

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