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その八十九 独白

 

「ごほ、ごっほ!……はぁ……」


 息も絶え絶えに、何とか機車に乗り込んだ。

 車内は思ったよりも広く、8人くらい掛けられそうなU字ソファがでかでかと設置されていた。

 さらには中央にはテーブルとやけに整った内装である。


「あ、姉さんおかえりなさい」


 ソファの上では、何故か目隠しをしたマインがレイミに膝枕をしていた。


「はぁ、はぁ……それ、レイミはどうしたんだ?」


「お酒と機車の揺れでダウンです」


「ぁあ、そうか……」


「マ、ママ、ママママイン様ぁ?!」


「え……誰かそこにいるんですか?」


 入るや否やマインを見たケイナは叫んだ。

 クルはクルで、ずっと咳き込んでいる。


「いや、マイン様!その、膝枕してる奴!」


「レイミが、どうかしたんですか?」


「あ、あ、羨ま、じゃなくて!」


「ケイナ先輩、落ち着いてください。今のレイミは敵じゃないですから」


「ええ?いやでも……」


「ごめんなさい。レイミや私が何か迷惑かけていたみたいですけど、今は許してくれますか?」


 しおらしいマインに対して、ケイナは気持ち悪い動きでまごついた。


「はぁ……まったく、何で着いてきたんですか?」


「まだちゃんと話聞いてないものー。アンタまた何か無茶するつもりなんでしょ」


「……私は魔王だってちゃんと言ったはずですけど」


「だから何よ。アンタがアタシの後輩だって事実は変わらないわよ」


「いや、変わりますよ……」


「ゴホッ!マリ、ゴホ、ボクだってゴホッ、心ぱゴホゴホォ!!」


 クルは見ているこっちが心配になるほど咳き込んでいる。

 図書室で鈍りきった運動能力では無理のある運動だったらしい。

 今思えば、森で隠れていた2つの反応は、ケイナとクルだったようだ。


「あの、私の知らない人が御二方いるみたいですけど、ど、どなたでしょうか?」


「マ、マイン様?忘れちゃいました?私、私ですよー」


「ケイナ先輩とクルちゃん先輩だ。どちらも味方だから安心しろ」


「ほ。良かった、味方なんですね」


「……ちょっと、どういうこと?何かマイン様、いつもと雰囲気が違うけど」


「そのこと何ですが……2人とも、私から一つ忠告があります」


 ワタシは精一杯凄んでみせた。

 マインについて、ワタシについて聞いたとなれば、それはきっとただ事ではすまない。

 魔王も形白(マリオネット)も恐らく王都に住むほとんどの人間が知らないことだ。

 知った2人が危険に晒される可能性もある。

 だから、できる限り脅すようにワタシは語った。


「私や、マインのことを知ってしまえば、命に関わるかもしれません。それくらい、深刻な話を今から私はしようとしています」


「……別にいいわよ」


「この問題には王都や三国、果てにはあの新魔王軍も関わってきます。聞けば、そのレベルの組織に狙われます」


「良いわよって。いいから話しなさいよ」


「一度聞けばきっと後戻り出来ません。聞きたくないなら、後でこの機車から」


「もういいっての!いいから話しなさいよ!!」


 物怖じするどころか余計にボルテージを上げるケイナ。

 横に座っているクルはワタシの話よりもケイナの方にビビっていた。


「本当に理解してます?!言っておきますけど、私本当に魔王ですからね?!」


「それについて詳しく話せっての!」


「だから、聞いたら危ないかもしれないんですって!」


「命の危機とか、とうに2回は経験してんのよ!!今更どうだってのよ!!」


 パァン!と勢いよく机が叩かれた。

 思わず続きに言い淀む。言われてみれば、ケイナはワタシと関わったせいで2度は死にかけているのだった。


「マリー。ボクも1回死にかけてます」


「……すいません」


「?別にアンタのせいじゃないでしょ……とりあえず、厄介な後輩の扱いなんてアタシにとっちゃ朝飯前ってことは知っておきなさい」


 ワタシは諦めのため息を吐いた。

 クルはともかく、ケイナがこうなったらもう話すまで離れない気がする。

 殺せるなら殺してみろ、と言わんばかりの態度で睨んでくるこの人間を追い返せる気がしない。


「どう?話すの、話さないの?」


「……セリル、この機車はいつまで走るんだ」


「とりあえず王都の包囲を抜けたら、撒けるまで走る。後はレガートから離れた適当な村で止まるつもりだ」


「どのくらいかかる」


「ざっと1時間だ」


 運転席にいたセリルが余裕ある声色で話した。

 ちなみに助手席には縛られたザインがいる。


「……分かりました、話します。マインとレイミもよく聞いてくれ」


 そうして、ワタシは己の全てを話し始めた。

 魔王として目覚め、2人の友を失ったあの日までを。


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