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その八十三 号外

 

「おい、あれ見たか?昨日に何があったんだろうな」

「昨日の夜は普通に寝てたけど……」

「なんか最近物騒な事件が多くない?」


 昼頃の王都。

 多くの人々が口々にある話題のことを話していた。

 セイヴハート邸、謎の倒壊。

 邸宅前には警備員が配置されているが、辺りは一目見ようと集まって来た人々に溢れていた。


 王都内の人集りはセイヴハート邸の周りだけではない。

 街のあちこちに配置されている掲示板にもむせ返るような群衆があった。

 原因は事件の真相を吟味した記事。

 それぞれ違う内容の記事が各掲示板にいくつも貼り出されていた。


『セイヴハート邸崩壊。原因はまたもや魔族による襲撃か?!』

『セイヴハートの裏に潜む影!王都に潜むの闇の正体とは?!』

『勇者の家系が崩壊!?隠された歴史の闇とは!』


 主張している内容はそれぞれ違った。

 だが、どの記事にも決まって載っている写真があった。

 崩壊しているセイヴハート邸の写真。それと……。


「何よ……これ」


 偶然、掲示板前を通りかかったケイナ・ビリッツァは己の目を疑った。

 記事に載っていたのは短い銀髪の上級魔族の姿。

 だが、その魔族の顔は間違いなく見知った顔。

 マリ・イルギエナという後輩の顔だった。


 〜〜〜〜〜〜


「ねえ見た?例の事件。ウチの生徒がやったんだって!」


「嘘!学校内に魔族がいたってこと?!」


 ここは王都のとある洋菓子店。

 店内には休日を持て余した女子生徒らが談笑していた。

 甘い匂いとパステルカラーの外装。


 そんな中を明らかに場違いな男が一人座していた。

 カジュアルな服装で、死んだような目でカップケーキをテーブルに2つ並べていた。

 1つは自分の手元に。もう1つは、向かいの席に。


「魔族……アイツが、魔族ね」


 男はボソボソと呟きながら食を進めた。

 周りはその様子を遠巻きで眺めながら、ヒソヒソと話していた。

 自身が浮いていることに彼は気づいていた。

 気づいていながら、なおも彼は居座り続けた。

 向かいのカップケーキには手をつけないまま。まるで誰かを待っているかのように。


「誰かを待っているのかい?」


「……いいっスよ。座っても」


 向かいに座ったのは小柄な男。

 だが、反応からみるに彼の望んだ人物ではないのが窺えた。


「おかしいな。君には休むよう言ったはずなんだが、随分と疲れた顔をしている」


「……今、休暇中なんスよ」


「ここにはよく来るのかい?」


「いや、普段は来ません。甘い物は得意じゃないですし」


「じゃあ何故君はここにいるんだ。戦士の位(ウォーリア)


「……」


 戦士の位(ウォーリア)ミヅキ・レックウは目を伏せたまま。

 向かいには目もくれずに食べ続けている。


「……このカップケーキは、食べても?」


「いいっスよ。庶民の味が王様の口に合うかは知りませんがね」


 王都の王ミゼンガ・キンケーブルはおもむろに食べ始めた。

 互いに表情は変えず、スプーン動かし続けた。


「……約束してたんですよ。スイーツ奢るって、ローナと」


暗殺者の位(アサシン)と?」


「アイツ、マリが生きてた頃はよくここに来てたんです……思い出しちゃうからって、最近は行ってなかったみたいっスけど」


「そうか……辛いだろうね」


 わざとらしく眉を八の字にするミゼンガ。

 その仕草にミヅキは眉をひそめた。


「労ってるつもりスか?可哀想なんて、アンタは欠片も思っちゃいないだろ」


「そんなことはない。君も、暗殺者の位(アサシン)も、余にとっては大切な部下だ」


「大切ね……いないと困る、くらいの印象だろ?」


「ああ。暗殺者の位(アサシン)は幼い頃から王都のために動いてくれていたからね」


「働いてくれていた、だと?あんな汚れ仕事、強要しておきながら……!」


「仕方ないだろう。彼女の母もそうしていた。代わりの穴埋めが必要だったんだ」


「っ、外道が。あの記事の写真だってアンタが流してるんだろ!」


「当たり前だ。王都の人々を守るため危険な存在は広報しただけ。暗殺者の位(アサシン)のような犠牲者を再び出したいと、君は思わないだろう?」


「ローナを殺したのはアイツじゃない!!」


 ミヅキはテーブルを叩き、勢いよく立ち上がった。

 静まり返る店内。

 ミヅキは周りの女生徒の注目の的となった。


「外に出ないか?ここでは目立ちすぎる」


 〜〜〜〜〜〜


 王都から大きく離れた森の奥。

 位置的にはレガート国方面のとある民家の、とある一室。

 いつもの自室にワタシはいた。ちなみに今日は自室に、ある客人を招いている。


「ん゛ー!ん゛ー!」


 椅子に縛り付けられた1人の中年男性。

 口に括り付けられた布で上手く喋れず、呻き声を上げていた。


「黙れ」


 ワタシはそんな男の膝に容赦なく踵を落とす。

 鈍い音で肉にめり込むと、男はより一層の声を上げた。


「っ、ん゛ーー!!!ん゛ーー!!」


「黙れと言ったはずだ。もう一撃見舞うぞ?」


「ん゛、ん……」


 睨んで脅すと不快な音はピタリと止んだ。

 拘束されているのはセイヴハート家当主、ザイン・セイヴハート。

 涙目で縛られている姿には、当主の威厳など微塵も感じられなかった。


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