その五十九 圧倒
「……先輩、凄くボロボロですね」
「む。そうだけど。なんか悪い?」
学校へと到着したワタシはすぐさま魔族のいる場所へ直行。
着くと、ケイナが魔族に襲われていたので助けた次第である。
ケイナの状態を見るにかなりのピンチだったようだ。
「……何?そんなジロジロ見ないでよ」
「それ、あの上級魔族にやられたんですか?」
「そりゃそうよ。言っておくけど、後ろの生徒守りながら戦ったんだからね!普通だったら負けてないから!」
「そうですか」
「あんなやつアタシ1人だったら倒せ……ちょっと、待ちなさいよ!」
別にケイナのことは心配していない。
エージェントの時もなんだかんだで彼女は生き残っていたからだ。
だが、見知った顔がここまで傷つけられていると、どうも腹が立ってくる。
ワタシは喚くケイナを無視して、吹き飛ばした魔族の方へと歩いて行った。
「_______________っぐ、ああ!貴様ぁ!よくもやってくれたな!」
「よくも、やってくれた?こっちのセリフだよ、魔族風情が」
「そっちはたかが人間であろう!この借りは倍にして返してやるのである!」
殴られた顔を押さえながら立つ上級魔族。
よろけながらも立ち上がる姿はまるで生まれたての子鹿だ。
手が届くまでに近づくと、魔族は腕から武器を取り出して振りかぶった。
「喰らえぃ!人げ……ん?」
魔族の表情が呆然としたものに変わる。
振り下ろされた鋭利な刃物はワタシの2本の指によって止められていた。
「き、き、き、貴様ぁ!何を受け止めているであるか!」
「何だ、武器を振り回すだけの能無しじゃないか。くだらんな」
魔力を載せた裏拳を横に薙いだ。
「ブゲゴァ!!」
魔族は笑えるほど顔を歪ませ、弾丸のように吹き飛んでいった。
そして何故か、地へと転がる度に色々な武器が飛び出してくる。
その様はまるでおもちゃ箱のようだ。
面白い、コイツはそういう魔族なのだろう。
「おお、魔族にも道化という文化はあったのか?面白い、拍手してやる」
「はぁ、はぁ、はぁ、何を、面白がっているであるか!」
「貴様が面白いから、面白がっているのだ。叩く度に武器を生み出す力でも持っているんだろう?」
「んなぁ!!おのれ、バカにしおって!肉片の1つとて残さんぞぉ!」
苦悶の次は怒りに顔を歪ませると、魔族は両手を銃器へと変化させた。
足、背中からも同じように銃器が延び、ワタシへと銃口を向けさせた。
「ハハッ!通常の六倍の弾幕、耐え抜けるものなら耐えてみるがいい!」
キュイイイ、と銃器は回転すると、大量の弾丸をばら撒き始めた。
「リャーーーーホーーーーーーーー!!!!」
ガラララララララ!!
耳を塞ぎたくなるほどの発射音と共に弾幕は展開された。
圧倒的な物量。
だが、その程度ではワタシに傷一つとて付けられない。
「次は音の鳴る玩具のマネか?飽きないやつめ」
掌に魔力込める。
発現させるのは所謂、土魔術。
床へと手をつけ、頭の中にイメージした。
強固な壁。鋼鉄で出来た何よりも分厚い壁だ。
「見せてやろう。これが圧倒的な物量というものだ」
カッ!と辺り一帯が光ったと思うと、そこには廊下を遮断するような巨大な土壁が現れた。
ワタシの魔力を込めてある、金属よりも優秀な土壁だ。
カカカカカカカカカ……
魔力の弾丸は弾かれるどころか、接触と同時に次々と砕けていく。
やがて銃器の回転が終わるには、廊下は消えゆく魔力の霧に埋め尽くされていた。
「はあっ!はあっ!なぜだ!なぜ貫けない!」
「後ろには先輩方もいたのでな、少し強めに作らせてもらったぞ」
壁を殴り抜き、疲れきった魔族と対面。
魔族はもう疲労困憊のようだ。
「下手な鉄砲数打ちゃ当たる、でもないか。もっと知恵を付けろ下級魔族。ここの生徒の方がまだ優秀だ」
「我輩は上級魔族である!人間よりも優れた種族であるのだぞ!」
「その割には落ちぶれた魔力の使い方だな。貴様、上級の中でも下の下だろう?」
「なぁっ!我輩はキラー、「百手のキラー」名前持ちの魔族であぁぁぁる!!」
キラーの両の五指から魔力の刃が伸びる。
だが、どの刃も不完全。消え入りそうに揺らいでいた。
「なおも質より量を取るか。馬鹿の一つ覚えめ」
飛びついてきたキラーの腹にすれ違いざまに手を添える。
唱えるは慣例の爆発魔術。
「ひあっ、貴様、何をぉ_______________」
ボ グ ン
爆ぜる腹部、ちぎれて壁へと激突する上半身。
残った下半身はワタシの足元に転がった。
「フン、汚いな」
指を鳴らし、残った肉塊諸共に消し去った。
〜〜〜〜〜〜〜
ガラガラガラ
廊下を塞ぐ土壁を押し退けると、這いながらもコチラに近づこうとするケイナの姿があった。
半ば呆れながらも、その姿に歩み寄る。
「先輩。一応病み上がりでもあるんですから、無茶しないでくださいよ」
「バカ、委員長がいないのに、アタシが何もしない訳にはいかないでしょ」
「ミヅキ先輩ならもう学校にいますよ」
「なっ!まずはそれを先に言いなさ、ぅわ!!」
高い声で鳴くケイナの膝裏と背を持ち、抱き上げた。
「なっ、何してるのよ!降ろしなさい!!」
「いや、先輩動けないんですよ?こうするしかないですよ」
「とっ、歳下にお姫様抱っこなんて、恥ずかしいのよ!近くに後輩もいるの!降ろして!!せめて運び方変えて!!」
「えぇ……面倒です。このまま行きますよ」
「やめろやめろ!!避難場所には生徒がいまくるの!!いいからやめて!!」
「てか先輩軽いですね。ちゃんと食べてます?」
「〜〜〜〜〜〜??!!バカバカバカバカ!!」
突然2文字でしか喋れなくなったケイナを運びながら、ワタシは避難場所の委員会室へと進んで行った。
ポカポカという擬音が聞こえそうな殴打は痛くも痒くもなかった。




