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その五十四 暴露

 

『閉会式を行います。生徒はグラウンドに整列してください』


 アナウンスが剣魔祭の終わりを告げる。

 テント周りは出てきた生徒たちで溢れかえっていた。

 ワタシは人の波をかき分けて走っている。


 現在、勇者ことリンク・セイヴハートの追跡中。

 恐らくあの夜に会ったローブの者とリンクは同一人物だ。

 それだけでセイヴハートに対しての不信感は増した。

 くわえて、リンクはワタシが魔王であると気づいていたのだ。

 話を聞く必要がある。


「すいません!すいません、退いて下さい!」


 人集りに引っかかって上手く動けない。

 リンクは既に見えないので、魔力感知を頼りにリンクを追っていった。


 〜〜〜〜〜〜


 リンクの魔力が止まった場所に着く。

 校舎裏。また人気のない場所だ。

 2つの人影がそこにはいた。


「来た」


「……あ、姉さん」


「マイン?なんでここに」


「こっちのセリフですよ。帰って来てるのは兄さんにも内緒じゃなかったんですか?」


「いいから離れて。私はそいつに用があるの」


「怖い怖い。そんな顔、実の兄に向けるもんじゃないよ。なあマイン?」


「姉さん、どうしたんですか?」


 殴られたせいか、凹凸の多い顔で笑うリンク。

 マインは不思議そうに首を傾げた。

 ここにいる事情は分からないが、とりあえずマインをこの場から離れさせなければ。


「マイン、あっちに行ってて。そこのやつと2人だけで話がしたいの」


「いや、でも私」


「いいから!」


「私、兄さんに呼び出されたんです。ここに来て、そして……」


 マインはそこまで言うと口を止め、徐々に顔を青ざめさせた。

 何かに気づいたような反応だった。


「……え、に、兄さん?私もしかして」


「は、はは。そう、そうだ。分かったようだね。いいかな?」


「いや、嫌です!こんなこと頼むならオージやゼスに頼めばいいじゃないですか!」


「オージとゼスは死んだよ。レイミも今は別事で出られない」


「は、いや、そ、んな」


 マインは絶望した顔でゆっくりとワタシの方を向いた。腰の剣には手をかけたままで。

 後ろでリンクはニヤついていた。


「姉さん、今兄さんと関わるのは……諦めて貰えますか?」


 マインは震える声で続けた。


「私は姉さんと戦いたくないんです!ですからお願いします!」


「何を言ってるの?私とマインが、戦う?」


「そうだよマリ・イルギエナァ!僕を追うのはもう止めろ。じゃないとマインが君の相手をすることになるぜ」


 リンクは余裕のある表情で言った。

 だが、ワタシに退く気はない


「ふざけたことを。私はマインと戦うつもりもなければ、貴様を諦めるつもりも無い」


「だってさマイン、どうする?」


「姉さん!お願いします!」


 震える声、震える手でマインはワタシに剣を向けた。

 冗談やはったりではない。

 マインは本気でワタシと戦うつもりだった。


「ごめん。マインが何を脅されてるのかは知らないけど、そいつを逃がすわけにもいかないの」


「姉さん……やめて」


「アッチはやる気みたいだしなあ仕方ない。マイン?お願いね」


「い、や……いや、です」


「_______________早く行けよ。分かってんだろ?」


「……!!うわあああぁぁぁ!!」


 その一言を合図にマインは飛び出した。


「っ!マイン!!」


 超人的な加速と共に迫る剣閃。

 ワタシは横に飛び退き、その攻撃を寸前で(かわ)した。


 ビ ュ ン


 大きく空振られる剣。


「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、」


 マインは剣を持ったまま、肩で息をしていた。

 瞳を見開き、涙を流していた。


 分からない。

 何故マインはワタシに剣を向けるのか。

 リンクが何かを使って脅していることは明白だった。


「リンク・セイヴハート!貴様、マインに何をした!」


「別に何も。よそ見してていいのかな?」


「うわあああぁぁぁ!!」


 マインは絶望した顔で剣を振り回し続ける。

 だか、そのワタシに向けて振り下ろされる剣はどれも殺意のないもの。

 手心を加えた剣撃だった。

 ワタシは避けながら、マインとの会話を試みる。


「マイン、落ち着いて!私達が戦う理由なんてないでしょ!」


「ダメなんです!こうしないと、こうしないと私は!」


「どうしたの?アイツに脅されてるの?教えてくれれば私が何とかするから!」


「ダメ!姉さんには教えられないんです!」


「っ、あんなやつ私がぶっ飛ばしてあげるから!貴女の姉さんを信じて!」


「姉、さん_______________!!」


「おいおいマイン。手ぇ抜いてないか?姉さんだからって、手加減する必要ないぞ」


「で、でも……私姉さんが」


「よし分かった。30秒以内にそいつを追い払えなかったら……いいね?」


「ひっ……い、うわあああぁぁぁ!!」


 マインは半狂乱で叫び、剣速を上げた。

 先程とは違う、本気で殺す気の攻撃だ。

 混乱した様子とは裏腹に、剣は的確に急所へと吸い込まれていく。

 四方八方から迫る斬撃の波。

 ダメだ、避けきれない。


「マイン、ごめんっ!」


 やむを得ず。

 ワタシはマインの腕を掴み、組み伏せた。

 ドゴン、と鈍い衝撃と共にマインを地面に叩きつけた。


「っあ!がぁ、あ……」


「ごめん、ごめんね……」


 呻くマインに顔を(しか)めつつも、ワタシは腕に力を入れた。

 もうこれでマインは動けない。


「……タイムアップ」


「!!いや、いやです……兄さん、やめてください!」


「しょうがないじゃん、約束は約束だよ」


 リンクは不敵に笑み、組み伏せているワタシへとゆっくり歩いた。

 マインはなおも必死にもがき続けている。


「ね、マリ。このマインへの脅しはさ、君が居ないと成り立たないんだよね」


「は?どういうことだ……?」


「おかしいと思ったことはあるんじゃない?この女のこと」


 リンクはそう言ってマインを指した。


「おかしい?なにがだ」


「マリが死ぬまでこいつは世に一切出されなかったんだ。五聖(グローリー)すら、マリが死ぬまで、妹がいるなんて知らなかったんだ」


「何を言ってる?」


()()なら分かるだろぉ?()()は妹がいるなんて一言も喋ったことないはずだ」


 封印されていた頃、マリとの日々を思い出す。

 五聖(グローリー)である友の話。家族の話。学校の話。

 彼女が話したあらゆることを全て覚えている。

 だが確かに、マインに関する話は1度も聞いたことがない。


「コイツはさ……マリ・セイヴハートの妹じゃないんだよ」


「……意味が、わからん」


「いや、やめてください、お願いします、何でも、言うこと聞きますから、やめて、やめて、やめてやめてやめてやめてやめてやめてぇ!!」


 マインの絶叫を遮るように、リンクは言い放った。


「コイツの本当の名前は、ナンバー01(マイン)。お前の妹でも無けりゃ、人間ですらない。ウチで造った形白(マリオネット)だ」


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