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その五十一 執行

 

 校舎を出てグラウンド周辺に出るとまずテントが目に入った。

 テントはクラスごとに用意されているのでかなりの数が設置されている。

 この中にいる生徒からワタシは不正者を見つけなければならない。


「わっ、誰?あのカッコイイ人」

「風紀委員にあんな人いたかな」

「男子だよね……女の子みたいな顔」


 さっきからやけに注目されている。

 ワタシは現在男子の制服を着て、風紀委員の腕章を付けている。

 マリの短髪と整った顔立ちが相まって、その外見は完全に男だ。

 さらにはフラットキャップを深くかぶることで、誰なのか容易には判明できないようにしている。

 これらの変装はワタシがトラブルを起こすと予見したミヅキの配慮である。


『2つ目の演目が終了しました。次の演目は_______________』


 不正が行われるという「剣魔立会」は5回目の演目だ。

 これは王都中の人々が楽しみにしているため注目度が高い。

 ミヅキが不正を警戒しているのはこれが原因だろう。

 たまには一肌脱いでやるとする。


 目を閉じ、魔力感知を強めた。


 大量の人の気配……その中でも違和感のある気配は十数人。

 おそらくこの中にはタリムやウェルスのようなイレギュラーも混ざっている。


「……!」


 ちょうど近くにその気配を感じた。

 気配の居場所は剣術科2年のテント。

 ワタシは迷うことなく向かった。


 テント内には大量の人間。

 その中から一際異質な魔力を発している者を見つけ、その腕を掴んだ。


「おい、そこの。話を聞け」


「?!な、なんだお前」


 いかにも不正に手を出しそうなガラの悪い男子生徒だった。


「風紀委員だ。貴様を捕らえに来た」


「はあ?!風紀委員?!なんで俺が!」


「貴様が「剣魔立会」で不正を働くつもりだ、という報告があった。大人しく来い」


「なんだそりゃ、一年のガキが偉そうに。証拠でもあんのか?」


「私にしか分からない証拠だが……まあ、貴様の身体を調べれば分かることだろ?」


「あ?なに意味のわからないこと言ってんだ」


「意味は分かるだろう。無実を証明したいなら、調べてやるから大人しく来い」


「っ、テメェ!出来るもんならやってみやがれ!!」


 掴んだ腕を引こうとするワタシに対し、男は怒号と共に拳を振り下ろした。


「剣を抜くほど度胸はない、か」


 顔に目掛けて飛んでくる拳に臆することなく避けながら、近づいた。


「なっ_______________」


 驚き表情に出し、男は1歩後ずさる。

 そこで服の裾を後ろに引きながら足を引っ掛けてやると、男は盛大にすっ転んだ。


「いっ、ぐあっ!!」


「いいから大人しくしておけ。そう悪くはしない、はずだ。多分」


「クソガキが!顔覚えたからなぁ!!」


「顔は覚えるな。覚えるなら服装だけに……あー」


 男は起き上がるとどこかへ走って行ってしまった。

 ざわめきと共に周りが注目し始めたので、そこから離れるように男の追跡を始めた。

 走りながら耳の魔導器に手をかける。


「おいおい応答」


『はいはい聞こえてるぜ』


「さっそく一人見つけたがどうすればいい。その場で処罰するにもいかんだろ」


『捕まえるなり何なりして委員室に置いといてくれ』


 了解、とミヅキに返事をし、追跡を続ける。

 標的は依然として逃走中だが、人を避けながらでは満足に逃げられない様子。

 追いつくのも時間の問題だ。


「くそっ!どけ、邪魔だぁ!」


「ぃ、きゃああ!!」


 咆哮と悲鳴が同時に鳴り響く。

 見ると、男が通りかかった女生徒に向かって拳を振り上げている。

 その余計な行動でわずかに減速、ならば好機だろう。

 全速力で男を先回りし女生徒との間に立った。


「っ!くたばりやがれぇ!」


「自棄になって他生徒を巻き込むとはな。貴様はどうしようも無いやつだ」


 拳骨が触れるよりも先に魔術を放った。

 小さな空間を走る高密度の電流。

 電撃はワタシの指先から男の全身へとあっという間に流れていった。


「ぎゅっ、あばばばばびびびびば、ばばぱ……」


 男は奇声と黒煙を上げるとその場に力無く倒れ込んだ。

 やり過ぎかと頭を搔いたが、術式のことを考慮すればそうでもないか。


「ば、ばば、ば」


「これ校舎内まで運ぶのだな……面倒だ」


「あ、あの!」


 後ろからの声に振り返ると、男に襲われかけていた女生徒が立っていた。

 何やらはにかんでいる様子。

 なるほどマリの美貌は女までも惑わすというのか。


「あ、ありがとうございます!風紀委員の方ですよね?」


「礼には及ばない。結果的に貴様を助ける形になったが、私はこの者に用があったのだ」


 飛ばせキラキラ。心の中で美男子を演じる。


「いや、それでも助けてもらったので……えっとお名前教えてもらえますか?」


「名前か……」


 当然ながら本名を明かすわけにはいかない。変装の意味が無くなってしまう。


()()マリ……えと、マリ、オだ」


「マリオくん!その、良かったら一緒に剣魔祭を」


「あぁ、すまない急いでるんだ。用があるなら後日、風紀委員に」


 言葉の通り、構っている暇など無いので早々に会話を切り上げ、その場から離れた。

 魔力感知から見るにまだ10人弱は居る。

 ワタシは目立たない限りの全速力でグラウンド周辺を駆け回った。


 こうして不正者の摘出は行われていった。

 その中で分かったのは、不正者は皆ガラの悪い生徒であること。

 それと、この術式を配布している輩がどこかにいるということだ。

 術式のことを鑑みるに配布者の元を辿っていけば、それはセイヴハートに行き着くだろう。

 ミヅキの気にしすぎる性質も案外アテになる。


 「剣魔立会」が始まる頃には、グラウンド上から不純物は無事消えていた。

 ワタシの活躍によって剣魔祭は問題なく進行していった。


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