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その四十七 協力関係


「え、ケイナさん?ごめんね。今日休みみたいなの」


「む。」



「ん?風紀委員長?なんか剣魔祭の運営と準備で忙しいらしいよ。どこにいるかは知らないな」


「むむ。」



 午前中の時間割を終え、訪れた休み時間。

 ワタシは上級生のフロアを歩き回っていた。

 目的はもちろん魔王の遺体について話すためである。

 なぜ魔王の遺体は無かったのか。

 セイヴハートが造ったという「形白(マリオネット)」とは何なのか。


 が、あの日行動を共にしていたケイナは体調不良で休み。

 1番詳しそうなミヅキは何かの激務に追われているようだった。

 ケイナはともかく、ミヅキは常に何かに追われてやしないか。

 謎は謎のままだが、話す相手がいないのではどうしようもない。


「昼飯食ったな?じゃあ剣舞の続きやるぞ!」

「ちょっとそこ担当の人!タイミングズレてる!」

「おいおい!今マイン様が演目の練習してるってよ!見に行こうぜ!」


 いつも以上に賑やかな校内。

 忙しなく走る生徒たちがワタシの前を通り過ぎていく。

 眩しい、何やら努力している生徒たちがキラキラと輝いて見えるぞ、何だこれは。


「……図書館、行くか」


 今年は、ああはなれない。

 そう思うと尋常ではない疎外感がワタシを襲った。

 明朗で爽やかな空気から逃げるように、ワタシは図書館へと足を向けた。


 〜〜〜〜〜〜


「ただいま戻りましたーってあれ、マリちゃんどこに行ったんです?」


「何か用事があるとのことだ。貴様の気にするようなことじゃない」


 マリがいなくなった昼休みの教室。

 他の生徒は食堂に出ているのか、タリムとリリナの2人きりになっていた。


「マリちゃん、お弁当食べずに行っちゃったんですか?」


「そうだ……だが、これも貴様が気にすることではない」


「またそんな邪険にして……魔族だってみんなにバラしちゃいますよ」


「言ったとて、そんな内容で貴様を信用する者がそこまでいるとは思えないがな」


「あっ、ひどいこと言う……」


 しばらくの沈黙の後、2人は無言で弁当を取り出した。


「「いただきます」」


 全く同じタイミングで手を合わせ、同じタイミングで食事を始めた。

 マリがいない時の2人は毎回こうだ。

 どこか重苦しいような雰囲気だが、2人は慣れ切っているようだった。


「マリちゃんなんだか元気無かったですけど、何かありました?」


「剣魔祭とやらに参加出来ないのが残念なんだろう」


「剣魔祭を知る前から落ち込んだ感じでした。何か知ってるんじゃないです?」


「知らんな……」


 沈黙の中では、カチャカチャと器具が触れ合う音だけ。


「あ、それおいしそう。私の卵焼きと交換しません?」


「……タマゴヤキはいらん。けど、やる」


「えー、卵焼き美味しいですよ?」


 そう言うと、リリナの弁当に所望の物を寄越した。

 口角を上げるリリナとため息をつくタリム。


 別に、タリムはリリナのことを好いているわけではなかった。


 この対応は、ある種の諦めに近いものだ。

 キツくあしらった所でこの女が離れてくれるわけではないし、優しくした所で態度が変わるわけでもない。

 こちらのことを必要以上には探ってこないので、殺す必要もない。

 魔族と、バレてはいるが。


 いつかリリナが言った通り「ビジネスライク」に、淡々と、怪しまれないように、友達ごっこをしているだけなのだ。


「ねぇ、タリム」


「_______________なんだ」


「私たち、協力者ですよね。マリちゃんを支えていくための」


「そうだった気がするな」


「情報共有って大事ですよ。そりゃ、隠したいことの一つや二つあるかもですけど」


「……本当に何も知らん。私はただ、マリ様が話してくれるのを待っているだけだ」


 タリムは嘘をついた。

 この前の一件についてはマリから詳しく聞いていた。

 「形白(マリオネット)」や「魔王の遺体」のことを知っていた。


 だが、何故マリが悩んでいるのかは皆目見当もつかなかった。

 この女なら話せば理解出来るのかもしれない。

 だからこそ話さない。

 私が理解できないのに、理解されたら悔しいから。


「ふーん。ま、マリちゃんならなんだかんだで自己解決しそうですけどね」


「貴様にはマリ様の繊細な御心が理解出来ないようだな」


「繊細?タリムが思ってるほど、マリちゃんは弱くないですよ?」


「あ?何を知ったふうに」


 簡素な音の中、2人は数秒見つめあった。

 親しみは一切消え、そこには確かな敵意だけがぶつかり合っていた。


「……言ったところで、マリ様の御心など誰にも理解できないだろうが」


「……そうですね。心はその人にしか分からないと言いますし」


 しみじみと言った後、何事も無かったかのように2人は食事を再開する。


「困ったときは、私たちが支えれば良いんです。ですから、私がいないときは頼みますよ」


「自惚れるな。貴様がいようがいまいが私のすることは変わらない」


 小さな咀嚼音と風の音が教室を過ぎていった。


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