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その二十五 協力関係

 

「なんなんなん♪なななんなんなーん♪」


 日の当たらない木陰の元で上級魔族メリルは唄っていた。

 その手には仰向けになったフィン・ランネルがあった。


「あ、ああ、ぁぁぁぁぁ」


「どお?人間さん、楽しいでしょ?」


 メリルが呼びかけるが、フィンは喚くだけ。

 それでもメリルは楽しそうだった。

 はしゃぐ様子はその姿のとおり、子供のようだ。


「貴方の力でみんながおかしくなっちゃってるんだよ。スゴいと思わない?」


「あぁ、ぁぁぁぁぁ」


「……メリル、ナニシテル?」


「んー?楽しいこと♪」


「ヨカッタ。メリル、タノシソウダ」


「うん!すっごく楽しいわ」


「……ナア、アニキノジャミングガ、ナクナッテル。ナンデダ」


「ジャミング?ああ、死んだんでしょ。魔力反応無いし。てかアンタら兄弟だったの?」


「チガウ……ケド、カナシイ」


 魔族は手を目に当て、泣く仕草をした。

 それは仕草だけなのか涙は流れない。

 だがそれもそのはず、魔族はそういった感情に乏しいのだ。


「ねぇ、適当に援軍呼んでおいてくれる?あと、この人間さん見てて。殺したら許さないから」


「イイケド……メリル、ナニスル?」


「暴れてるのが2人いるから見てくる。どっちか魔王様だろうから違う方は殺すわ。じゃ、行ってくるから!」


 メリルは無邪気な笑顔で、黒い翼を上下させて跳び去った。


 〜〜〜〜〜〜


 時は数時間前に遡る。


「いっぱい取れましたね。ゴーレムの核」


「ええ。ここまでクラスメイトと会わないのは予想外でしたが」


 静寂の森の中、タリムとリリナは歩いていた。

 手にはゴーレムの核が7個。全て、彼女らが退治して手に入れた物だ。


「ですね。今頃マリちゃんはどうしているのでしょうか」


「さあ、どうでしょう」


 タリムは状況の異常さに気づいていた。

 王都という人間の領土に現れる複数の魔力反応、これら全てが魔族だという事実の異常さに。


 この状況、タリムは何も聞かされていない。

 これはつまり自分を含めた大半の魔族が所属している「魔王軍」の作戦では無いということだ。

 ここまで大規模で大胆な作戦を行える勢力があるとは聞いていない。


「ねぇ、タリムさん」


 そうタリムが考えている中、突然リリナは前に立ち塞がり、そして聞いた。


「私たち、名前で呼び合いませんか?」


「え、呼んでますよ」


「マリちゃんの前だけですよね!2人きりの時は「貴様」とか「お前」とかって呼びますよね!」


「……そう、でしたっけ?」


「そうです!そんな呼び方じゃ、私反応しづらいですよ。もっとちゃんと呼んでください!」


「ああ……」


 タリムは少し考え、やがて思い切るように言った。


「……正直に言おう。貴様と私は友達ではないし、私は貴様が嫌いだ」


「え……」


「マリ様に近づき、上手く取り入っている貴様が気に入らない。だから、嫌いだ」


「ぁ……そう、そうですか」


 タリムは冷たく言い放った。リリナが人見知りということは知っていながら。その心に罪悪感はない。魔族とはそういうものだ。

 強き者に憧れ、他者を思うような感情が薄く、人間への憎悪が濃い。

 人間と友好関係を築くなど、出来るわけがなかった。


「でも、私たちはマリちゃんの友達ですよね」


 それでもリリナは話を続けた。


「私たちはどちらも、マリちゃんを大切に思っています」


「あ、ああ……」


「ですから、私たちは協力者になりませんか?」


「意味が分からん。きょ、協力者だと?」


 タリムは拍子抜けた表情をした。


「はい!マリちゃん、いつも思い詰めた表情をしていますよね。だから、私たちで支えてあげるんです!」


「マリ様を支えるのは良い。だが、貴様と馴れ合う必要は……」


「ですから、協力者の私たちは仲良くする必要ないんです。そうですね……ビジネスライクで行きましょう、ね?」


 そう言うと、リリナはにこやかに手を差し出した。


「何をくだらないことを言っている」


「ね!」


「あぁ?……ふん。じゃあ、もうそれでいい」


 面倒くさそうにタリムはその手を取った。


「では、ビジネスライクに呼び捨てで呼び合いましょう!」


「は、はぁ?」


「いいですか、タ、リ、ム!」


「ちっ、誰がそんな馴れ馴れしいことを」


「あんまり邪険にしてると、マリちゃんに言っちゃいますから」


「……リリナ」


 タリムが恥ずかしそうに顔を背けるとリリナは嬉しそうに笑った。その場しのぎで合わせてやってるだけ、軽く考えていた。


 上空に魔法陣が現れたのは、その瞬間であった。


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