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第86話 精霊魔法



 ユリカは自分の目を疑った。


 目の前に現れた彼女の体は、透けていた。

 それだけじゃない、足だって浮いている。


「これが……精霊……?」


 初めて見る精霊の姿に、思わず時が止まってしまう。


「君、どうかしたの?」


 突然動きを止めたユリカに、クロセルが問いかける。


(なるほど、彼には見えてないんですね)


 なんと心強い助っ人だろうか。

 だが自分は何をすればいいのだろう。


「貴方は、援護、して。私が、倒す」


 そう言って精霊 シュバリエルは両手を広げる。


「精霊魔法 極光(オーロラ)波動(・ウェーブス)


 辺りが強い光に包まれる。

 その光の強さに、ユリカは咄嗟に目を閉じた。


(これが、精霊……っ)


 正直、自分が使う魔法とは比べ物にならなかった。

 光が晴れた先に見えたのは、身体の前半身が焼き焦げ黒い煙を吹き出すクロセルの姿だった。


「今の、君の魔法じゃないねぇ……」


 周辺の大気がクロセルの体を包みだし、やがて傷が塞がり出す。

 だが確実にダメージは受けているようで、修復まで時間がかかっているようだ。


(今のうちに……っ)


 ユリカはうずくまるクロセルに追い打ちをかける。


栄光(グローリー)(・ケージ)


 光の檻がクロセルを覆い、封じ込める。

 光の檻だ、例え上級階級とて魔人は抜け出せないだろう。


 問題はここからどうするかである。


(アレを、試して見ましょうか……)


 アレとは、禁忌魔法の原本に記されていた光魔法のことである。

 ただこの魔法は魔力の消費が激しいため、2度は使えない。

 つまり外せないのだ。


(奴は今行動不能、そして栄光の檻で身動きが取れないはず……。やるなら今しかない!)


 迷ってる余裕などない。

 打つと決めた以上、ユリカは腹を括った。


「何を、する、の?」


 ユリカの隣で精霊 シュバリエルが問う。

 その時ふと、ユリカは思った。

 彼女が本当に精霊なら、この禁忌魔法についても知っているのではないか?


「……今から禁忌魔法 破魂(ライト・オブ・)(ソーリスネス)を放ちます」


 思い切って技の名前を口に出す。

 それを聞いたシュバリエルは表情一つ変えずに、


「……やめた、ほうが、いい」


 そう呟いた。


「……どうして、ですか?」


 聞き返さずにはいられなかった。

 反応を見る限りこの魔法について何か知っているようだが、やめた方がいいとはどういう意味なのだろうか?


「その魔法は、使ったら最後、自分の魂をも、消費、する。命が、危ない」


「……でも、ユズルさんを救うには彼を倒さなきゃ──」


「──貴方がいないと、ユズルが、悲しむ」


「……っ」


 シュバリエルはずっと何か引っかかっていた。

 眠っていた間の記憶は存在しないはずなのに、何故このふたりが深い絆で結ばれている、ということが分かるのか。

 ここまで来る間、二人を最も近くで見てきたのは彼女(シュバリエル)だ。

 故に分かるのだ、彼らの思いが、彼らの愛が。

 たとえ記憶がなくとも、伝わってくるのだ。


「だから、その魔法は、だめ」


 シュバリエルの言葉を聞き、ユリカは口を噤む。


「では、どうすれば……」


「私の、手を、握って」


 シュバリエルの言う通り、ユリカは彼女の手を握る。

 実体はないのに、確かにその手を握った。


「今から打つのは、精霊魔法 精霊ノ光線弾(スピリット・レイガン)。私達の、魔力を集結させて、放つ、一撃」


 ユリカの腕を通って、魔力が注がれる。

 そのむず痒い感覚に、背筋が震えた。


「チャンスは、一回。準備は、いい?」


「はい」


 ユリカの全身の魔力を一点に集結させ、放つ──。


「──精霊魔法 精霊ノ光線弾(スピリット・レイガン)


 光の精霊と王家の血を継いだ者の光魔法。

 

 その威力は、計り知れない──。

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