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第82話 覚醒



(決まったか……っ?!)


 手応えはあった。

 だが一撃で倒せる相手だとは到底思えなかった。

 振り返る身体が震える。

 振り返った先でユズルが目にしたのは、身体から霧のようなものを噴出するクロセルの姿だった。


(こいつ、傷口を……っ!)


 クロセルの発する霧は一瞬のうちに傷口を塞ぎ、何事も無かったかのようにユズルを見る。


「君、面白いね。この短い戦闘時間でここまで成長するとは」


「はぁ、はぁ、違ぇよ……」


 聖龍を放った反動で息が切れる。

 あまりにも多くの冷気を吸い、ユズルの喉と肺は痛みだしていた。


「今の数分で成長したんじゃねぇ……どれもここに来るまでに得たもの達だ……」


 アルバ村で師匠(ボップ)に剣技を教わり、フォーラ村ではキリヒトから融合(ユニオン)を教わった。

 ウィズダ村ではメイシスから初ノ型 聖龍を教わり、竜の渓谷では竜の戦闘スタイルを間近で体感した。

 王都(エルミナス)では魔人化の力を一時的に覚醒させ、あの大佐(グランドゼーブ)を討ち取った。

 そしてここアイアスブルク辺境伯領に来て遂に、聖剣の中に眠る精霊 シュバリエルの力を手に入れた。


「みんなが居たから、俺は強くなれたんだ……。だから俺は、それに応えたい!」


 するとその刹那、手に握る聖剣(シュバルツ)が強く光り出す。


「……私も、貴方の覚悟に、応えたい」


「シュバリエル……」


 まるで周りの光を吸収するかのように、その輝きは増していく。

 その時だった。

 クロセルの口から思わぬ一言が発される。


「流石だ、シュバリエル。魔王様が恐れているだけある」


「……お前、シュバリエルのことを知っているのか……?」


 あまりにも衝撃的だった。

 だがよくよく考えれば知っていてもおかしくないのだ。

 魔人は全て悪魔から生まれた。

 つまり目の前の魔人(クロセル)が生まれた時代にはまだ、精霊は一般的に流通していたはずだ。

 それにあの魔王に一撃を入れた剣に宿る精霊だ。

 知っていてもおかしくない。


「そもそも僕がここに出向いた理由(わけ)は、その子だしね」


「……どういうことだ?」


 シュバリエルが理由だと?


「魔王様の命令だ、精霊 シュバリエルが目を覚ます前に抹消せよ、とな」


「……俺を襲うなんていつでもできたはずだ。なぜ今なんだ?」


「それは、君がここまで来れると思っていなかったからさ」


「……つまり、ここに俺がたどり着けなきゃシュバリエルは目覚めなかったということか?」


「そういうことだよ。だからずっと待っていたんだ、君が来るのを。いや──」


 魔人(クロセル)の身体から黒いモヤのようなものが漂い出す。

 この光景は過去に1度見たことがある。

 それはベルゼブブ討伐戦の時の出来事だった。


「精霊 シュバリエルが来るのをずっと待っていた。これ以上待たされるのは御免だ」


覚醒(デーモニゼーション)……っ!」


「さぁ始めようか、ここからが本当の戦いだ」


 覚醒した魔人 クロセルと精霊 シュバリエル。


 光と闇が、交錯する──。

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