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第72話 新たな旅立ち

<第5章エピローグ>


 無事船に乗り込んだ二人は一先ず水分補給を行い、客室へと案内された。


「客室っつってもベッドがふたつに机がひとつある個室しかないけどな。あくまで脱出用だからこれで勘弁してくれ」


「いや、部屋があるだけありがたい。最初から最後まで……」


「いいっていいって、お礼ならルイスにでも言ってくれ。彼女がこの船を手配してくれたんだ」


「ルイスさんが?」


 話によるとルイスさんは最初からユリカの救出を第一に考えてくれていたようだ。

 次会う機会があれば、是非ともお礼がしたい。


「それで、この船は一体どこに向かってるんですか?」


「一応この先にある小島で他の船に乗り換えてもらおうと思ってる。この船じゃそんな遠くまでは行けないからな」


「なるほど、ありがとうございます」


「と言ってもまだまだ時間がかかるからゆっくり休んどけな」


 そう言って船長は部屋を後にする。

 部屋に残される2人。

 沈黙が続く。

 というのも、


(俺、もしかして好きって言っちゃった?)


(ユズルさんに好きって言われちゃいました……。どうしましょう、私も好きですって伝えた方がいいのでしょうか)


「「あ、あの……」」


 お互い目が合ってしまい、顔を背ける。


「ユリカからいいぞ?」


「いえ、ユズルさんから、どうぞ」


 再び沈黙。

 先に口を開いたのはユズルだった。


「ユリカは、俺の事どう思ってる?」


(え、俺何を聞いて……)


 気まずさのあまり無意識に別の質問をしてしまう。

 だがこれはこれで気になるわけで……。


「……私も……です」


「え?」


「だ、だから!」


 珍しくユリカが声を荒らげる。

 その顔は耳まで真っ赤に染まっていた。



「私も、ユズルさんのことが好きです!」



 そう断言され、ユズルも赤く染る。

 暑さのあまり溶けてしまいそうだった。


「その、ユズルさん……」


「ど、どうした?」


「んっ」


「……え?」


 ユリカが目を閉じたまま唇を突き出す。

 いきなりの出来事に脳が追いつかなかった。


「……私の事、嫌いになっちゃいましたか?」


「え、いや好きだけど」


「……///」


 ど直球に好きと言ってしまいユズルも照れてしまう。

 この状況、心臓が持ちそうにない。 


「なら、キスしてください」


「……え?」


「私からはしましたが、ユズルさんからはまだされてません。だから……」


 目を閉じてその時を待つユリカ。

 ユズルも覚悟を決めユリカの肩を掴む。

 そして、そっとその唇を塞いだ。


「ん……」


 触れ合う肌は熱く、唇は溶けるように柔らかく、心臓はまるで竜王の咆哮のように轟いていた。

 唇が離れる。


「……ユリカ、お前真っ赤だぞ」


「……ユズルさんも……です」


 ユリカとユズルが出会って半年。

 生まれ育った故郷を離れ、そして今日、その故郷がある大陸をも離れた。

 王都協力の機会を失い、これから先どこに向かえばいいのか分からない。

 だが、不思議と不安はなかった。


 二人一緒なら、この先もきっと──。




「……アーロン、お前に手紙が来てる」


「……あ?……あぁ、そこに置いておいてくれ」


「手紙の主は、辺境伯からだ」


「……貸してくれ」


 アーロンと呼ばれる男は辺境伯から送られてきた手紙を開く。

 そこには短く、


"近々お前の旧友の孫がここに来るだろう。お前が打った、聖剣を持ってな"


 そう記されていた。


「……やっとか」


 ローレンスに託してから実に50年の時が流れていた。

 色褪せない、あの頃の記憶。


「英雄の、凱旋だな」


 アーロンはそう呟くと、鍛冶場の奥へと消えていくのだった。



6章に続く。

 今回の話をもって2年間続いた物語の一節が幕を閉じます。

 ここまで書くことが出来たのは読者のみなさんのおかげです、本当にありがとうございました!


 それでは第二節でお会いしましょう。

 予告へどうぞ!




【第6章予告】


 王都での頂上決戦を制し西の大陸を目指して海へと出た二人。


 着いた先は、かつての英雄 ローレンスの故郷の地、アイアスブルク辺境伯領であった。


「お前さんのその剣は、俺が打ったんだ」


 聖剣シュバルツを打った本人であるアーロンと出会い、聖剣の真実を知る──。


 息を着くのもつかの間、ユズルの元に新たな魔の手が忍び寄り……。


「これが、シュバルツの真の姿──?」


 第6章 英雄の凱旋編、開幕──。


 


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