第68話 ぶつかり合う闘志
「──聖龍!」
伝説の一撃。
光を纏った聖剣は、その真価を発揮した。
(手応えはあった……っ!どうだ?!)
ユズルは技の反動を受け流すと後ろを振り返った。
だがそこに大佐の姿はなく……
「──烈風!」
「がぁ!!」
(速度が出なかったとはいえ、流石に早すぎる……っ!)
全身を地面に叩きつけられ、2本の剣が交わる。
「お前……なんだその姿は……?」
「何を言って……………ッ」
その言葉の意味がわかった瞬間、ユズルの中で何がが壊れる音がした。
ユズルの目線の先には、黒く侵食された指先が……。
(まさかあの夢は……っ!)
「お前、魔人だったのか?」
「いや、違……」
「違わねぇよな、なぁおい……」
大佐の鋭い眼光がユズルを睨みつける。
その眼は先程とは全くの別物だった。
軽蔑のような、怒りのような、困惑のような、色々な感情が剥き出しとなったその瞳を見て、ユズルの身体は震え上がった。
それは大佐に対する恐怖からなのか、自分自身に対しての不安からなのか、もはや分からなかった。
「お前があの忌み子と一緒にいる理由が分かった……」
「話を聞いてくれ……俺は魔人なんかじゃ……」
「生憎魔人に傾ける耳は持ち合わせていない。心底失望した……」
頭を搔いて感情を露わにする大佐。
その言葉一つ一つが、ユズルの心を破壊していく。
「お前が忌み子を連れていた理由は仲間だったからじゃない。利用するため、そうだろ?」
その一言を聞いて、ユズルの体から震えが止まった。
「……今なんつった?」
「あ?」
ユズルがその鉛のように重くなった頭を上げる。
侵食によってさらに強調された顔は、大差を睨んでいた。
その表情にはもはや人間味は感じられず、まるで獲物を目の前にした飢えた魔獣のようだった。
「……取り消せよ、さっきの言葉を」
「何を言って……」
「俺は利用するためにユリカとここまで来たわけじゃねぇえ!」
ユズルが吠える。
「ユリカは俺の仲間だ!誰がなんと言おうと、俺たちは仲間なんだ!」
握った拳を地面に叩きつける。
その地面に、数滴の水滴が落ちる。
「俺だって……望んでこんな姿になったわけじゃねぇ……。ユリカだって、望んでああなったわけじゃねぇ……!」
ふらつきながらも立ち上がる。
闘志と怒りに房ぶられながら、ユズルは再び剣を構えた。
「俺はこの場でお前を討つ!!!!」
「なんと言おうが魔人には変わりない!己の正義に従い、お前を討つ!!!!」
燃え上がる二人の闘志。
この戦い、息を着く暇もない──。