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第58話 作戦会議



 迅速な対応が求められる中、ルイスは兵士を集い状況の説明を開始した。

 最初は反対の声も上がったが、次第に認め始め何とかユズル達は帝国と同盟を結ぶことに成功した。

 同盟を結ぶにわたって交わした条件、それは戦力の提供及び情報の共有だった。

 ユズル達は、今自分達が得ている情報や戦闘技術などを話し、交換条件として王都や儀式の情報、及び帝国の兵力を手に入れた。

 最初は絶望的に思えたユリカ奪還作戦は、日が暮れる頃にはほぼ纏まりつつあった。


「まず、王城の内部についてだけど……」


 ルイスが一枚の間取り図を広げる。

 それは、ユズルが図書館でいくら探しても手に入れられなかった王城の間取り図であった。


「ここが王都軍の上層部がいる部屋で、こっちが聖王の謁見……」


「あの、少しいいですか?」


「……?」


 話の途中でユズルが口を挟む。

 いくらなんでも相手の懐を知りすぎている。


「なんでここまで細かい情報を……」


「私達には王城内部に仲間がいるの」


「……?!」


 二人は驚きを露わにする。


「王都軍が不振な動きを見せ始めたのは、つい最近の事じゃないの」


 隣でミカエラさんの手が震えているのが確認できた。


(そうか、竜人と王都軍は昔から争っていたと聞いていたけど、そういうことだったのか)


「だから我々は早々に諜報員を王都に派遣していたのよ」


「なるほど、だからあのタイミングで奇襲を……」


「そういうこと。あの襲撃の日の前日、諜報員から"王都軍の手に悪魔の心臓が渡った"という情報が入ったの」


 話によると、儀式の執行を恐れた帝国は軍を派遣し魔導書の一冊だけでも奪還を試みた。

 しかしその試みは虚しく散り、多くの兵を失う大打撃を受けてしまった。

 そして王都軍に忌み子の血が渡ってしまった今、一刻の猶予も許されない状態となった。


「問題の作戦の方なんだけど、今度は昼間に仕掛けようと思うの」


「昼間、ですか?」


 夜間と違い、昼間は警備が多い。

 それにもかかわらず昼間に攻める理由が何なのだろうか?


「理由は幾つかあるけど、今回は四方から攻めようと思ってるの。時間を要する作戦だから昼間の王都に一般人として侵入して王城を目指すわ」


「でも結界を出入りする訳ですし、向こうにバレてしまうのでは?」


「その心配はないわ。諜報員によると、どうやら王都の結界は機械によって維持されているらしいの」


 さすが王都、最先端の技術を取り入れている。

 だが、それだと王都にしては不用心すぎる。

 何か裏があるはずだ。


(だけどその裏が分からない以上、実際にやってみるしかない、か)


「そうだ、検問はどうやって突破するんですか?」


 ユズル達が王都に入った時は、ユリカが門兵に軽い幻覚を見せシュバルツ等を隠したが、今そのユリカが捕まってしまっている。


「それが昼間のいい所のひとつなの。昼間なら怪しまれることなく諜報員が門兵としてつけるわ。一箇所から時間を一定間隔開けて王都に侵入して四方に広がる予定よ」


「そうだとしたらかなり時間がかかるのでは……?」


「そう、だから王都に侵入した日は攻めないわ」


 ルイスはいくつかのビーズを王都の地図にばらまく。

 と言っても適当にばらまいた訳ではなく、しっかり規則性があった。

 それは、ビーズが置かれた所には「宿屋」と記されていたのだ。


「……つまり、一晩開けると」


 ユズルの問いかけにルイスは頷く。

 そしてルイスは諜報員と思われる赤いビーズを、結界の境界面から王城へと移す。


「私たちが王城に攻め入った後、混乱に乗じて彼らに内部を襲わせるわ。少しでも援軍を遅らせるために」


 いよいよ戦争という言葉が似合う展開になってきた。

 昼間のうちに敵国に侵入し、夜が開ければ戦地と化す。

 敵は外部のみに在らず、内部の裏切りによって混乱した所に敵軍が攻めてくる。


「明日になれば諜報員からもっと詳しい情報が入るはずよ。その情報を受け取り次第、王都への侵入を開始するわ」


 王都での戦争、まさに人間界を揺るがす戦いが幕を開けようとしていた。


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