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第56話 同盟



 宿屋を出た2人はまず、先日訪ねた喫茶店へと足を運んだ。

 あそこなら人気がないため、周りを気にする必要が無いと考えたからだ。

 わざわざ人目を盗んでまで話し合う理由、それはユリカの奪還に伴いとある人達に協力を要請しようと考えたからだ。


「帝国軍。彼らと接触しよう」


 とある人達、それは帝国軍の事を指していた。

 未だに帝国軍の目的は分かっていないが、王都軍という共通の敵がいる。お互い、断る理由が無いはずだ。

 最初、一度渓谷に戻って竜人に協力を仰ぐことも考えたが、襲撃されたばかりで修復作業に人手がいるだろうと考えその案は没となった。

 そうなると現在ユズル達が頼れるものといえば、王都に来ていると思われるボップを除けば帝国軍だけとなる。


「これが王都周辺の地図だ」


 ユズルは図書館から借りてきた地形図を広げる。

 王都は海に面している一方、大陸側には一定の範囲内に三つの町が点在している。

 そのひとつが今回の鍵となる帝国 インペリアルだった。

 距離はさほど離れておらず、ミカエラの飛行技術があれば片道一時間とかからない。

 早速荷物をまとめた二人は、帝国に向けて飛び立った。




「……あれか」


 数十分ほど飛んだ先に、ひとつの町が見えてきた。

 規模は王都と比べるとそうでも無いが、今まで通ってきた村と比べるとはるかに大きかった。

 帝国と言えど一応はひとつの町である。

 旅人の入場制限などはなく、二人は何事もなく帝国内へと侵入した。

 

 帝国内は特に変わったところはなく、普通の町という印象だった。


「とりあえず帝国軍を探そう。恐らく武装してるから見つけやすいと思うんだけど……」


 とりあえず村長の所へ行けば誰かしらいるだろうと考え、村の中心部へと向かう。

 そして村長宅に着くと、思惑通り兵士らしき人物を発見した。

 とりあえず軍隊が駐屯している場所を聞き、その場を後にする。


 軍隊の駐屯地へと移動すると、門兵が二名立っているのが見えた。

 早速声をかけ、中に入れて貰えないか交渉する。

 だが……


「この先は関係者以外立ち入り禁止だ。去れ」


 門の前にいた門兵に足止めをくらい、二人は苦い顔をする。


「あの、実は俺たち軍の上層部の人と話がしたいんだ。どうにか通してくれないか?」


「上層部の人と話すには、向こうからの招待状が必要だ」


 一向に話し合いが進む気配が見えず、苛立ちを覚えたユズルは大きく切り込む。


「どうしても、帝国軍の協力が必要なんだ!」


「何を言おうが無理なものは無理だ。そもそもお前たちは誰なんだ?」


「……俺たちは旅人だ」


「旅人が軍に何の用だ?」


「俺たちは、王都から来た」


 その一言を聞いて、門兵の顔が険しくなる。

 一人が剣を抜いたかと思うと、ユズル達と距離を詰めてきた。


「王都の者が何の用だ?!偵察のつもりか!」


「違う!俺たちは王都軍を倒すために協力しようと……」


「そんな戯言聞かんわ!怪しいやつは消す、それが俺たちの役目だ!」


 門兵が剣をかまえ、いよいよこちらに振り被ろうとしていた。


(くそっ、やっぱり無理なのか……?)


 ユズル達は一方引き、いざと言う時のために剣に指を這わせる。


「貴様らを反逆者と認定、これから仲裁を行う!」


 門兵が剣を振りかぶったその時だった。


「──待ちな!」


 門兵の背後から声がし、門兵は動きを止める。

 門兵の先にいたのは、甲冑ではなく軽装な戦闘服を身にまとった髪の短い一人の女性だった。

 その姿を見て、門兵は地面に膝を着く。


(……あれ?あの人どこかで……)


「「ルイス様!失礼いたしました!」」


「いいよいいよ、頭上げて?」


 伏せる門兵から視線を上げ、ルイス様と呼ばれる女性はユズル達へと視線を向ける。


「君たち、中に入るといい。助けてもらったお礼もしたいしね?」


 ルイスは笑顔で手を振ると、ユズル達を駐屯場へと招き入れたのだった。

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