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第33話 豊穣の季節



 時刻はお昼時。

 ユズル達一行は闘技場を離れ、広場に移動してきていた。

 辺りには出店で賑わい、見慣れない食べ物がずらりと並んでいる。

 

 さすが竜人の祭りと言おうか。

 どこを見ても肉、肉、肉、と書かれている。

 収穫祭と聞いていたので、もっと果物や野菜が主役かと思っていたがどうやら違ったらしい。


「ユリカ、食べ切れるか?」


「……出来るところまで頑張ります……」


 料理を目の前にしたユリカが引き気味な声を漏らす。

 目は死んでる。


 ユリカが頼んだのは【ドラゴンピラフ】と呼ばれるもので、穀物の種と肉を炒めた料理である。


(これ、ドラゴンの肉使ってるのかな……)


 見た目が鱗のように見える為そう思ってしまう。

 名前もドラゴンピラフだし……。


 見た目はどれも美味しそうである。

 美味しそうなんだが、どれも竜人サイズの大盛り。

 正直ユズルも食べ切れる気はしていない。

 小さいユリカの顔が、より小さく見える。

 軽く顔の二倍はあるんじゃないかこれ。


「残ったら私が食べるから大丈夫よ」


 目の前では、既に食事を終えたミカエラさんがこちらを見ていた。

 あの量をこの一瞬で食べ切ったと思うと、恐怖を感じざるを得なかった。


「ユズルは無理しないようにね?午後も試合あるんだから」


「はい、程々にしておきます」


 残す口実がてきてほっとする。

 しかし味はいいので残すのが少し惜しい。

 横ではユリカが黙々と食べ進めていた。


 と、ユズルはあることに気がつく。


「そういえば、神楽があるって聞きましたけど巫女さんの姿まだ見てない気が……」


 昨日の話だと初日の今日、巫女さん達による神楽が見れると言う話だった。


「まだ次の試合まで時間もあるし、見に行ってみるかしら?」


 どうやら別の場所で行われているようだ。

 部外者のユズルでも分かる。 

 この時間、人が最も集まるのは間違いなく今いる広場である。

 それにもかかわらず別の場所で行われているということは、見世物である以前に重要な儀式であるということを感じさせられる。


 ミカエラさんに案内された先で見た光景に、ユズル達は息を飲んだ。


 神楽を踊る巫女達。

 それを彩るかのように、紅葉めいた木の葉が舞い踊る。

 静かな山の中に、巫女達の手に握られた鈴の音だけが響き渡り、その音色を聞いた木々達が来年も再来年も未来永劫繁栄することを願い、巫女達は踊り続ける。

 その姿は美しいだけでは言い表せない、力強さを感じた。




「さて、お昼挟んで遂に二回戦第一試合の開始です!会場の皆さん、お昼は何食べましたか?ちなみに(わたくし)ドレークは【ドラゴンテール焼き】を食べました!」


 会場に熱気が入る。

 一回戦を終え人の減った控え室には、初戦を勝ち抜いてきた猛者達が集まっていた。


(ちなみにあとからミカエラさんに聞いた話だが、ドラゴンピラフやドラゴンテール焼きはドラゴンの肉は使われていないそうだ)


「それでは選手のお二人に登場していただきましょう!まずはこの方、初戦を鮮やかに飾った人間界の若き剣士!ユーズールー!」


「うおおおおぉ!」


 会場の熱気が一気に上がる。

 二回目とは言えどやはり緊張からか声が強ばってしまった。


(さっきより観客が増えてるな……)


 午後だからなのか、それとも二回戦だからなのか。

 会場には先程より多くの人が足を運んでいた。


「対する相手は、烏獲之力(うかくのちから)!鍛え上げられた肉体は刃をも通さない!不屈の力、アーーノールードー!」


「うぉおおおおおおおおおおおお」


「──っ」


 アーノルドの雄叫びに、ユズルは体を強ばらせた。


(なんて声量と体格なんだ……)


 観客席で見ていた時とは大違いだった。

 アーノルドの容姿は、まさに鉄の筋肉を纏った大男だった。


(こんな体に、果たして木刀は効くのか?)


 正直どんなに強い打撃を入れたとしても、ダメージを与えられるようには見えない。

 間合いに入れば殺られる、そう本能が叫んでいた。


「それでは二回戦、開始です!!!」


 コングの音が鳴り響く。

 ユズルは木刀を握り直し、巨男へ体を向けるのだった。

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