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第32話 ユズルvsブラスト



 試合の開始を告げるコングがなり、観衆の盛り上がりは最高潮に達した。

 その観衆の目を集めるかのように、ブラストは手に持っていた木刀を持ち上げ、半分に折り曲げた。


「なっ……!」


 決して木刀が脆いわけじゃない。

 ブラストという男の腕力が凄いのだ。

 折り曲がった木刀を投げ捨てブラストがユズルと向き合う。


(俺の木刀が折られたらその時点で負けだ)


 安易に近づいて木刀が折られることを警戒する。

 まずはブラストがどう仕掛けて来るのかが知りたい。

 安全な間合いからその瞬間を待つ。


 果てしない緊張感の中、ブラストが動く。


「死にたくなかったら避けろよ?」


(早いッ……!)


 かなり距離を取っていたはずなのに、たった一踏みでユズルの顔前に飛び込んでくる。

 すんでのところで何とか交わし、転がりながら距離をとる。


 先ほどまでいた位置を見ると、ブラストの腕が地面に埋まり、当たり一帯にヒビが走っていた。


(なんて腕力だ……ッ)


 今の一撃で推測するに、奴は猛スピードで突進してくる、魔獣で言うところの大熊のような戦い方のようだ。

 ただ大熊と違うところがひとつある。

 それは、軸が足ではなく腕にある事だった。


(身体の崩れ方から見て恐らく着地点は腕の埋まっている所だ。つまり奴は速さはあるが、足では止まれないんだ)


 そうと分かれば腕を封じればいい。

 だが、奴の腕を狙うのはかなりのリスクが伴う。

 迂闊に近づくのは、かえって木刀を破壊されかねないのだ。


「何処まで逃げ切れるかなぁ?」


「ッ……!」


 次から次へとブラストが攻撃を仕掛け、徐々に距離が縮まりだす。

 ブラストが飛ぶ度、観客席では大きな声援が上がる。


「はぁ、はぁ」


 何とかブラストと距離を取り、呼吸を整える。

 開始から既に十数分が経っている。

 未だユズルは仕掛けることが出来ずにいた。


「そろそろとどめを刺すとするか」


 ブラストが構えに入る。

 そして今まで同様ユズル目掛けて飛び込んで来た。


(今だッ……!)


 ブラストの攻撃を後ろに交わすのではなく、逆に一歩踏み込む。

 そのまま姿勢を地面に付ける勢いで下げ、ブラストの下に潜り込んだ。

 ブラストは予想していなかったユズルの動きに動揺を見せるが、そこをユズルは逃さなかった。


「ローレンス式抜刀術弐の型 旋風!」


 低姿勢ながらも身体を回転させ、ブラストの肘に軽い打点を入れる。

 魔法を絡まない純粋な剣技。

 勿論これだけではトドメはさせない。


 だがこれだけでよかった。


「なっ、がはっ……!」


 肘に上手く力が入らず、ブラストの着地に失敗する。

 その勢いを殺すことが出来ずにブラストの身は場外へと投げ出された。


「勝負あり!ブラストの場外反則により、勝ったのはユーズールー!」

 

 ドレークがそう宣言すると、観客席からは大きな歓声が上がった。

 その歓声に答えるようにユズルは木刀を天に向け、叫んだ。

 観客席を見渡すと、最前列にミカエラさんとユリカの姿が目に入った。

 二人ともユズルの視線に気づくと笑顔で手を振ってくれた。


「いてててっ……」


 ブラストが頭を撫でながら場内に戻ってくる。

 そのままユズルの方に歩み寄り、二人は硬い握手を交わした。


「見事だ。だが、次は戦術を変えるといい。初戦は注目されるが故、二回戦以降同じ手は通用しなくなる」


「ありがとう、そうしてみるよ」


 改めて近くで見ると怖い顔をしているものの、ドレークの言う通り優しい人なんだなとユズルは思った。




「ユズルさん、お疲れ様です」


「お疲れ様ー!」


「二人共……ありがとう」


 控え室を出た先には、ミカエラさんとユリカがユズルを待っていた。

 二回戦が始まるまで時間がある為、観戦席で試合を見ようという話になっていた。

 ユリカには申し訳ないことをしているようで、少し罪悪感を感じる。

 きっと観光したいだろうに。


 会場の方からはドレークが入場選手の説明をしている声が聞こえてきた。

 もうすぐ二戦目が始まるのだろう。


「もう場所取りは済ませてあるから行きましょ。次の対戦カードもなかなか見応えあって面白いわよ」


 ハイテンションなミカエラさんを見ると、やはり戦闘系が好きなんだなと思ってしまう。


(まぁ嫌いだったら大会連覇なんてしてないか……)


 対ブラスト戦の余韻を噛み締め、ユズルは観客席へと足を運ぶのだった。

<後書き>

ご愛読誠にありがとうございます。


暫く週一投稿になってしまうと思いますが、これからもよろしくお願いします!

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