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禍々しき侵食と囚われの世界【最終章開幕】  作者: 悠々
第2章 結界都市陥落編
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第16話 再会



「みんな!建物に隠れろ!!!」


「「「「マジックバレット」」」」


「がぁぁぁぁぁああ!!」


「やったか?!」


 キリヒト団長と魔獣の群れが地下通路が出てきてはや数十分、南に散らばった副団長のライは魔法班と合流し戦闘に当たっていた。


(俺を含む物理班が、魔獣を魔法班の射程圏内までおびき寄せ、魔法班がとどめを刺す。時間はかかるけど、これなら被害が最小限に抑えられるはず)


「ライ副団長!」


「どうした?」


 砂埃で視界が悪い中、一人の団員がライの元へと来る。


「それが……」


 その団員の発した言葉に絶句する。


「………指揮を任せられるか?」


「……任せてください。副団長は……?」


 下唇を強く噛んだ。

 刀を納刀し、顔を崩壊した時計塔に向ける。


「団長に報告してくる。……撤退する覚悟もしておいてくれ」




「これで最後か……」


 頬に着いた血を拭い、術を解く。

 砂埃が上がる中、目の前の崩壊した時計塔が浮き上がってくる。


(時計塔のある場所が村の中心部、太陽の位置からしてここは西か……)


 周りに他の団員や魔獣の気配は感じない。


(とりあえず戦況を確認したい……。中心に向かってみるか)


 足に魔力を込め砂埃の中を進む。

 が、不意に何者かの気配を感じた。


「っ、取りこぼしか!」


「待ってください!」


 視界が悪く相手の顔が見えないが、声で分かった。


「ライか?誰かと一緒じゃないのか?」


 お互いの顔が確認できる距離まで近づく。

 ライの顔色は青ざめていた。


「先程まで南で複数の団員と討伐に当たっていました。それで団長に報告しなければいけないことが……」


 緊急事態だということは表情を見れば分かった。


「他の団員から聞いたのですが……勿論私もここに来るまでに確認してきたんですが……」


 その言葉を聞いてキリヒトの表情が一変する。


「村の外に術式が書かれていました。それも確認できただけで南から東まで、村全体を囲うように展開されていました」


「はめられた、のか……」


「まだベルゼブブによるものと決まった訳ではありません。もしかしたらハルク村の魔王襲撃以前に書かれた可能性も……」


 と言いかけてライは気づく。

 この人は、キリヒトは前回のベルゼブブ討伐戦唯一の生き残りだということを。


「以前来た時はそんなものは無かった。……悪い予感がする、とりあえずこの村から出よう」


「……そうですね、では私は南に戻ってそのまま村を出ます」


「分かった。俺は北に向かう。村からでたら東で落ち合おう」


「分かりました。どうか気をつけて」


「お前もな。南は任せたぞ」


 そう言ってライと別れを告げる。


(状況を一度整理しよう)


 地下通路にいた魔獣の群れをおびき寄せ地上に出て俺は西に、ライは南に散らばった。

 ベルゼブブとユズルを含めた地下通路班とはいまだ合流できておらず、ハルク村の周りには術式が展開されている、と。


(とにかく地下通路班との接触を図りたい。向こうの状況が分からないのに、戦力が削られ続けいる……。まるであいつの手のひらで踊らされているようだ)


 気が付かないうちにベルゼブブの罠にはまってしまっていた。

 ……まるでこちらの動きが読めているかのようだ。

 今までも何度か感じていたが、ベルゼブブという魔人はかなり慎重深い。

 今回もおそらくこの村(ハルク村)の準備が整ってから襲撃してきたのだろう。


「あそこか」


 そうこうしているうちに、煙が見えてきた。

 とりあえず今は目の前のことに集中しよう。


「きっとあいつなら大丈夫だ──」




「なんだ……ここ」


 地下通路を進んだ先に待っていたのは大きな開けた空間だった。


「魔獣の匂い……だけど、魔獣の姿が見当たらない……」


 辺りを見渡しても魔獣の姿はおろか、気配すら感じない。


「レーネ副団長、奥に地下通路に繋がる道を発見しました!」


「っ、急ごう」


 こんだけ濃く魔獣の匂いが残っているということは、最近まで魔獣がいた証拠だ。

 だが、ここまで来る道に魔獣の姿はなかった。


(やっぱり……)


 反対側、つまりハルク村に抜ける地下通路にはまだ魔獣の匂いが残っていた。


「うわぁぁぁああ!」


「どうした?!」


「そ、その……」


「なっ!」


 壁一面が真っ赤に染っている場所に出る。


(この匂い、まさか……)


「レーネ副団長……これ……」


「…………ああ」


 他の団員が見つけたものは、フォーラム騎士団が身につけているはずのバッチだった。


「出口はこっちであっているようね……急ぐわよ!」


「「「「は!」」」」


(一体ここで何があったの……?)


 同朋の血で濡れた地下通路を走り続け、ついに地上へと出る。

 周りの建物は崩壊し、遠くで煙が上がっているのが確認できた。

 近くに魔獣の気配はない。


(まずは地上班と合流したい……煙が上がっているところまで移動するのが一番可能性があるけど、効率が悪い。ここは二手に分かれて……)


「レーネ副団長!何かがこちらに向かってきます!」


「何っ?!……いや、あれは」


 煙の上がる方向から人影がこちらに向かって来るのが見えた。


「団長!」


「レーネか?!」


 キリヒトがクリストロン装備による飛行をやめ駆け寄る。


「ユズルは一緒じゃないのか?」


「ユズルさんなら今ベルゼブブと……」


 とその時、地面が強く揺れ紫色の光が村を包み込んだ。


「まずい、とりあえず村から出よう」


「これは一体……?」


「分からない!だが、村から離れた方が良さそうだ」


(なぜ急に……先程まで何ともなかったのに)


「………今の声は」


 遠くから聞き覚えのある声が聞こえた気がした。


「ぁぁぁぁぁぁぁああ!」


 次第にその声は大きくなり、やがて姿を現した。

 村を包む光の外から勢いよく飛び出してきたのは、ベルゼブブを掴んだユズルの姿だった。




「はぁあああ!!!」


「離せぇぇええ!!!」


 空中でユズルの手からベルゼブブが逃げる。

 そのまま一定の距離が取られる。


(無事ハルク村に到達できたが、なんだこれ……)


 見渡す限り破壊された家屋や崩壊した時計塔など、その有様は酷いものだった。


「……東にライがいる。この村を出たら一定の距離を取って待機しろ」


(ついに始まるんだな……)


 先程までとは違う緊張感がキリヒトを襲う。

 周りの魔獣はあらかた片付けた。

 団員も避難させた。

 心はもうとっくにやつの首を討ち取る準備は出来ている。


「……この日のために鍛えてきたんだ」


 体の内部が、芯が、手足全身が燃え上がる。

 その色はいつもとは違っていた。


「父さん……どうか俺に力を──」




「いいかキリヒトよく見ておけ」


「わぁ!」


「お前もいつか使える日が来る。お前は俺の息子なんだからな」


「いつかって?」


「男にはやらなきゃ行けない時がある。その時が来れば分かるよ」




「──(レッド)紅蓮(ローツ)(フレイム)


 赤く輝く紅蓮の炎を目に宿して、キリヒトは地面を蹴った。

<あとがき>

ここまで読んでいただきありがとうございました!


ベルゼブブ戦、ついに第2章クライマックスです!


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