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禍々しき侵食と囚われの世界【最終章開幕】  作者: 悠々
第12章 夢境の精霊界編
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第154話 決着

「──シン・シエル」


 真名を取り戻した光の精霊カマエル&シュバリエルは、その姿を顕現させた。

 熱さも眩しさもない、ただただ神々しい光を放つシン・シエルを前に、三人の大精霊は息を飲んでいた。

 他の精霊たちとは桁が違う。


「確かに、今までの私だったら手も足も出てないわね。でも……」


 ルナとサンが慄いている中、ルーナジアだけが1歩、また1歩と歩み寄る。

 その足跡は闇に侵食され黒く光を失っている。

 精霊王の光を上書きしているのだ。


「今、人間界は絶望の色に染っている……。この負の感情には、勝てないわ」


 精霊王の威光とルーナジアの幽闇が交錯する。

 精霊界2強のぶつかり合い。

 その衝撃は、玉座を崩壊されるには十分だった。


「サン!私達は退散するわよ!」


「う、うん!」


 崩壊する玉座の中、ルナとサンは昼夜の塔へと還る。

 自分たちはここにいていい器ではないと判断したのか、はたまた自身の心の警戒信号に従ったのか。

 細かいことはさておき、玉座が崩壊した今、戦闘は空中戦を余儀なくされた。

 地上が見えないほど高度な場所での戦闘。

 記憶を取り戻したとはいえ、感覚を思い出すにはまだ時間がかかる。

 今のユズルは、まるで傀儡師のようだった。


(ダークネス)追尾弾(・ホーミング)


 黒蛇のようにルーナジアから放たれた弾丸は角度を変え、四方からユズルを狙う。

 ユズルは両手を広げシールドを展開するが、銃弾の数は増え続け視界が覆われた。

 その物量に圧倒され、徐々にシールドの領域が狭まる。


(このままだと押しつぶされる……っ)


 闇の力が膨大となっている今、彼女は精霊の中で最も強大な力を持っていることになる。

 一対一の殴り合いなら、誰も敵うはずがないのだ。

シールドが突破される、その刹那。

 前触れもなくいきなり全身に力が漲り出した。

 この昂り方を、ユズルは知っている。


(この力は、信仰の力だ……)


 決して闇の力が弱まった訳では無い。

 だがしかし、光の力が増したのは確かだった。

 おそらく人間界で何かが起きた。

 闇の力が健在なことを見ると、魔王が討たれた訳ではなさそうだが、それでも光の力が増すような何かが起こったのだ。


(そんなこと考えるのは後だ!)


 まずは目の前の敵を討つ。

 ユズルはそれだけ見ていればいい。


精霊王(スピリット)威光(・マジェスティー)


 自分を中心に、起爆したかのように一瞬にして世界が白く染った。

 その衝撃波によって追尾弾は焼き消され、一気にルーナジアとの距離が詰まる。


「精霊ノ一太刀(スピリット・ソード)


 ユズルの振り上げた一閃はルーナジアの胸元を掠め、僅かに体勢が崩れる。

 その隙を、ユズルは逃さなかった。


「初ノ型──」


 ローレンスが生み出した剣技。

 だがそれは全て、無意識に残っていたシン・シエルである時の記憶を複製したに過ぎない。

 記憶を取り戻してわかったことがある。

 それは今までの全てが繋がっていたこと。

 カマエルの記憶。

 シュバリエルの記憶。

 シン・シエルの記憶。

 ローレンスの記憶。

 そしてユズルの記憶。

 ローレンス式抜刀術は最初から存在していた。

 自分がシン・シエルである頃の記憶にも、確かにこの剣技は存在した。


「これが世界最高峰の一撃だ!」


「精霊王は2人も要らないわ!」


 ルーナジアも闇のオーラを放つ剣を構える。

そして──、


「──聖龍!」


「──闇斬!」


 甲高い音が精霊界に響き渡る。

 長きに渡る戦い、遂に決着──。


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