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第90話 眠る



 目印を失い、引き返すことも出来なくなったユズル達一行は、深い霧の中途方に暮れていた。


「ここに来るまで3日ほど進んできましたから、助けを呼ぶというのは無理そうですね」


「食料も少なくなってきてるし、これはいよいよやばいな……」


 なんなら今まで旅してきた中で、1番まずい状況かもしれない。

 解決策が全くもって見つからないのだ。


「周りの木を、全部倒す。そしたら、いつかは森を抜けられる」


「……可愛い顔して、サラッとすごいこと言うな…………」


 シュバリエルは首を傾げる。

 精霊と人間の価値観の差は、思ったより大きいようだ。

 自身の目的のためなら、森林破壊をも躊躇わない姿勢は想像していた精霊像とは違った。


「なんかこう精霊って、万物の守り神みたいなイメージだったんだけど、実際は結構私利私欲に忠実なのか?」


「どんな生物も、欲には、抗えません。人間が、欲をかかなきゃ、精霊と人間は、手を組んでないです」


「まぁ人間が欲に忠実なのは自分たちが一番よくわかってるんだけど……」


 想像通りに行かない、まるで旅のようだ。


「そうだ、俺たちはここまで2人で何とかやってきたじゃないか。きっとこの森だって抜けられる」


 山を越え、魔人を倒し、魔女を救い、渓谷を越え、海を越え……。

 ここに来るまで数々の試練に直面し、乗り越えてきた。

 今回だってきっと何とかなるはずだ。


「とりあえず何らかの手がかりを探しましょう。1番ありがたいのは川ですが、地図を見た限り本来の進路からはかなり外れています」


「もし俺が計画通りに進んでいたなら、俺たちは今この辺にいるはずだ」


 地図を指さす。

 確かに進路上に川は存在しない。

 だが西に少し移動すれば、小規模だが川が流れている。

 それを辿ればいつかはこの森を抜けられる、という訳だ。


「とりあえず川を探しましょう。この森に生物が生息しているか分かりませんが、もし居るならば川のそばに住処を作るはずです。足跡や食べかすがないか確認しながらいきましょう」


 足元に注意しながら一行は歩き出す。

 変わらない景色の中、ユズルたちは必死に川を探し続けた。

 そしてついに辿り着いたのだ。


 …………魔獣の群れに。


「くそっ、視界が悪いせいで敵の規模が分からねぇ!」


「片っ端から片付けましょう!」


 とにかく目に入った敵から切りかかる。

 魔獣 悪魔(マン)植物(・ドレイク)

 植物に手足が生えたような不気味な姿をした魔獣で、主に森の中に生息する。

 一体、また一体と倒していく中で、ユズルは自身の体の力が抜けていくのを感じていた。


「くそ、マンドレイクの胞子か」


 マンドレイクは、それぞれ三種類の毒性を持っている。

 どの個体がどの毒を持っているかは分からないが、一体につき必ずひとつの毒性を持っていることは確かだ。

 毒はそれぞれ、痺れ粉、目眩粉、眠り粉の3種類で、どれも弱体化に特化した毒となっている。

 今のところ痺れや目眩は感じていない。

 となると残された毒はひとつ。


「こいつら全部、眠り粉持ちなのか……っ?!」


 全てを倒し終えたあとで、先程までのマンドレイクの群れが全体眠り粉持ちだったことが判明する。

 そうこうしてる間に、意識が朦朧としだす。


(せめて安全な場所に……)


 そう思うが体は先に眠りについたようだ。

 深い霧の中、2人は夢の世界へと落ちていくのだった。




「……物音がするからきて見たけど、やっぱり魔獣の仕業だったのね」


 討伐されたマンドレイクの群れを横目に、少女は辺りを散策する。


「こんだけの量、仲間割れとかじゃなさそうね。もし人の仕業だとしたら近くに倒れているかも……」


 そして少女は草むらに寝転ぶ2人の人物を発見する。


 眠り粉に犯され眠る2人を担ぎ、少女は霧の中へと消えていった。


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