ゲームが始まる
読んでください!
「主人公に…なるチャンス…」
「そう!君が主人公になれるチャンスがあるんだよ!」
カハルは嬉しそうにそう言う。俺が主人公になれるチャンス、こんな事は今後二度とない。というか絶対にない、死んだから。
「…いや、やめとくよ」
「…え?」
だが俺は断ることにした。よく考えると、今更主人公に俺がなってどうする、何が出来る?そもそも主人公になれるチャンスとは?
「ちょっと待って、聞き間違いだよね?」
カハルは俺よりもびっくりした表情で聞き返す。
「聞き間違いじゃないよ、俺はこのチャンスを捨てる。俺なんかよりも、もっと主人公になりたい奴なんていっぱいいる。そいつらにこのチャンスを与えてやってくれ。俺はもう自分の人生に飽きた。死なせてくれ」
自分でもびっくりした。急にこんな流暢に話し始めて。さっきまでプチコミュ障になってたのにな。ま、本音だ。俺じゃなくてもっと、主人公になりたい人にやらせてやれ。例えばさっき道端ですれ違った高校生二人とか。
「……」
カハルは黙っている、さすがに怒っているだろう。わざわざ助けてくれたのに、こんな仕打ちだからな。俺は最低だ、最悪だ。だから人生今まで、俺にスポットライトが当たる日がなかったんだ。…早く死のう。
「…えーと、天国か地獄への行き方って知ってる?できれば地獄がいいんだけど…」
一応神様だから知ってると思う。さっさと聞いてエンマ様に罰、与えてもらおう。
「…合格だよ…」
「…え?」
今度は俺が聞き返した。
「合格だよ、君は!やっぱり私が目のつけた人だ!」
カハルは叫び出す。エレベーターの中だからやたらでかく聞こえる。
「合格…とは?」
「あーごめん、驚かせて。ま、とりあえず君はもう私のゲームに参加してもらうよ」
「ゲーム?参加?」
わけがわからない。とりあえず勝手にゲームに参加させられるらしい。
「じゃ、ルール説明始めるよ!」
「え?ちょ、勝手に…」
もういいや。どうせ死んでるんだ、どうにでもなれ。
「さっき言った君が主人公になれるチャンスって話なんだけど、実はゲームなんだ。ジャンルは…とりあえずバトルロワイアルかな?他の人たちと競ってもらうよ!」
ゲーム…バトロワ…、俺の得意分野だ。ニートだからずっとゲームをしていた。俺がやっているゲームでは、大体上位には入ってこれる。
「ちょっと質問いいか?」
「うん、いいよっ!」
カハルのテンションが全然違う。とても楽しそうだ。
「他の人ってなんだ?俺以外にも死にそうだった奴がいるのか?」
「おっ、いいこと聞いてくれた!そう、君以外にも人がいるんだ、だけどちょっと違う。死にかけだった人たちじゃない、普通に生きてた人だ。だから君は偶然だね」
偶然か。でも他の人は死んでないのに連れてきていいのか?そう聞いたら神様だからいいのっ!って返された。でたらめだな、この神様。
「とにかく!その君と他の人…これからはプレイヤーって呼ぶけど、そのプレイヤーの君たちにある世界に召喚させるんだよ!…まぁある世界っていっても、一つじゃなくて三つの世界に召喚させるんだけど」
もういちいち聞くのをやめた。
「で、何をその三つの世界で何すればいいの」
「おっ、理解が速くて助かるよ」
理解なんかしてない。逆にこんなん理解できるかよ。
「君たちプレイヤーには、【主人公ゲーム】をやってもらうよ!」
「主人公ゲーム?」
「そう、このゲームはそれぞれ一つ一つの世界で、その世界の住人として過ごしてもらう。だけどただ過ごしてもらうだけじゃない!君たちプレイヤーの中に一人、その世界の主人公として過ごしてもらう人がいる。その主人公は私がランダムで決めるけどね」
主人公として過ごす。これこそが、カハルの言ってた主人公になれるチャンスのことだろう。確かになれるチャンスだ。
「で、ここからが本題。その主人公以外になったプレイヤーたち、その主人公になった人を見つけてほしい。さっきバトルロワイアルとか言ったけど実際は一対他のプレイヤーなんだよね、ごめん」
「その主人公を見つけてどうすんだ?」
「一人一人にこのスマホを渡す」
と言ってカハルはどっから出したか分からないスマホを、右手に持っていた。
「そして、主人公だなって思ったプレイヤーがいたら、このスマホで私に電話をしてね。当たってたら主人公以外が勝ち、外れてたらまだ続くよー」
「どーなったら終わりなんだ?」
「主人公を当てられたら、その世界は終了。また次の世界に行くよ。それか、主人公が他プレイヤーを全員見つけて私に報告したら終了だよ」
「それは主人公側が不利じゃないか?」
「大丈夫、主人公のプレイヤーには様々な効果が適応されるから。簡単には見つからない」
主人公には主人公補正がつくってことか。これは主人公を探すのには苦労しそうだな。
「主人公プレイヤーが勝ったら、そのプレイヤーにはポイントが入る。逆に他プレイヤーたちが勝ったら、そのプレイヤーたちにポイントが入る。三つの世界で集めた合計のポイント数で順位が決まるよ!」
「その順位で何が決まるんだ?」
「…それはお楽しみだよ?わくわくしててね?」
そう言い、不敵な笑みを浮かべるカハル。何か裏があるな、絶対。
「プレイヤーは全員で12名。主人公以外になったら、協力してもいいからね?だけどその世界の住人は普通にいるから誰がプレイヤーか分からないけどね。頑張って探してね!」
プレイヤーの顔は分からないのか。だけどその方がいいかもしれない。分かっていたらずっとマークすることができるからな。
「ルール説明は以上!…あ!一個忘れてた!私に電話できる回数だけど、一人三回までね?主人公は一日何回って風になってるけど、他はその世界で三回だからね?よく考えて電話するんだよ。…もし三回失敗したら……ま、これもなってからのお楽しみ!てことで今度こそ以上!じゃ、このエレベーター動き出すから。次、止まったところがその世界。一つ目の世界は『異世界』だよ!開いたらスタートだからね、じゃ頑張って!」
そう言うと、カハルは姿を消した。やっぱ神様だな。
「大変なことになったな…。ま、ゲームときたら楽しむしかない。頑張ろう」
エレベーターが動き出した。いよいよ始まるみたいだ。
「ふふっ…。やる気になってくれて嬉しいよ。君がどう動くか楽しみだよ。さぁ、君の本当の力を見せてくれ、柳瀬秀太くん?」
感想など待ってます!