シンデレラ~Cinderella~
Cinderellaは、仏語で『サンドリヨン(仏: Cendrillon)』と表記される。和名は『灰かぶり姫』あるいは『灰かぶり』と表記される。
グリム兄弟によるアシェンプテル (Aschenputtel) 、シャルル・ペローによるものが知られているが、より古い形態を残していると考えられている作品としてジャンバッティスタ・バジーレの『ペンタメローネ(五日物語)』に採録されたチェネレントラ (Cenerentola) が挙げられる。日本の落窪物語や、中国にも唐代の小説「葉限」などの類話があるなど、古くから広い地域に伝わる民間伝承である。日本ではペロー版が有名である。
オペラ・バレエ・映画・アニメなど様々な二次作品が作られている。
なお、英語: cinder 、フランス語: cendre 、ドイツ語: Asche 、イタリア語: cenere などはいずれも「燃え殻」「灰」を意味し、上述の各作品名はこれらの派生形である。和訳名の『灰かぶり姫』もこれらを汲んだものである。
シンデレラ。それは、灰にまみれた少女のことを指す。しかし、心には明るさと希望、そして輝きが秘められていることを忘れてはいけない。
昔々、ある所に一人の女の赤ちゃんが生まれた。シンデレラと名付けられた美しくて優しい娘が立派な平屋建ての屋敷に住んで育てられた。
「じゃあ、行ってくるね!」
「行ってきます」
「行ってらっしゃい!」
ところが、シンデレラが7歳の誕生日を迎えたある日、シンデレラを残して両親を遠い国に行く途中での乗っていた船が嵐で沈んでしまうという痛ましい事故で亡くしてしまう。
「パパ、ママ、どうしていなくなっちゃったの…」
その後、孤児院に預けられてシンデレラを大切に慈しみながら育てていた。
「私はアネモネ。こっちは、私が溺愛する三人の娘たちよ」
それから5年の月日が流れたある日、生前の父親が残していた遺言書に従って、新しい母親のアネモネ夫人と、その連れ子である三人の義姉・ローズ・プリムラ・マーガレットの屋敷に引き取られた。
「容赦しないわよ」
「うちのママは厳しいからね」
「優しさなんて許せないわ」
「あなた、覚悟しなさい」
するといきなり、シンデレラの美しさを妬み、冷酷なまでに彼女を虐げる継母は本性を表し、義理の娘であるシンデレラに辛くあたり、自分の三人の娘だけを可愛がるようになった。
「ローズの馬鹿!」
「馬鹿といったら、馬鹿なんだもん!」
「二人とも嘘つきね!」
「しっかりしなさい!」
また、些細な事ですぐ言い争いを始めるなど、姉妹仲もあまり良くない様子に継母は義姉の世話を焼いてばかり。
そして、継母や義姉たちは両親が残していった遺産を浪費したため、綺麗だった二階建ての屋敷は完全に荒れ果てていった。
シンデレラはわがままな上に意地っ張りで意地悪でいつも悪口を言う四人にいつもいじめられては罵られ、ついには召使いとして扱われるようになり、毎日灰にまみれて徹夜で雑用ばかりを押しつけられる。
「この服を洗ってちょうだい!」
「は、はい…」
「今すぐにね!」
あるときは洗濯、
「箒で掃いてちょうだい!」
「分かりました…」
「なら、とっととやって!」
あるときは掃除、
「廊下を拭いてちょうだい!」
「そんな…」
あるときは雑巾がけ、
「皿を全部洗ってちょうだい!汚れ全部落として、ね!」
あるときは皿洗い、
「朝食を手伝って!」
「う、うん…」
「いいから早く!」
あるときは食事の支度、
「また寝坊したの?」
「はい」
「なら、罰として朝食はなしよ」
「そ、そんな…」
またあるときは朝食抜きなどの嫌がらせやパワーハラスメントを強要され、屋敷の裏側にある倉庫の部屋に住まわされてしまう。しかし、シンデレラは、
「きっと幸せがやってくる」
「いつかは夢が叶う」
「心の中にある輝きは失ってはいけない」
と信じ、明るさと希望を失わなかった。そんな彼女の味方は、チョコレート色のネズミのショコラと白いネズミのホワイトとその仲間や小鳥達、サラブレッドとネコだった。
「ショコラ!」
「やあ」
「ホワイト!」
「待ってたよ!」
「それに、みんな!」
手先が器用な彼女は、ネズミと小鳥の服を手作りするなど、非常に仲が良かった。
そんなある日のこと、お城の王子であるフランソワの花嫁選びを兼ねた帰国をお祝いする舞踏会を開くことになり、シンデレラの家にも招待状が届いた。
「お届け物です!」
「今度の土曜日、私たちの城で舞踏会を開催いたします」
「わー!」
「やったー!」
「ついに待ってたわ!」
義理の姉達は大はしゃぎし、自身も行きたいと願うシンデレラ。
「私も舞踏会に行きたいの!」
「すべての仕事をこなしてドレスができたら、行ってもいい」
「分かったわ」
そんな彼女に継母は、すべての仕事を片付け、ドレスを用意できたら舞踏会に行ってもいいという。
「お母さんのドレスを着ようかしら」
シンデレラは、亡くなった実の母の形見であるドレスを手直しして着ていこうとした。
「さあ、仕事だよ!」
「え、えー!」
「とっととやって!」
「は、はい!」
だが、四人は仕事をわざと多く押しつけ、ドレスが出来上がらないようにした。
「そうだ!」
「みんなでシンデレラのドレスを作ろう!」
「うん!」
そこで小鳥やネズミ達が、義姉達がいらないと言ってゴミ箱に捨てられていたサッシュやリボンを使い綺麗なドレスを作った。
「そうはさせない!」
しかし、絶対に舞踏会に行かせるわけにはいかないとする四人の悪巧みによって、
「シンデレラは、自分達が捨てたものを盗んで使った泥棒だ」
と勝手に決めつけ、ボロボロに破かれてしまう。
「信じられない、私のドレスが台無しになるなんて…」
シンデレラはショックのあまり父との思い出の庭園まで走って泣いていたところ、彼女を励ますように人間界とは別の世界である鏡の国の女王であるティアラが現れた。
「私はティアラ。鏡の国の女王よ。さあ、今からあなたをキラキラ輝かせる魔法をかけるわ」
ティアラが魔法の呪文、
「オープン・ザ・ワンダーワールド!」
を唱えて杖を振ると、瞬く間にかぼちゃが馬車に、サラブレッドとネコは立派な従者と御者に、ネズミ達が白い翼が生えたペガサスに変わっていった。
「うわー、なんて素敵なドレス!」
最後に杖を一振りすると、破かれたドレスは美しくロイヤルブルーに輝くドレスに変わり、気が付くとシンデレラはガラスの靴も履いていた。
「でも、12時になったら魔法は解けるから、気を付けて」
という忠告を聞いた彼女は、かぼちゃの馬車に乗って王子のいる城に向かった。
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい!」
ティアラは、かぼちゃの馬車に乗って舞踏会に出かけるシンデレラを見届けた。
その頃、城の舞踏会では王子が出席者たちにお目通りを兼ねた挨拶をしていた。
「みなさんこんばんは。わたくしはこの国の王子のフランソワです」
だが、元々結婚するつもりなど毛頭ないため、年老いた国王をやきもきさせ、すっかり退屈してしまっていた。
「つまらない舞踏会だな」
「さあ、私たちの出番が来たわよ!」
「行こう!」
「うん!」
そしてローズ・プリムラ・マーガレットの出番になった時、偶然現れたシンデレラの美しさに目を奪われダンスを申し込む。
「すいません」
「この青いドレスは…」
「私と一緒に踊って!」
「分かった」
「ありがとう!」
そのまま二人は踊りながら会場を抜け出し、城の自慢である色とりどりの薔薇が咲き誇る花園を巡りながら楽しいひと時を過ごす。
「なんて素晴らしい時間を過ごすなんて、嬉しいわ」
だが、シンデレラは相手が王子だと気が付いていなかった。そして時計塔の鐘が12時を打った途端、シンデレラは女王との約束を思い出し、王子の制止を振り切って走り出した。
「でも、急がなきゃ…」
途中階段で右足の靴が脱げてしまうが、シンデレラは拾う暇もなく馬車に乗り城を飛び出す。
「さよなら、もう帰るわ」
その一連を見ていた大公は慌てて兵士に馬車を追わせるが、魔法が解けてしまったため元の破れた服に戻ったシンデレラに気がつかず走り去る。シンデレラは左足に残っていた靴をぎゅっと抱きしめながら、
「短い間だったけど、素敵な夢をありがとう」
と鏡の国に帰っていったティアラに御礼を言った。
それから一週間後、城は突然消えてしまった娘の事で大騒ぎになっていた。
「一週間前の舞踏会で見かけた美しい娘は?」
「探さなくちゃ!」
「でも、手がかりは?」
「ガラスの靴しかありません…」
そして、ガラスの靴にピッタリ合う足の持ち主を正式に王子の花嫁として迎え入れると大々的に発表し、この話はシンデレラ達の屋敷にも届いていた。
「みんな、史上最大のチャンスがやってきたよ!」
「なんと!」
「これは!」
「やるしかない!」
継母はこれが人生でまたとないチャンスだと早々にローズ・プリムラ・マーガレットをたたき起こす。
「あなたもやるのよ!」
「は、はい!」
「だったら今すぐ準備しておいで!」
「分かったわ!」
いつものような日常を過ごしていたシンデレラにも仕度を手伝うよう命令する。
「ついに、あの王子と再会できるとは…!」
そこでようやくあの時の相手が王子だと知り驚くシンデレラ。そして浮かれながら歌を口ずさみ、部屋へ身なりを整えにいく。
「そう簡単に行かせないよ!」
「キャー!」
だが、継母はその歌声からあの時の娘がシンデレラだと見抜き、自分達の邪魔をさせないためこっそり後をつけ、部屋に鍵を掛けて閉じ込めてしまった。
「きつい…」
「つらい…」
「脱げない…」
「あなたたちは、王子の花嫁にふさわしくない。その場から出てってくれ」
「はい…」
しかし、一部始終を見ていたショコラとホワイトが、義姉達が靴に悪戦苦闘するどさくさにまぎれて鍵を取り返し、途中に継母が飼っているマーブルが立ちはだかるも、ネコの手助けによってシンデレラは無事に脱出することに成功した。
「帰ろうか…」
「ちょっと待った!」
「まだシンデレラが残っているよ!」
「そうか、なら残るとする」
諦めて帰ろうとした大公たちを引き止めさせた。
「そうはさせないよ!」
しかし、継母がわざと杖を出して使いを転ばせて邪魔をし、ガラスの靴は大公とシンデレラの目の前で粉々(こなごな)に壊れてしまった。
「どうしようか…手がかりが破壊されてしまった…」
大公はせっかくの手掛かりが消えてしまったと嘆いてしまう。
「あるわ」
「何だと?」
「左足の靴を持っているの」
「それか!」
ところが、シンデレラが隠し持っていた左足の靴を差し出したことで事なきを得た。
「さあ、左足を」
「うん」
「ガラスの靴が…ピッタリはまった!」
もちろんガラスの靴はシンデレラの左足にピッタリと合い、奇跡を起こした。
「シンデレラ、あなたが王子の花嫁だ」
「ほ、本当に…」
「そうだ。近日中に結婚披露宴が城で行われるから、それまでに準備をしてくれ」
「分かりました!」
その後、
「ごめんね」
「今まで、ごめんなさい」
「いいわよ。分かってくれるのなら」
義姉達は今までの意地悪と非礼を詫び、これ以上彼女達を責めても無意味なことを知るシンデレラは、それを許した。
それから数週間後、結婚披露宴が開かれた。
「この間は本当に申し訳ないです」
「こちらこそ」
国王は、シンデレラが落としてしまった靴を履かせた事で彼女からキスを送られる。
「では、改めて…」
シンデレラは王子に正真正銘のキスをする。
「ずっと幸せだよ」
「シンデレラ」
「王子…」
こうして、継母達と大公は国から姿を消した。追放されたのか、自ら去ったのかは明らかでない。シンデレラは王子と盛大な結婚式を挙げて新たな国王と王妃となり、いっそう王国の発展に尽くした。