それぞれの未来 2
初めて誤字報告いただきました♪
とてもとても助かりました(人´∀`)ありがとうございます.+゜*。
春になり、穏やかな夜だった。
私と旦那様は、寝室のベットに居る。
「まさか、私達と同じ日にクリスティーナ達が結婚するなんて」
卒業と同時にクリスティーナは結婚し、結婚して一か月後に結婚式を挙げる事にしていた。しかも、私達が式を挙げた教会で。
「同じ日に同じ教会。何と言うか運命を感じますね。クリスティーナとワイアットがする事は」
「本当に」
「先生と母は……やっとこれで幸せになれるんですね」
旦那様は今日の夜の様に穏やかに微笑んだ。
私も旦那様も、ベルもソルもそれを疑っていない。
ワイアットの方は、元々ソルが魔術師長に性格が似ているせいもあるのか顔立ち以外は魔術師長そのものだった。
だから、ワイアットの魔術の才能は素晴らしいモノだった。
クリスティーナの方は、旦那様のお母様を私達はどちらも良く知らないので、逆にクラークと同じように普通に育てられたと思う。
クラークは容姿も性格も旦那様そっくりに育ち、クリスティーナの方は、容姿は昔の旦那様にそっくりで性格は私のお母様に似ているとよく言われていた。
私としては、子供達の容姿が王家の血筋を感じさせないモノで本当に幸いだったと思っている。しかも、愛する人にそっくりな子供達だなんて幸せ過ぎると思っていた。
ただ、おばあ様だけはクリスティーナは旦那様の母に全てが似ていると言っていた。おばあ様に会わせた時、クリスティーナが笑った。
まだ赤ちゃんのクリスティーナの笑顔を見て、おばあ様は初めて私達に涙を見せた。どんな場面でも泣くのを我慢し王太后らしく振舞っていたおばあ様が……。
「……クリスティーナ」
そう言うと、手で口を覆い、声だけは出すまいと泣いていた。
その涙は喜びであり、懺悔でもあったように思えた。
そして言った。この子の笑顔は祖母であるクリスティーナにそっくりだと。
クリスティーナの場合は、生まれ変わりじゃ無かったとしても孫なので祖母に似ていても不思議な事では無いのだけれど……。
おばあ様は、王女が公に亡くなってからもずっと離宮に住んでいた。
たまにお母様に会ったり、孫である私達が結婚して数年後にはイライザ嬢達の子供4人と、私達の子供2人の6人のひ孫に囲まれ、幸せそうに微笑んでいた。
おばあ様の晩年は本当に賑やかで幸せそうだった。
二年前、離宮で亡くなる時も極秘で私達家族全員と、王太子達家族、そして王と王妃が枕元に駆けつけ最後を看取れた。
おばあ様は最後に一人一人短くお礼を言った。
そしてクリスティーナにはこう言った。
「クリスティーナ、今の貴女には守ってくれる人がたくさんいる……困ったら助けを求めなさい……きっと助けて貰えるわ……ワイアットと……幸せにね……」
『今の貴女には』16歳のクリスティーナにそう言った、おばあ様……。
クリスティーナの存在は6人いるひ孫の中でもおばあ様にとっては特別だったのではないかと思った。
そして、クリスティーナもおばあ様の事が大好きだった。
「フローラさん、何を考えているんですか?」
「今日までの事を考えていました。おばあ様にもクリスティーナの花嫁姿を見せたかったと思って」
「そうですね。見せてあげたかったですね」
「もう少し頑張ってくれたら、クリスティーナの赤ちゃんだって見れたかもしれないのに。ああ、もしかすると、来年には私達はお祖母ちゃんとお祖父ちゃんになるかもしれませんね」
私がそう言うと旦那様が抱きしめて言う。
「私はお祖父さんと言っても遅いくらいの年齢ですが、フローラさんがお祖母さんと言うのは信じられませんね」
「私だって、もう40を過ぎているんですよ。充分お祖母ちゃんでもおかしくない年齢ですよ。現にイライザさんにはもう孫がいますし」
この世界は結婚が早い。イライザ嬢の息子である王太子は、もうすでに二人のお子様に恵まれている。
イライザ嬢の美貌からはお祖母ちゃんには見えないのだけど、年齢的には不思議では無かった。
「それを言われると、60歳の私には何も言えませんね」
旦那様が笑って言う。
「旦那様は素敵です。むしろ、年々素敵になっていますよ。だから、お祖父ちゃんになっても旦那様以上に素敵な男性はいません」
実際、元々王子さまっぽい容姿の旦那様は若く見えていた。この年齢になっても背筋もピンとしていて、体系の変化もほとんどない。目じりのシワは旦那様の優しい性格をもっと表現しているだけで若々しく見える。
「フローラさんだって、ずっと永遠に素敵ですよ。貴女も年々綺麗になっている。私がずっと貴女を愛しているからでしょうか?」
旦那様は私に口付けして、私をゆっくりと優しく丁寧に愛し始める。
……旦那様は本当に若い。
昔の様に何日も寝室に籠るようなことは無いし、一日の回数も減ったのだけれど……長さは増した。
元々丁寧に愛してくれる旦那様だけど、まあ、本当に今は……省エネで有りながら最大に愛してくれると言った感じだ。さすが、隠しキャラのポテンシャル。
ヤンデレは隠せてもスペックは隠せないのか。まあ、良いんだけれども。
若く見えて実際若い旦那様。でも、来年は60歳。この時間を大切にしたい。
◇◇◇◇◇◇◇
今日は、クリスティーナとワイアットの結婚式だ。
クリスティーナは私達と同じ日に、私達が挙げた教会で、私達の衣装を着て結婚する。
衣装は新しくした方が良いのでは?と言ったのだけれど、クリスティーナだけじゃなくワイアットも私達が着た衣装が良いと言った。
私は結婚式の日に魔術師長が言った言葉を思い出した。
『今日のお前の姿を…幸せな様子をあちらに逝った時、お前の母上に報告できる事が何よりも嬉しい』
二人は前世を覚えていない。でも、ワイアットは私達の結婚式を再現したいと思っているのではないだろうか。ワイアットの中にはクリスティーナだけじゃなく、旦那様への愛が残っている様に感じて涙が出そうになった。
結婚式はとても感動的で、イライザ嬢の結婚式と同じように私は号泣してしまった。旦那様も目は潤んでいたが泣いていなかった。
号泣する私の姿に、息子のクラークは若干引いていた。
「こういう時は、父親が泣くものと思っていたのですが……」
旦那様と私を交互に見てクラークが言う。
「二人が結婚するのは当たり前だと思っていたので、母上がこんなに泣くとは思いませんでした」
クラークは旦那様にそっくりの苦笑で私にさらに言うのだった。
クリスティーナ達の前世云々は子世代には言っていない。
クラークもワイアットと年が近く、幼馴染として仲が良いので妹達がこうなると昔から思っていた。
だから、当たり前過ぎて何の感慨も無いのかもしれないが、私に取っては娘の結婚という思い以上のモノがあるのだから引かないで欲しい。
「安心しなさい、クラーク。貴方の結婚式ではこんなに泣かないから」
「……安心したと言うべきなのか、寂しく思うべきなのか……」
困ったように笑うクラークは、22歳だが結婚もしていなければ婚約もしていなかった。
「クラーク。嫁いでしまうクリスティーナと家を継ぐクラークとでは立場が違うだけで、クラークもクリスティーナもお母様は等しく愛していますから。寂しく思わないで下さい」
旦那様が優しくクラークに言う。
「まあ、そうですね。でも、自分の親友の家に嫁ぐのでもこうなるのですね……」
「……クラークも結婚して娘が出来たら分かるかもしれないわよ」
中々納得しないクラークに私はちょっと意地悪っぽく言った。
クラークはワイアットやイライザ嬢の子供達が言うには、とてもモテるらしい。でも、自分の祖父母(ベフトンの父母)や自分の両親、そして自分の妹と幼馴染も運命的な相手と結婚しているせいか、恋愛に対してハードルが高いみたいだ。
たぶん、今まで彼女がいた事は無いだろう。初恋もまだかもしれない。
当然だけど、クラークにも幸せになって貰いたい。
幸いクラークは将来的に辺境伯になるので、身分が高い女性でも大丈夫だし、身分が低くても別に私達は気にしない。旦那様も結婚したのは33歳だし、ゆっくり相手を見つけて欲しい。
そして、披露宴は私達と同じベフトン家の庭だ。
学園の友人達とは王都でまた披露宴をする事になっているので、今日ココに居るのは私達夫婦とベルとソル夫妻と、兄のクラーク、幼馴染で親戚でもあるイライザ嬢の子供達4人とお父様とお母様だ。流石に、王妃となったイライザ嬢は無理だったが、ミラとアナは結婚式に誘った。でも、私達の事情を良く知る親友は身内だけの方が良いだろうと遠慮をした。
私達の時はカールが作ってくれたが、今日はカールの息子が作ってくれた。
彼は子供の頃、私を池に落とした件で出入り禁止になっていたのだが、カールの後継として我が家に勤めている。もう誰も彼の事を怒っていないし、彼の腕はカールにも負けないので良かったなぁと思う。
私達の結婚式の様に料理やデザートや飲み物が沢山並ぶ。
その中に、私が作ったドライフルーツたっぷりのパウンドケーキがある。
このケーキは前世から私が得意だったものだ。
旦那様もクラークもクリスティーナも好きだ。
そして、このケーキが私の疑問の答えをくれたのだった。
次回「それぞれの未来」終了です♪
ブックマークと評価ありがとうございました.+゜
明日からムーンさんで連載していた作品をなろう版として投稿しますので、よろしかったら読んでみてください♡




