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王宮の青い薔薇のむすめ  作者: 青空那奈
番外編※本編読了後がオススメ
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それぞれの未来 1

お久しぶりです♪

全3話になると思います+.*゜

イライザ嬢の結婚式が終わって数日後から私は魔術省に勤務している。

アナも新人教育が終わって私の専属騎士になったけど、最大の敵であるニールの件は解決済みだったので比較的気楽な感じで私もアナも新しい生活(勤務)が出来ている。


ニールの件はアナと魔術師長にしか話していなかったけれど、ニールじゃなくても他国の王族が絡んで来た場合はニールの件と同じように対策しようという事になった。


「ニールさんでも他国の王族でも私はフローラを守るからね」


と、笑顔で言ってくれたアナはとても頼もしかった。

そして、専属騎士になったアナは親友のアナとは別の顔を持っていた。


アナはどちらかと言うと4人の中で一番おっとりしている子だったのだけど、私の専属騎士で側にいる時のアナは本当に凛々しくカッコ良く隙が無い感じで私の警護をしてくれる。


しかも、第三者がいる場所では私を「フローラ様」と呼び、敬語で話すのだ。

二人で馬車に乗っている時に言った。


「アナの切り替えは感心しちゃう」


「ふふっ、そりゃそうよ。フローラ、貴女は王族に匹敵するくらいの重要な人間なのよ。そうでなくても大事な親友なんだもの。立場に相応しい扱いをしてしっかり守らないと。それに、我が家の名誉にも関わるもの」


アナは学園に居る時の様に明るく少しおどけて言ってくれる。


「本当にアナを推薦して貰って良かった。アナ以上に頼りになって安心できる騎士なんていないもの」


「ふふっ、それこそ貴女を溺愛してる学園長のおかげね」


アナはからかう様に言った。


「もう、やめてよ」


「フローラは本当に学園長に愛されているわね。実は私、イライザさんの結婚式の時にフローラ達を見つけていたのよ。でも、声を掛けれなかったわ~理由は分かるわよね~ミラとベルも同じ理由で声を掛けれなかったって~」


「……アナこそ、私達がそうしてた理由は一番知ってるでしょ?」


「まあね。実際、ニールさんは貴方達に話しかけていたけど学園長が守ってくれてたみたいね」


「そうね」


「それと、イライザさんとフローラの絆のおかげでニールさんは諦めたのね……」


「うん」


ベルとミラには、私を狙う人から守る為に公の場では旦那様とベッタリしていると言う理由にした。

アナには全て本当の事を話した。学生時代はイライザ嬢に私が勉強を教えていると言っていた。でも、お父様に言ったような出会いと私の結婚に協力してくれた事も。ニールが一番の敵である事と、万が一の場合に備えて旦那様が「聖女の魔法」を使える事も。


その中で、どうして旦那様が「聖女の魔法」を、()()したではなく()()した事になっているのか。旦那様が「聖女の魔法」を、発動した時、それを「聖女の魔法」と誰が判定したかという言い訳がどうしても思いつかなかった。


だから、アナには旦那様が「聖女の祈り」を発動した経緯も話した。「聖女の祈り」で、命を助けられたのは王女である事、旦那様は王女の弟である事、なぜ「聖女の魔法」を、発動では無く発見したと公に発表したか。そして結婚式で分かっただろうが、王女は私の母だという事。


それを含めた全てを話した時、アナは静かに言った。


「フローラの一生に一度の恋をイライザさんは叶えてくれたのね。フローラがイライザさんを「令嬢の鏡」と言う孤独と不安から救ったから。フローラ、私は全てを知った今でも学園長とフローラは結ばれるべき運命だったと思うし、今も二人を心から祝福してるわよ」


アナは、私と旦那様が姪と叔父だと知ってもそう言ってくれた。

本当に私の親友はとてもとても優しい。


それから色々な事があったけど、アナと魔術師長のおかげで私は無事に魔術省に勤務出来ていた。

その中で、私は「聖女の(いかずち)」と「聖女の剣」を、新たに発動した。


そして、私の結婚から一年後、ミラの結婚式とベルとソルの婚約が決まった。


さらに、イライザ嬢はご成婚の一年半後、第一子である王子を産んだ。

国を挙げての華々しいお祝いがあった。

同じ時期にベルがソルと結婚した。


私自身も、結婚から3年後に第一子の男子を産んだ。

旦那様に良く似た元気な子だ。


私が出産したのを機に、アナも婚約者と結婚式を挙げた。


私はしばらく産休と育休を貰い、その後は魔術省ではなく学園の副学園長になる事が決まった。アナも結婚したので、専属騎士は廃止して、旦那様と一緒に通勤できる学園での仕事にして貰った。

それにこの頃から、魔術師長が体力の衰えを訴えていて職を退くかもしれないと言われていたからだ。


「クラークは良く寝ていますね」


私はベビーベットでスヤスヤと寝ている息子を見て言った。

私が妊娠した頃に、実家で働いてくれていたメイドのアギーとアギーの夫である執事見習いのコリーが夫婦で私達の邸に住み込みで働くことになった。

子供が出来ると、ルカ夫妻だけでは大変だろうという事で。


「そうですね。この子が産まれて3か月ですが…まだ、不思議な感じがします」


旦那様は愛おしそうに息子の寝ている姿を見ている。

アギーは乳母も兼ねて貰っているが、私は母乳でクラークを育てているので私達の寝室でクラークは寝ている。


「私もまだ不思議な感じがします」


私の場合は、前世は娘しか育てて無かったから、その事もあってか本当に不思議に感じる。


「旦那様にそっくりですね。髪の色も目の色も全てが」


「……そうですね」


旦那様はホッとしたように言った。

旦那様は、私に似た女の子が生まれる心配より、おじい様……旦那様にとって父に似ている子が生まれる事の方が心配だったようだ。

確かに、一応王家とは関係のない私達の子が、先王と先王にそっくりの現王に似ていたらややこしい事になる。


それ以外の想いもあるのかもしれない。

私も前世で、兄達にそっくりな男の子が産まれたら愛せるかと不安になったりしたから。


クラークを産むまでに色々な葛藤や不安が夫婦の中であった。


でも、お父様が「王家特有の銀髪なら魔法でどうにかなるし、王女に似ている子や、先王に似ている子が産まれたら実家に皆引越して来ればいいよ。フローラだって王女にそっくりでも普通に暮らせた実績があるんだから、そんなに不安にならなくても良いよ。最終的にはお前達はベフトンを名乗る事になっているのだからね」と、言ってくれ今日に至る。


「魔術師長も、最近は体調が良くなったそうですし、そろそろ会わせたいですね」


魔術師長が体調を崩したが最近治ってきたと聞いていた。


「そうですね」


「きっと、喜んで貰えると思いますよ」


私がそう言うと、旦那様は優しく口付けしてくれた。

今の所、王家のお世継ぎ問題は起こりそうもない。

旦那様が一番嫉妬?してしまっていたソルもベルと幸せな結婚をした。


ミラもアナも婚約者と結婚して順調そのもの。

他の攻略者だったラシーンとレイもいつのまにか婚約して結婚していた。

ニールの方はまだ独身だけど、女性には不自由してなさそうだ。


お父様もお母様も孫の誕生を喜んでいるし、おばあ様からもお祝いの手紙とプレゼントを貰った。

イライザ嬢の方は第二子を妊娠しているらしい。

おばあ様がひ孫に囲まれる未来はもう現実になった。


そんな幸せな日々の中、ソルが我が家に突然やって来た。


「学園長、フローラさん、義父(ちち)が危篤状態なのです。貴方達に会いたいと言っているんです。一緒に来ていただけませんか?」


最近は体調が良くなったと聞いていたのに……こんなに突然、容態が急変するなんて……。

私達は慌ててソルが乗って来た馬車に乗り込んだ。


「学園長、フローラ。よく来てくれたわね。お義父様(とうさま)に会ってあげて」


ソルの妻になったベルが私達を迎えてくれた。

魔術師長が寝ている部屋には、私達とソルとベルの5人がいた。


「先生、しっかりして下さい。まだ、私は貴方になんの恩返しもしていません」


旦那様が魔術師長の手を握って言う。


「……クリストファー、これは寿命だ。だから奥方に「聖女の魔法」を使わせるなよ……」


ベルがいるからそう言ったのだろう。

旦那様はきっと「聖女の祈り」を、発動したかったんだろう。


「ですが……先生……」


「……クリストファー。お前が結婚して子供を儲けた。そして、養子のソルも結婚した。……もう、思い残す事など無いのだよ……」


「……先生」


「…私は…この日を……心待ちにしていた。お前達の幸せを見届けて……最愛の人が待つ天に逝く事を……ずっと、彼女に会いたかったのだ……」


もしかすると、魔術師長は正確な体調を身内以外に知らせて無かったのかも…と、思った。ベルもソルも魔術師長の意思を尊重したのだろう…と。


「……先生……」


「……お前の涙……初めて見る……お前はいつも穏やかに笑っていたな……どんな時も……」


「……先生が守って下さったからです……」


「……守れなかった……お前も……彼女も……」


「いえ、貴方の最愛の女性も私も、貴方に…先生に救われたんです……」


「……そうか……そう言って……くれるか…………」


「先生!!」


「ああ……迎えに……来てくれ……た……」


「先生!!」


「義父上」「お義父さま」


魔術師長は幸せそうに微笑んで永遠の眠りについた。


「……先生」


旦那様は魔術師長の体にしがみついて泣いていた。

ハッキリと旦那様が泣くのを見たのは初めてだった。


ソルもベルも泣いていた。

二人は旦那様と魔術師長の姿を泣きながら静かに見守ってくれていた。


私は、幸せそうな魔術師長の顔を見て、旦那様のお母様がきっと迎えに来てくれたんだろうと思った。

もしかすると、魔術師長は今が一番幸せなのではないだろうかと私は思った。


魔術師長の葬儀は国を挙げて行われた。所謂国葬だった。

クラークをアギーに預け、私達も葬儀に参加した。


旦那様はもう泣かなかったけれど、その日はほとんど口を利かなかった。


そして、魔術師長の葬儀が終わり約一年後に、ソルとベルに第一子の男の子が誕生した。黒と金色の髪の両親を持つその子は、何故か魔術師長と一緒のグレーの髪を持って生まれてきた。

さらに、瞳の色は黒の様に濃い青だった。


「ソルがね、この子はお義父様の生まれ変わりだと言うの。だから、ワイアットと言う名前にしたわ」


子供が産まれ、お祝いの品を持って行った時、ベルはそう言った。


確かに、髪の色は不思議だ。ソルは養子で実の息子ではないのに、この子は魔術師長にそっくりのグレーの髪をしている。でも、魔術師長にそっくりの目の色は、ソルに似ていると言っても良い。

魔術師長と旦那様とソルは同じ目の色をしている。私の場合も深い青の瞳だけれど少し印象が違う。でも、三人は色も印象も同じだった。


魔術師長がソルを養子にした理由が何となく分かった気がした。


「でも、髪の色以外はソルさんにそっくりね」


私がそう言うと、ベルは笑った。


「私もそう思う。だからこそ、この子のグレーの髪はお義父様の魂を感じるの」


私もベルと同じように感じていた。


そして、ワイアットが産まれて3年後、私は第二子を出産した。

旦那様に良く似た女の子だった。


「フローラさん、この子の名前はクリスティーナでもいいでしょうか?」


私もこの子の顔を見て、旦那様がそう言うだろうと思っていた。


「とてもいい名前です。きっとこの子は幸せになれます」


私は笑って言った。

そして、それは本当になった。


ベルがワイアットを連れて、出産祝いに来てくれた時の事だ。


「この子はクリスティーナでしょう?」


ワイアットが、私が名前を教える前に言った。


「……どうして分かったの?」


「だって、約束したんだ」


ワイアットはそう言うと幸せそうに微笑んだ。

その顔は魔術師長が最後に見せた表情と一緒だった。


私とベルは、ワイアットのその表情を見て顔を見合わせた。


「……なんて約束したの?」


「僕の妻にして欲しいって」


「……そう。じゃあ、将来クリスティーナと結婚して幸せにしてくれる?」


「うん。だってその為に生まれて来たんだ」


ワイアットは破顔(はがん)した。

ベルはそう言った息子の頭を黙って優しく撫でていた。


不思議な事にワイアットもクリスティーナも、お互いが結婚する運命だと信じて疑わなかったが、前世の記憶と言う物は無かった。

ただ、クリスティーナが小さい時、ナイショだよと教えてくれた事がある。

「お母様、ワイアットは一番に私を見つけてくれたわ。お父様が一番じゃないのよ」とてもとても嬉しそうにクリスティーナは言った。


ソルとベルがワイアットと名付けた理由とは違い、私達夫婦は旦那様の母にソックリであろうこの子に、同じ名前を付けて幸せにしてあげたいと名付けた。

私達は娘を生まれ変わりとは思わなかったのだ。


母親同士が親友という事もあって、二人はずっと仲が良いまま成長した。

そして、私と同じように王立学園を卒業と同時にワイアットとクリスティーナは結婚する。


二人は兄妹の様に清らかで仲が良く、それでいてとても愛し合っていた。

激しい愛ではないけれど、穏やかで清く深い愛情で二人は結ばれていた。


そんな幸せそうな二人を見て、過去を思い出していた。

ベルとワイアットが出産祝いに来てくれた日、私は今まで無意識に考えなかった疑問が頭に浮かんだ。


私は来世、旦那様と夫。どちらと結ばれるのだろうと…。


そして、その答えが分かった日を。





娘の結婚式が近づき色々な過去を私は思い出していた。



ムーンさんの方の新連載が終わり、新しく短編を書こうかと思ったのですが、番外編の方を最初に更新してみました♪

空いた期間もブックマークや評価をいただきましてありがとうございます。

楽しんで頂けたら嬉しいです+.*゜

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