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王宮の青い薔薇のむすめ  作者: 青空那奈
番外編※本編読了後がオススメ

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悪役令嬢の結婚式 2

前回も評価とブックマークをありがとうございました♪

とりあえず、ニールからはもう今日は狙われる事は無いかな。


彼も宰相の息子で今日の主役の兄になるのだから忙しいだろう。

先程のイライザ嬢を餌にした控室以外の作戦は普通に考えたら無いだろうし。

それにしても、久しぶりの号泣だった。


「旦那様、私の顔ヒドイですか?」


あんなに号泣してしまったから化粧はもうボロボロな気がする。


「どうでしょう、目は少し赤いですが。フローラさんは薄化粧なので大丈夫なようにも見えますが」


旦那様はスッピンでも寝起きでも可愛いって言うからなぁ…。

念の為、小さい手鏡で見てみた。

……これは……思ったよりはヒドク無いけれど大丈夫じゃないと思う。


「流石に直した方が良いと思います」


「そうですか…。いくら夫と言っても、どうしても化粧室までは付いていけないので……どうしましょうね」


まあ、そうですよね。


今日は他国のお客様もいるし、国内では伯爵以上の方は呼ばれている。

ベルやアナやミラも呼ばれていると聞いているが見つけられる可能性は低いかもしれない。


一応、ミラとベルには軽く事情は話している。アナには直接我が家に来て貰って詳しく言ってある。

魔術省に通勤するのはイライザ嬢の結婚式後になった。アナが私の専属の騎士になる事はほぼ決定して、どちらかというと新人のアナの準備期間を考慮してそうなった。


アナも今日は騎士じゃなく招待客だし、ミラは普通の令嬢だし、ベルも公爵令嬢だけどやっぱり普通の令嬢だし…何より、親友達に迷惑を掛けるのも……。


そうこうしている内に王宮に着いた。とりあえず扇で顔を隠せば直さなくてもイケるかも……。


「フローラさん、少し王宮の庭を散歩しませんか?」


扇で顔を隠しながら馬車から出たら旦那様が提案してきた。


「良いんでしょうか?」


「人が来ない庭で、フローラさんに見せてあげたい物があるんです。そこに行きましょう」


そうか、旦那様も14歳までは王宮に居て、しかも隠れるように過ごしていたそうだから王宮の穴場?を知っているのかな?


旦那様は迷いなく王宮の庭をスイスイ歩いていく。

すると、一見壁にしか見えないひっそりとした場所に着いた。

旦那様がそこに手を当てて小声で何かを呟く。

壁が歪んだ。そこに、旦那様は私の手を引いて中に入った。


私の目に飛び込んできたのは、見事に咲いた沢山の青い薔薇だった。


「ここには王族しか入れない仕掛けがされているんですよ」


「まさに「王宮の青い薔薇」ですね」


「姉上がそう呼ばれていた事をイライザさんから聞いたのですか?」


「…あっ、はい」


嘘じゃないけど、少しドキドキしてしまった。


「この青い薔薇は特別な時だけ飾られるんです。宴の間にも飾られていると思いますよ」


「そうなんですか」


「とても綺麗でしょう。今日は王太后がこの薔薇を王太子とイライザさんの為に飾っていると思いますよ。五月は薔薇の季節ですが、ここの薔薇は一年中咲いているんです」


「スゴイですね。邸の薔薇も今が盛りですが青い薔薇はありませんね。やはり王宮でしか咲かないのでしょうか?」


「そうですね。だから姉上は王宮にしか咲かない青い薔薇に例えられたのだと思いますよ」


なるほど。魔術省の絵を思い出してしまう。

お母様の青い綺麗な目と、王宮にしか咲いていない美しい青い薔薇。

王女のお母様にピッタリの呼び名だな。


「旦那様の思い出の場所でもあるんですか?」


「そうですね。この薔薇園は王族の人間しか入れませんし、とても綺麗な場所ですから……」


「……旦那様の思い出の場所に連れて来て貰えて嬉しいです」


旦那様は薔薇園で何を思ったのだろう。

旦那様の立場を想うと色々考えてしまうけど、この秘密の美しい場所に救われた方が多いと良いな。


「フローラさん」


名前を呼ばれて旦那様に顔を向けると優しく口付けされる。


「この場所に自分の妻を連れてこれるなんて…とても不思議ですが幸せです」


旦那様は美しく笑った。


「私も、こんな素敵な場所で素敵な旦那様に口付けされて幸せです」


私達は笑った。

そして、しばらく幸せな気持ちのまま抱き合った。

すると、遠くで歓声が聞こえる。


イライザ嬢達がバルコニーで民衆に挨拶をしているんだろう。

ココからは結構な距離があるのに……スゴイなぁ……。


「もう少ししたら、控室にお邪魔しましょう。それと、ここなら安全にお化粧直しが出来ますよ」


「本当ですね。贅沢な化粧室です」


私がそう言うと旦那様は「そうですね」と、優しく笑ってくれた。




◇◇◇◇◇◇◇




王宮の青い薔薇園を出て、旦那様は「控室は多分あそこだと思います」と、私を連れて行く。流石旦那様…騎士達が警護をしている部屋があった。


「特別にご招待いただきました、クリストファー・メイヤーと妻のフローラです。王太子妃にお取次ぎいただけますか?」


騎士に旦那様が言うと「お聞きしておりました」と、中に入れてくれた。

おや? ニールが言ってくれてたのかな? 聞いてないと言われたらニールと約束したと言うつもりだったけど。


「メイヤー伯爵夫妻が参られました」


そう騎士が告げると、イライザ嬢が嬉しそうにこちらを見た。


「良かった。控室に招待した手紙の返事が無かったので心配していました」


ん?手紙? ……ニールの仕業か。なるほど、前から計画してたからしつこく誘って来たのか。

ニールはこの部屋にいるので睨みたくなるが……我慢して無視しよう。


「ごめんなさい、イライザさん。出したつもりでいたの……」


こう言うしかないだろう。宰相と王太子もいるし、何よりイライザ嬢を不安にさせたくない。

それにしても、ベールは取っていたが素敵なドレスと素敵なティアラを身に付けたイライザ嬢は本当に綺麗だ。今度こそ泣かないようにしよう。


「王太子殿下、王太子妃、並びにご家族の皆様、本日は誠におめでとうございます。本来ならご家族しか入れないこの場所にお招きいただけた事、本当に光栄に思っております」


旦那様が王太子・イライザ嬢・宰相・ニールに向けて言う。

流石に王と王妃はいないんだなぁ。


「学園長、ありがとうございます。私もアーロンもニールも学園の卒業生ですし余り(かしこ)まらずに。アーロンもそれで良いわよね」


「……ああ」


アーロンは短く言った。

そうか、私達の会話はアーロンにとっては面白くないのかもしれない。

でも、本当の気持ちをイライザ嬢に伝えたい。私達にしか通じない会話もするかもだけど……。

私と彼はイトコだから今日だけは身内って事で許して貰いたい。


「イライザさん。やっぱり今日の貴女は私の目に一番美しく映りましたよ。私達、一緒に幸せになれましたね」


「……はい。一緒に幸せになれました。貴女に褒めてもらう事が一番嬉しいです。何よりもとても…」


イライザ嬢は目に涙を溜める。泣かないで、私も泣いてしまうから。


「……笑ってイライザさん。貴女の幸せそうな笑顔を私に見せて」


まずい、声が震えてしまう。泣いちゃダメだ。

イライザ嬢は目に涙を溜めながらも可憐に微笑んでくれた。

ああ、なんて素敵な笑顔なんだろう。


「フローラさん。貴女がフローラさんで良かった。貴女がフローラさんだから私は今日の日を迎える事が出来ました」


「……イライザさん、貴女が…貴女が素晴らしい女性だからですよ」


「……いいえ、違います。貴女は…私にとって…恩人であり、友であり…いつも『大丈夫』と、笑って私を守って来た姿は母の様でした……フローラさん、私の母は早くに亡くなりました…だから、貴女の存在はとても…大きかった」


そうか、イライザ嬢は前世17歳で亡くなった。現世も3歳でお母様が亡くなった。

私の娘と3つしか違わなかったイライザ嬢。母親の存在を求めた事があったのかもしれない。


「……もし、私に娘がいたら。今日の貴女の様に綺麗な姿を見せてくれたら。とても、とても嬉しいと思いますよ……。イライザさん、貴女のお母様もきっと喜んでいます。娘の幸せを…例えこの場所に居なくても、遠い場所にしか居なくても」


貴女の前世と現世の母達は、貴女の今日の姿をどれ程見たかっただろうか。

貴女を娘の様に思った時もあった。その気持ちが貴女を傷つけてしまったと思っていたけれど、私を母の様だと思ってくれた時もあったのか。それがイライザ嬢の支えになったなら嬉しい。


「きっと、貴女のお母様は今幸せです。貴女は私の娘では無いですが……私の娘が貴女の様な素晴らしい結婚をしたら何より幸福に思います。だから、これからも幸せになって、誰よりも。貴女のお母様にいつか会う日が来たら…幸せな人生だったと言えるように」


前世、あの事故が無ければ娘は結婚して子供も産んだかもしれない。

あの子の花嫁姿は見れなかったけど、一度は娘の様に思った貴女が母の様に私を想ってくれていて、こんなに素敵な花嫁姿を見せてくれた。


「ありがとう、イライザさん。貴女の今日の姿は……私を幸せな母親の気持ちにさせてくれました……」


「私も、貴女に今日の姿を見せられた事……きっと、私の母もフローラさんの様に喜んでくれたと思うと……私……」


私がイライザ嬢を見て娘を思い出している様に、イライザ嬢も私を見て前世のお母様を思い出しているのだろうか。

彼女を17年間育ててくれたお母様は、まだ日本で生きているかもしれない。

イライザ嬢の目から涙が溢れた。今、彼女が欲しい言葉を言おう。


「イライザ。幸せになりなさい。お母様の望みはそれだけよ」


イライザ嬢を抱きしめ、母のように言った。

今日だけは、私は貴女の母で、貴女は私の娘。


「……お母さ……お母様、私…私、幸せになったよ。心配しないでね。親孝行出来なくてごめんなさい」


「貴女が幸せになる以上の親孝行なんてない。お母様は幸せよ。とっても幸せ。生まれて来てくれて、私を貴女の母にしてくれてありがとう……」


イライザ嬢は本当の母に言いたかった事、私は娘に言いたかった事を言った。

前世のイライザ嬢の心残り、前世の私の心残り。

今日それが昇華したのかもしれない。


今だけは泣かせて欲しい。

イライザ嬢は最愛の母を想って。私は最愛の娘を想って。


本当の意味で私達は一緒に幸せになれたのだ。前世の分も。

私がフローラじゃなければ貴女がイライザじゃなければ無理だった。

貴女との出会いも奇跡だった。


今度こそ、イライザ嬢を抱きしめるのは最後になるのだろうか。

私のライバルで、親友で、娘である可愛いイライザ嬢。

前世の記憶を持つ私達が出会ったのは今日の為だったかもしれない。

不思議な奇跡の様な幸福な出会いだった。



「これからだって、私達はずっと一緒に幸せになれる…大丈夫です」





私は心からイライザ嬢に言った。


ムーンさんでリクエスト頂いた可愛らしいやり取りは出来なかったですが、イライザ嬢とフローラの愛情と絆は書けたかな?と、思ったり。彼女達が好きな方に喜んで貰えたら良いのですが…。

悪役令嬢の結婚式編は次回で完結です。

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