恋に落ちた日
たくさんの評価とブックマークをありがとうございました♪
勇気を貰えました。ちょっと甘くてRっぽい表現が少しあるお話です。
ムーンでの後書き予告の「初めての夫婦喧嘩」の前フリになります。
私は、いつから旦那様に恋をしたんだろう…。
結婚式が終わって、愛のある平和な監禁中になんとなく思った。
帰宅してルカ夫妻にお土産と留守のお礼は何とか言えた。だけど、それ以上は旦那様が「では、出勤の朝までいつも通りでお願いします」と、寝室に籠り現在に至っているので言えなかった。
今、私達はベットの中だ。もちろん何も着ていない。
旦那様は、最初は情熱的に愛してきたけれど、休日最終日の今日は、優しくゆっくり愛してくれた。
でも、結婚式後という事もあり流石に疲れたらしく旦那様は眠っている。時間的にはお昼寝になるのかな?
私をとても愛してくれる大好きな旦那様の寝顔を見ていたら、恋をした日を覚えてない事がチョット残念に思った。
前世でもそうだけど、私は無自覚で初恋をしていた。
恋する相手が居なくなる・壊されると思った時に自覚して、無自覚の時の想いが雪崩の様に私の心を襲うのだ。あまり情緒が無い恋の仕方のように思う。
しかも、私は各人生でたった一回しか恋をしていないのに、その瞬間が分からないのはとても損をしているような気がした。
「……寝てしまいましたね……」
そんな事を考えていたら旦那様の目が覚めたみたいだ。旦那様は私を抱き寄せて頭にキスをした。
「フローラさんは、疲れていませんか?」
寝起きなのに、いつもの様に私の事を気遣ってくれる。情熱的な時も旦那様は丁寧に愛してくれるので辛かったり変に疲れたりはしない。
「いえ、大丈夫です。旦那様…聞きたい事があるんですけど…」
「どうしました?」
「旦那様は、私が旦那様を好きって事にいつから気づいたんですか?」
「…いつから…。そう言われると、この日という具体的な事は無いのですが…」
寝起きにそんな質問をされた旦那様は思い出すように少し考えている。
「フローラさんは、最初の頃は緊張しているように見えました」
旦那様が隠しキャラだったので緊張はしてましたね…。
「元々、フローラさんは男性に距離を置いていたので、いくら勉強の為とは言っても男性と二人きりになるのは警戒心というか恐怖の様な物があるのかと思いました」
……確かに、最悪の場合、〇〇監禁なので…警戒や恐怖はあったかもなぁ…。
普通の生徒と先生として接していたつもりだったけど、なかなか出来てない部分があったんだな。
「なので、お茶をしたり話しかけたり、なるべくフローラさんの緊張や警戒を解こうと思いました。そのうち、フローラさんも私を信用してくれているような感じがしました」
休み時間には、美味しい紅茶を入れてくれたり、優しく話しかけてくれていたなぁ…。
「ああ、そうです。二人だけの授業が始まって最初の冬に、私が風邪予防の紅茶を入れたんですよ。そしたら、フローラさんは『ありがとうございます、美味しいです』と、ベルさん達に向ける笑顔をしてくれたんです。それからですかね…フローラさんが、私に本当の笑顔で接してくれるようになったのは…」
風邪予防のお茶…そう言えば初めて飲んだ時、ジンジャーっぽい味がして…聞いたら旦那様が『寒くなって来たので風邪予防に』って言ってくれたんだった。それ以外にも、私が疲れていそうな時や試験の前には蜂蜜入りの紅茶やリラックス出来る紅茶を入れてくれて。
温かい笑顔と穏やかな口調の旦那様の優しさと気遣いに、いつも私は感謝していたし感動もしていたなぁ…。
それが、恋心に変わっていたのだろうか。やっぱり、私は旦那様の優しさに魅かれていたんだな。
「それから、フローラさんが躓いて転びそうになって、私が支えて助けた時に……ベルさん達に向ける以上の笑顔でお礼を言ってくれたんですよ」
これも覚えている。授業する部屋の扉を旦那様が開けてくれて、入ろうとしたら躓いて旦那様が素早く助けてくれたんだった。
とっても優しい笑顔で「大丈夫ですか?」って聞かれて「ありがとうございます、大丈夫です」って言ったはずだ。
どんな表情をして言ったかは今日初めて知ったけど。
「そうだったんですか…」
「私は、その笑顔に心を奪われてしまいました。この時に恋に落ちてしまったかもしれません。貴女に…とっさに触れてしまって、しかも、貴女からは今までで一番の笑顔を向けられて…」
旦那様は、自分が恋に落ちた瞬間も覚えているのか。
「この時、私達は両想いになったはずなのに…私だけが気づいていた。今考えると、私達は不思議な関係でしたね。両思いなのに、フローラさんは私を好きな事にも気づいていなくて、私は貴女の気持ちを知っていて自分も貴女に惹かれていたのに何でもないフリをして」
「そうですね、不思議な関係でしたね。でも、旦那様は私が旦那様を好きになった瞬間と、自分が恋をした瞬間をちゃんと気づけて何となく羨ましいです」
そう言うと、旦那様は苦笑した。
「だからこそ葛藤がありましたよ。最初は、本当に貴女を大切な姪だと思っていましたから。私以外の優秀で貴女を大切に出来る人と貴女が結婚して幸せになる事を望んでいたので」
そう言うと、私の額にキスをした。
「貴女が私に好意を持ってくれてると分かっても、叔父と姪の絆を貴女が本能で感じ取っているのだと思う事にしました。ですが、私も貴女に恋をしてしまってからは…これは、最初で最後の夢なのだと思う事にしたんです。とても甘く幸せな一時の夢だと。貴女が恋に気づいたら壊れてしまう儚くて美しい夢だと。だから、大切にその夢を守ろうと思っていました。きっと、ニールさんの件が無ければ貴女が卒業したと同時にその夢は終わったのでしょうが…」
旦那様は私の頬を両手で包むと優しい口付けをした。
「ですが、夢は終わりませんでしたね。今、貴女は私の腕の中にいる」
そう言って旦那様はギュッと私を抱きしめた。
「夢じゃないですよ。私は現実で貴方の腕の中にいるんですよ」
私がそう言うと、旦那様の抱きしめる力が強くなった。
「あの時の夢より甘くて幸せです。それが現実だという事が夢のようですね」
「そう思うと、ニールさんが少しだけ好きになれそうです」
私が笑って言うと、旦那様も笑って言った。
「そうですね、私も彼を好きになりそうです」
二人で笑ってから私は言った。
「でも、ニールさんには絶対に言わないですけどね」
「そうですね。私も焼いてしまいますから言わないで下さい」
「ニールさんにですか?」
「貴女が私以外の男性を好きだと言ったら誰であっても焼いてしまいますよ」
そう言って優しく笑う旦那様はとても穏やかだった。私がそう言うはずが無いと知ってるからだろう。
「今は焼いてくれないんですか?」
「焼いて欲しいんですか?」
「……そうですね。焼いて下さい」
私は、旦那様の腕から少し逃げ出して旦那様の唇を奪った。
「フローラさんは私の嫉妬を甘く見すぎですよ」
「甘くないと証明して下さい。だから、今すぐ嫉妬して下さい……」
そう言って私は、また旦那様に口付けした。
「貴女の『嫉妬して下さい』は『愛して下さい』という言葉に聞こえますね」
「さすが学園長先生。正解です」
私がクスクス笑って言うと、旦那様は私を愛おしそうに見つめた。
「本当に貴女は私を甘やかすのが上手です。嫉妬も執着も貴女は許してくれるのですね……」
そう言うと、旦那様は深い口付けをして私の胸に顔を埋めた。
彼が与える甘い刺激に私は痺れた。
「んっ…貴方の方が……こんなにも…私に…甘いのに……」
旦那様は、いつものように私が望む甘くて痺れるほどの快感を与えてくれた。
旦那様は、私が甘いとか自分は甘えてばかりだと良く言う。
でも、旦那様だって私に甘いし私も甘えてばかりだ。
それに貴方を好きになってから、私は貴方が私に与えてくれた多くのモノを知った。
そんな貴方に私が与える事が出来る喜びと、その大きさを貴方は知っているのだろうか…。
私は言ったのに『それ以上のモノが「私の全て」なら喜んであげます。それで貴方が幸せになってくれたら、それ以上の幸福は私にもないから』って。
旦那様の嫉妬や執着は、私にとって愛の言葉に聞こえる。
それに答えるのは妻として当然な事なのに甘やかしてると言われてしまう。
旦那様は清廉潔白に生きてきた。だから嫉妬や執着の様な感情は嫌悪感や戸惑いを感じるのかもしれないな。旦那様を良く知る人にとっても、彼のそんな側面は想像も出来ない信じられない事なのかもしれない。
でも、私は旦那様がヤンデレだって言われて〇〇監禁するって聞かされていたから、むしろ旦那様の優しさや気遣いや愛情の深さや大きさを知れば知るほど愛さずにはいられない。旦那様にとって自分でも「予想外」の感情や行動は、私にとっては「想定内」なのだ。
この私達のギャップは埋まらないかもしれないけど、旦那様が自分のヤンデレな部分に苦しまないように私は彼を一生懸命愛してあげたい。
それが、私にとっても幸せなのだから。
私達は、いつも以上に甘い休日を過ごした。
私達のギャップは上手く噛み合っていた。
なのに、それが落とし穴になる日が来てしまうなんて……。
読んで頂いてありがとうございます♪
感想欄は設けていますが、評価やブックマークの方が皆様にとっても気軽に反応を表せる便利なシステムなのかな…と、思いました。
私にとっても皆様の反応があると勇気を貰え嬉しいです。




