表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王宮の青い薔薇のむすめ  作者: 青空那奈
番外編※本編読了後がオススメ
49/68

ある男の回想 1

今まで、スマホの特に縦画面で読んでいた方ご迷惑をおかけしました。

そして、あえてムーンでの予告ともリクエストもされていないお話を投稿してみます…。


親友の姪が今年入学してくる。


親友はいつものように陰から姪を見守るらしい。

俺にも協力しろというから飯を定期的に奢らせることにした。


入学式で見た親友の姪は、王女にそっくりではあるが印象は全く似ていなかった。

王女が大輪の薔薇なら娘の方は咲きかけの白百合か。


親友の姪だけあって全てにおいて優秀な生徒だ。

親友は姪に幸せな結婚をして欲しいとかで、姪のクラスには優秀で有望な男子生徒を入れている。

完全に贔屓だが、そんな親友の思惑を知らない姪は笑ってしまうほど全く男子生徒に食いつかない。

それどころか、女子生徒ばかりと仲良くして男子は眼中に無い。


見守る報酬の夕飯を親友の家で食べていた時だ。


「私としては、ワイアット先生の養子でもあるソルさんがオススメなのですが…」


「ソルは3回も断られたと有名だぞ」


「彼は、学園で習わないような魔術を得意としていますが、女性には魅力的に見えないのでしょうか? 彼なら誠実にフローラさんだけを大切にしてくれると思いますし、養父である先生もフローラさんを見れば事情は分かってくれるでしょうし、安心なのですが…」


「マニアックな優秀さは女受けは悪そうだな。それに、普通教科はもちろんだが、学園の魔術だけだったらフローラの方が優秀だろう」


「彼は宮廷魔術省で、驚くほど高度な魔術を研究しているのですが……その分、学業は本腰を入れませんからね…」


「ソルは授業を聞いてないからな。それでもトップ10より下がった事が無いのは、褒めるべきなのかどうなのか」


「他にエイブラムから見てフローラさんに相応しい学生はいますか?」


「いるかもしれんが…そもそも、お前の姪は男に興味があるのか?」


「……」


「お前と一緒だな、モテるのに本人に興味が無い」


「……」


ソルの件で人数は減ったが、親友の姪は無自覚で男をフッていた。

たまたま、その現場近くを通りかかったが男子生徒の好意にも気づかずバッサリ「お気遣いなく」と、作り笑顔で断っていた。

そして時は流れ、3学年の秋「聖女の盾」を、親友の姪が発動させた。


その日、王宮へ行く事の相談と報酬の夕飯を食べていると親友が言う。


「フローラさんの存在が、王や先生達に分かってしまいますね…」


「王達は驚くだろうが…お前との約束は破らないだろう。ただ、それ以外の人間に気づかれたら厄介だな」


「…そうですね…。フローラさんも自分の母親の正体に気づいてしまうのでは…」


「ああ、魔術省に行くなら王女の絵は見るだろうからな」


「……イライザさんと仲が良いようですしね…イライザさんに姉上の絵の事を聞けばイライザさんにも気づかれてしまう」


「アーロンやソルも見てると思うが、年齢や髪型や雰囲気が違うと女の区別がつかないタイプなのか…。だが、あの絵の年齢に近づいてきたフローラと王女はそっくりだからな。鈍感な奴らも気づくかもしれん」


「……今まで以上に、フローラさんを守らなければいけないですね。エイブラム、よろしくお願いします」


「上等な酒も追加で奢れ」


結局、親友の姪は魔術省では無く、学園に残り学園長室で選択授業をする事になった。

これ以上安全な場所は無いだろうと思っていたのだが、親友の様子がどうもおかしい。


上等な酒を飲みつつ、今日も報酬の食事を親友の邸で食べていた。


「そういえば、最終学年はフローラのクラスにイライザと王太子達は一緒にしなかったな?」


「フローラさんには、ベルさん達がいるだけで良いでしょう。イライザさんは立場上、ベルさんの様に表立ってフローラさんを守る事が出来ませんし、イライザさんの為にもフローラさんと一緒じゃない方が良いと思います」


「ラブレターの件は、身分も高く高潔な一族で有名なベルの方が確かに盾にはいいな。ベルとフローラは1学年の時からずっと仲が良いし角が立ちにくい。優秀な男子生徒はどうして入れなかったんだ?」


「フローラさんには必要が無いからです。学園で良いご縁が無かったとしても、姉上達が最善の相手を見つけるでしょう」


「フローラは本当に男に興味が無いみたいだからな」


「……」


「…お前、最近様子がおかしくないか?」


「…いえ、大丈夫ですよ。今日はもっと良いワインがあります。奢りますよ」


はぐらかされた様な気がしたが、ワインが旨かったから聞かない事にした。

だが、数日後理由が分かった。


学園長室で、重要な話を詰めていた所だった。


「失礼します、フローラです」


「フローラさん、申し訳ありません、少しの間だけ隣の部屋で待っていてもらえますか? もう少しで話し合いが終了しますので」


「はい、分かりました。私の事は気になさらずに」


フローラは、親友に笑顔を向けた。作り笑いではない、フローラの親友達にしか見せない本当の笑みだった。

驚いて親友を見ると、コイツもいつもより良い笑顔をしていた…オイオイ…。



それから間もなく、決定的に親友の様子がおかしい。

強引に邸で奢ってもらう事にした。


「お前、フローラと何があった?」


「何もありませんが?」


「へぇ…フローラはお前の事、好きみたいだな…。お前はどうする気なんだ?」


「……」


「ふーん、否定しないのか」


「…貴方も気づく位だから、ニールさんにも分かってしまったのですね」


「ニール?」


「彼のせいで、フローラさんは自分の気持ちに気づいてしまいました。私を好きだという気持ちを。ずっと気づかないまま、卒業してくれるのを望んでいたのに…」


「お前が拒めば問題ないだろう」


「……フローラさんは自分の気持ちに気づくと同時に、私の気持ちも気づいてしまいました」


「…お前もフローラを女として好きになったって事か?」


「……」


「お前たちは叔父と姪だろう?」


「それも、フローラさんに言いました…。でも、フローラさんは戸籍上は他人だから私と結婚したいと…」


「…何やってんだ…」


「…諦めます」


「諦められるのか? お前にとって初めての事だろう? フローラにしても、今まで男に全く興味を持たず、無自覚にお前を好きだった。それが両思いだって知って結婚まで口にしてるんだろう? 年頃の少女が諦めるか?」


「…フローラさんには、正しい幸せを与えたいんです。ご両親が反対すればフローラさんも淡い初恋をいつか忘れるでしょう」


「お前は忘れられるのか? 間違いを犯したりしないか? どんな男の好意も、フローラは気づかなかったぞ。だが、お前はあっさりバレたんだろう?」


「……私だって、必死に隠してきました。フローラさんは最初はむしろ、緊張した表情の方が多い様に見えました。私はその緊張を解そうと一緒にお茶をしたりしただけです。それが、段々…。フローラさんが私に向ける笑顔や眼差しが…好意に満ちて…その笑顔に心惹かれても…必死で気づかれないように普通にしていました。自分の気持ちに気づかないフローラさんに知られるはずは無かったんです」


「甘かったな。フローラが気づかなくても、周りが気づいたら意味がないだろう。現にニールのせいで、フローラは気づいてしまったんだろ。しかも、お前がフローラを好きな事もだ。さらに、叔父と姪でも結婚したいと思うほどだぞ? 無自覚の笑顔に落ちたお前が、両想いと分かってるフローラの想いや行動を拒めるのか?」


「拒めます、それが彼女の幸せなのだから」


「…自分の事も考えろ。お前は十分過ぎるほどベフトン家に尽くしてきた。最大の切り札すら、もうベフトン家の為に差し出してしまったんだぞ。お前の居場所は学園しかないんだ。その学園でフローラと不祥事を起こしてみろ。消されるのはお前だけだぞ」


「…ベフトン男爵とは手紙で交流しています。彼は私に協力してくれるでしょう。彼だって娘の幸せが一番大事でしょうし、私が頼む形にしたら遠慮なく娘の為に反対するでしょう」


「…お前がフローラと結婚したいと言っても、協力しなきゃいけない程の恩は受けているからな。フローラとの結婚を反対して下さいなら…まあ、そうするだろう」


「フローラさんは人の優しさに敏感で、彼女自身も優しい人です。ご両親を悲しませてまで自分の幸せを求めないでしょう」


俺自身もそう思った。

だが、ベフトン家の連中は俺の想像の斜め上だった。


何話か続くと思いますが、その間に18歳以上の方はムーンの方にリクエスト下さると嬉しいです。

そして、スマホ用の改稿が少しあるかもしれません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ