ある春の日 2
初めての夜のお話になりますが、軽めのR表現にしています。
「そろそろ、お昼の時間ですね」
旦那様が言った。
「…そうですね」
どれくらい抱き合ってたんだろう…。
「フローラさん、泣いていたんですか?」
私は慌てて頬を拭った。
「…旦那様が私に甘えてくれたのが嬉しかったんです」
「…フローラさんも、私に甘えてくださいね」
そう言って、旦那様は私に口付けた。なので、私も彼の口付けに答えた…。
「……失礼いたします…お昼の準備が出来ましたが…」
…!!私は慌てて旦那様から離れた。ラリーは頭を深く下げていた…。
「分かりました。今、行きます」
ラリーは、旦那様がそう言うと下がった。スゴイな…。どうしてそんなにシレッと出来るのだろう。もしかして、学園長が赤くなった顔って私しか見たことないのかな…。
「フローラさん、どうして笑っているんですか?」
「えっ、ちょっと昔の事を思い出して…行きましょう、お昼が冷めてしまいます」
◇◇◇◇◇◇◇
私達は、スーザンの作った美味しいお昼を頂いた。
その後、居間で旦那様が紅茶を入れてくれた。
「旦那様は、本当に紅茶を入れるのが上手ですね…」
感心して私が言うと学園長が微笑して言う。
「私は、姉上の侍女という事もしていたので」
そう言えば、お母様がそんな事を言っていたな。本当に旦那様は苦労をしたんだ。
でも、あんまり暗くなったらダメだよね。
「旦那様の侍女姿は可憐だったでしょうね」
「……」
あれ、ちょっと間違えたかな。
「あの、変な意味じゃなくて…」
「…フローラさんは『昔はお父様以外の男は嫌い』だったそうですから、侍女姿を喜んでくれそうですね…」
遠い目をしている…。
今でも、旦那様が女装したら美女になりそうだけど、やっぱり嫌だったんだろうな。
「今の旦那様が一番素敵で、一番好きですよ…?」
そう私が言うと、旦那様はおかしそうに笑った。
「ふふっ、ありがとうございます。そう言えばさっきラリーが去った時に笑っていましたが、何を思いだしたんですか?」
「…旦那様が、あまりにも何事も無かったような顔をするので、もしかして旦那様の赤い顔を見たのは私だけかなーって思っただけです」
そう言ったら、旦那様の顔が赤くなった…久しぶりに見た。
「私は、旦那様の特別なんですね」
私は、少しおどけて言った。
「…あまり見ないでください…」
「『嫌です。私にだけに見せてくれる表情を、私が見ないでどうするんですか?』」
前に、旦那様が私に言ったセリフを言ってみた。
「…そうですか」
旦那様は、そう言うと私の手を握った。
あれ?ソファーじゃなくて、ベットに座っている…居間じゃなく寝室だ…。
「フローラさん、貴女だけにしか見せない顔をもっと見せますね」
そう言うと、旦那様は私をベットに押し倒した。
「…ちょっと、待ってください!!まだお昼ですよ!!」
「…だから、寝室に転移したんですが…」
イヤイヤイヤ、そうじゃなくて。
「フローラさんが煽ったんじゃないですか?」
「煽ってないです!!」
「…そうですか…でも、煽られてしまいました」
そう言うと、旦那様が口付けしてきた…最初から深く口付けしてきた…。
何だろう、スイッチを押してしまったみたい。
唇から首筋に移動した。
「…学…旦那様、お風呂にも入ってませんし…」
「…じゃあ、一緒に入りますか?」
「今、お昼ですよ?」
「私達は新婚で、ここは私達の邸です…」
それは、そうなんですが…。
旦那様が、首筋に口付けて私の胸に触る。
やっぱり、無駄にスキルが高い…。
さすがに、お昼からっていうのはどうなんだ。
しかも、これが初めてってどうなの?
そんな事を思っていると唇を塞がれ、胸を触られ、さらに太ももまで触っている。
本当に初心者なのか…。
夜まで、待って欲しいんだけど…。
庭であんな所を見られて、お昼にこんなじゃ、夕飯の時いたたまれない…。
「…んんーー!!」
旦那様の肩を叩いた。ちょっと強めに。動きを止めてくれた…。
「…これ以上するなら、旦那様の事、これから好きって言いませんよ」
「……」
「お願いします、夜まで待ってください…」
痛っ…目に睫毛が入った…。
「…泣かないでください…今は、これ以上はしませんから」
旦那様は、私から離れた。
私は目が痛くて、起き上がり寝室にあるバスルームに走った。
バスルームの鏡で、睫毛を取る。
はぁ…びっくりした…。乱れた髪と衣服を整える。
バスルームから出たら、すぐ側に旦那様がいた。
旦那様はそっと、私を抱きしめた。
「スミマセン…泣かせるつもりは無かったんです…」
分かってますよ…っていうか、睫毛が入って痛かったから涙が出ただけで、泣いてないですけど。でも、夜まで待って欲しいし。
「…どうして、いつも突然するんですか?」
「…スミマセン…」
「夜にウェディングドレスを着ますから、優しくしてくださいね?」
「…はい」
「今だけですから…。今日の夜、初めてが終わったら、いつでも旦那様を受け入れますから…だから、今だけ我慢して下さい」
「…フローラさんに甘えてばかりでスミマセン…私の方が年上なのに…」
コメントしづらい。
「…いいんです。昨日、旦那様はお父様の気持ちを大切にしてくれました。そんな旦那様が大好きですよ」
「…私もフローラさんが大好きです…」
「じゃあ、口付けしてください」
旦那様は優しく口付けしてくれた。
そして、結局、お姫様抱っこでベットに連れて行かれて、旦那様の膝の上に乗せられ、ずっとキスされてしまうのだった…。
◇◇◇◇◇◇◇
寝室の扉がノックされる。
「…旦那様、奥様、夕食のお時間ですが…宜しいでしょうか…」
もうそんな時間か…。結局、ずっと寝室に籠ってしまった…。
どっち道、いたたまれない夕食になるのか。
「今、行きます」
旦那様が言った。
超絶・気まずい夕食の時間が始まった。
そんな、気まずい夕食の後に、もっと気まずい事をスーザンに頼まなくてはいけない。前に私が泊まった部屋で、お風呂に入って清めた後、ウエディングドレスを着るのを手伝ってもらい、髪の毛を梳かしてもらうという…。
…髪型は下したままで、サイドに白い花を飾るだけにした。
「奥様、お綺麗ですよ」
「ありがとうございます…」
「今、旦那様は寝室でお待ちだと思うので、奥様の気持ちが整いましたら…」
「…はい」
「旦那様にお任せすれば宜しいと思いますので…あまり、緊張なさらず…」
「…はい。ありがとうございます。スーザンさんは、もう下がってもらって大丈夫ですので…」
「では、失礼いたします」
扉が閉まる…。
お父様とお母様が今日はいないから大丈夫かな?って思ったけどルカ夫妻には隠しようがないんだなぁ…これからずっと。
それは、もう諦めよう。
本当に、昨日じゃなくて良かった…。
21時になったので、覚悟を決めて寝室に向かう。
「フローラです…」
そう言うと、旦那様が扉を開けてくれた。昼間とは違うラフな格好をしていた。
「…どうぞ」
さすがに、旦那様も緊張しているみたい。
「昨日も綺麗でしたが、髪を下ろしているフローラさんは本当に綺麗です…」
私の髪を一房とって口付けた。そうでもないか…。
「フローラさんには、白いドレスがとっても似合いますね…」
そう言うと、軽く口付けた。
そのまましばらく、軽い口付けを受けた。
旦那様は私の髪飾りを優しく取ってドレッサーに置く。
そして、ドレスの後ろのボタンを外していく。
ドレスがドサッと足元に落ちた。
下着姿の私を、横抱きにしてベットに連れて行く…優しくベットの上に横たえてくれた。
それからというと…。
恋愛経験が無いらしいのに、無駄にスキルが高い旦那様は初心者とは思えない手際の良さを見せた。
しかも、初めてフローラと呼び捨てにされ…私はドキドキさせられてしまうし…。
初めては実にスムーズに終わった。
…旦那様は、これが初めてなんだよね…。
「…フローラさん、辛くないですか…?」
「大丈夫です…あの…もしかして、慣れてるんですか…?」
「…いえ…初めてですけど…」
「…そうですか…」
初めてでコレか…。
「フローラさんしか欲しいと思いません…」
そう言うと、旦那様はギュッと抱きしめた。
「フローラさん『今日の夜、初めてが終わったら、いつでも受け入れます』と言うのは本当ですか?」
「…体調が悪い時以外は…」
「今、悪いですか…?」
「………いいえ」
「じゃあ、いいですか?」
そう言うと、再び旦那様は私を体で愛し始めた…。
◇◇◇◇◇◇◇
…朝だ…。
私の隣には、愛しい旦那様が美しい顔をして眠っている。
幸せなんだけど…昨夜の衝撃が残っている私には、満足そうな旦那様の寝顔に複雑な思いを感じた。
…初めてで5回もするかな…。
やっぱり、旦那様も伊達に隠しキャラじゃないって事か。
そして私は2日間、寝室に監禁状態になりました…。
読んでいただいてありがとうございます。
次も軽い感じでR表現があります。




