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王宮の青い薔薇の娘 真実 3

それからは、ニールもソルも接触は無かった。


イライザ嬢との会合で「ニールとフローラさんの婚約は私が絶対に許さない。フローラさんへのこれ以上の接触も私は許さない」と、ニールに釘を刺してくれた事を報告された。


私は感謝しかなかった。

今の所、ニールはそれを守ってくれているので安心して下さいと私は言った。


ニールの方も私との約束を守ってくれてるみたいだ…イライザ嬢にとっては良い兄のようで安心した。



それ以外では数件、ラブレターを貰ったが、いつもの通りお断りしていた。




◇◇◇◇◇◇◇




そして季節は夏になり、テストではいつも通りトップになって夏休みがやってきた。


私は、久しぶりにタラッタアグロスに帰った。


「お帰りなさいませ、お嬢様」


「ただいま帰りました」


執事や使用人の皆に挨拶をする。


「お帰り、フローラ。今夜はフローラの好物ばかりだから楽しみにしているのよ」


「フローラ、早く荷物を片づけておいで。美味しいお菓子も用意してるから、一緒にお茶をしよう」


ニッコニコで母と父が出迎えてくれた。

前世では、あまり帰省しても喜んでもらえなかったので、いつもはくすぐったい気分になるのだが…。


この静かな領地で、優しく幸せだけを与えて何不自由なく育ててくれた両親。

そして、両親自体も幸せで充足(じゅうそく)していたと思う。


ここは私達家族にとって間違いなく楽園だ。


その楽園を与えてくれ守ってくれたのは学園長だ。

でも彼は、それに見合うだけの幸せや愛情を与えられていない。


それを、私達は真剣に考えるべきなのだ…逃げずに…。


「荷物を片づけたら、談話室にお茶とお菓子を運んでくれる? お父様、お母様、大事な話があるからそこでお願いします」


そういうと、両親は少しキョトンとしたが了解してくれた。




◇◇◇◇◇◇◇




「フローラ、これは隣国の珍しいお菓子だよ、今日に合わせて手に入れたから食べなさい」


荷物を置いて、談話室に入るなり、お父様は前世のカステラっぽい物を進めてくれる。メイドが紅茶を用意してくれる。


「ありがとう、お父様。アギー、後は私がやるから下がっていいわ。しばらく親子水入らずにしてくれる?」


「はい、かしこまりました。失礼致します」


メイドのアギーを下がらせて、とりあえずカステラっぽい物を食べた。


「美味しい、甘くてふんわりしていて…」


「そうだろう、フローラがきっと気に入ると思ったんだよ」


「本当に美味しいわね」



私と父と母が言う。前世の父と母は私の好物なんて知らなかったのに…。

ありがたくいただいて、しばらくはお茶にしよう。


食べながら私は覚悟を決める。




「あのね、お父様、お母様とても大事な話が合って、家族以外、誰にも知られたくない話なの」


居間ではなく、談話室な時点で感じてくれるものはあったかもしれないが…真剣な口調で言う。


「最初に言うわね、私は本当に恵まれた家庭で、優しいお父様、お母様で良かったと思ってる」


「なんだ、改まって…」


お父様が硬い表情で言う。


「私、お父様とお母様の元に生まれてきて、とても幸運で幸せだったと思ってる。今まで本当にありがとう」


私はニッコリ笑って言った。


「私達だって、フローラが生まれて来てくれて嬉しいよ」


「お母様だってそうだわ…フローラ、どうしたの? まるでお嫁に行くみたい…」


父と母が言う。


「…お嫁に行けるかどうかわからない…でも、心から好きな人が出来たの。その人じゃなければダメなの」


そういうと、父と母は驚いた顔をする。


「お父様以外の男は嫌いだと言っていたフローラが!!」


「男の子なんてみんな野蛮で嫌いと言っていたフローラが!!」


父と母が言う…確かにそう言ってたね…。


「…そう、昔から私、基本的に男性は苦手だった。学園に入学してから素敵な男子がいたり告白されたこともあったけど、全く心が動かなかったの」


両親にこういう話をするのは羞恥(しゅうち)を感じるが、そんなことを言ってる場合じゃない。


「でも、やっと出会った運命の人は、好きになっちゃいけない人だったの…」


そういうと、お父様とお母様はお互いの顔を見合わせた。


「フローラ…それは…」


お母様が恐る恐る聞く…。


「その人は、クリストファー・メイヤーと言うの。ねえ、お父様、お母様。私は、幸せになれないの?」


「…それは…」


お母様はそう言って黙った。

お父様も難しい顔をしている…。


「その人は、お母様を死の淵から救ってくれて、私達がここで幸せに暮らせるように魔法で守ってくれていた。そして、私が学園で「聖女の盾」を発動した時、治療してくれたおかげで私は早く回復できた。彼は昔から私達を守ってくれていた。私達が今幸せに暮らしているのは、その人のおかげでしょ?」


「…クリストファー本人がそう言ったの?」


珍しく眉をしかめてお父様は問う。


「最初に教えてくれたのは、宰相家のニールとイライザさんよ。宮廷魔術師長の養子のソルさんも。それから学園長に聞いたわ」


ヒントをくれたのはニールで、お母様の病気もイライザ嬢が言っていたし、治療の話はソルからだった。その後、学園長から詳しく聞いたのでそう言った。

お母様の事は、宰相と宮廷魔術師長は知っている。言いたいことは分かってくれるだろう。


「宰相の…」


お母様は顔が真っ青だ…。


「私が「聖女の盾」を発動させてから、色んな人が告白してきたわ。宰相の息子のニールも…。彼は私が学園長を好きだって知ってた。でも、その恋は叶わないって残酷な笑顔で言ったのよ…とても怖かったわ…」


お父様とお母様は黙って聞いている。


「ベル達も私が学園長を好きだって知っていたわ。ベルは、告白を断るのにフォジィ公爵家のリルさんを牽制に使ってはどうかと私を助けてくれた。そして「聖女の魔法」の第一人者で、一代貴族の伯爵で、権力に関係のない学園長は私に相応しいと言ったの。私もそう思ったわ…でも…宰相の息子であるニールは無理だと言ったの」



私は大きく息を吸った。


「なぜなら、お母様はエレアノーラ王女で、学園長は王女の腹違いの弟だから」


二人は何も言わない。






部屋には重い沈黙が流れた…。


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