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王宮の青い薔薇の娘 真実 2

放課後、初夏の空気を感じながら東屋に向かうと、ソルはもう来ていた。


「お待たせしました」


私はそう言って、座った。


「今日は来てくれてありがとう」


ソルは淡々と話し始めた。


「大事な話というのは、君の母上と学園長の関係なのだが……君は気づいているのか?」


「…はい」


「気づいていて君たちは…?」


「ソルさんはどうして母の事と学園長の事を知ったのですか?」


申し訳ないが質問返しをした。


「僕は宮廷魔術省に行く廊下に飾ってある王女の絵が、君に似てると最近やっと気づいてね。アーロンに聞いてみたんだが彼も君が王女に似ていると言っていた。 そこで養父に聞いたんだよ。養父は君が王女の娘と教えてくれた。「聖女の魔法」で有象無象(うぞうむぞう)の人間に狙われるだろうから、さり気なく君を守ってくれと言われた」


やっぱり、そういう事か。母の師匠だけあって娘の私も心配もしてくれていたのか…。


「それで君を気づかれないように見ていたんだ。君の親友たちも君を守っていたし、学園長も君をさり気無く守っていることに気付いた。そして、ニールが最近君に接触してる事も。ニールに聞いたが、君の婚約者に立候補したみたいだね。玉砕したようだが…」


「……」


「ニールは君の防波堤になれるのは自分か僕しかいない。学園長では無理だと言った。その理由を聞いた。学園長は君の母上の弟君だと…」


「そうですか…」


「…やはり、ニールや僕では駄目だろうか?」


真面目な顔でソルが聞く。


「…ソルさんもニールさんも恋愛感情ではなく、政治的な目的で私の防波堤になるつもりなのですか?」


「…僕は同じ女性に4回も声をかけたりしないんだけどね…。あのニールだってそうだよ」


どういう事…まさか…。


「…ソルさんとニールさんは、私にいくらかの好意があるという事ですか?」


信じられない。そんな気持ちが顔に出ていたのかソルは苦笑いを浮かべた。


「……僕は1学年の入学当初から君の魔力に興味を持ち、友人と楽しそうな君を見ていた。それが好意になった。ニールより早く君に玉砕したけどね。ニールも君を観察していただけが、今は執着になってしまった。イライザに止められて今は君に近づかないが…僕もニールも、君と学園長が叔父と姪じゃなければ、あきらめたけどね」


…嘘でしょ。ソルは確かに3回、今日を入れたら4回も誘われたけど…。

ニールの場合はゲーム通り好きな子にはドSなの?だから私にドSなの?

イライザ嬢が止めているだけで執着してるって…。


「…そんなに露骨に嫌な顔をされると、結構傷つくんだが…」


ソルは少し落ち込んだような表情をする、鬱デレって言ってたけど落ち込みやすいのかな…。


「すみません、嫌の大部分はニールさんなので…ソルさんには申し訳ないなと思ってます…」


「ニールはそんなに嫌われているのか?」


意外だ、という表情だ。


「ニールさんはイライザさんや皆さんには優しいのかもしれませんが、私に対しては意地悪というレベルを超えているんですよ…正直、関わり合いになりたくないです」


吐き捨てるように私は言った。


「そうとうだね。ニールは完全に脱落か…。現実問題、学園長と君は叔父と姪だ。どうする気なんだ?」


ニールの事をいう時に少し笑って、それからは真剣な顔でソルが問う。


「でも、戸籍上は他人ですし、はっきり言って私は学園長以外の方を好きになる事は無いと思います」


「…僕から見ても、学園長が叔父でさえなければ君に一番相応しいと思う。全ての面で学園長には敵わない。君が「聖女の盾」を発動して倒れた時、僕は何もできなかった。君の回復が早かったのは学園長が君を治療したからだ」


「そうなんですか…」


そういえば、イライザ嬢が攻略対象相手に「聖女の魔法」を発動したら、一日意識不明って言ってたけど、私は数時間で回復してた…。

学園長が治療してくれていたのか…。


「聞いていなかったのか。 そういう面も含めて敵わない。なのに運命は意地悪だね…。でも、君の意思は分かったよ。どうにもならなくなったら、僕の事を思い出してくれたら嬉しい」


イライザ嬢は、ニールは優しくて、ソルは変わってると言っていたが、私にとってはニールは意地悪で、ソルは紳士だしニールの100倍優しかった。


「…すみません、こんな私に気を遣わせてしまって…」


心底、申し訳ない。


「いや、僕が望んだことだ。気にしなくていい。今日は時間をくれてありがとう」


「こちらこそ、ありがとうございました」


そういうと、ソルは颯爽と去って行った。本当に何もかもニールとは違う。




もちろん良い意味で。




◇◇◇◇◇◇◇




次の日の選択授業で、ソルとの会話を学園長に報告した。


「ソルさんはニールさんと違って、紳士で優しい方でした。私、3回もお誘いを断ったのに…申し訳なかったです」


そう言うと、学園長は感心したように言った。


「彼は優しいですね」


「…そういえばソルさんから聞きました。「聖女の盾」を発動した時、治療して下さったんですね。そのおかげで早く回復できたみたいで…ありがとうございます」


今更だが、お礼を言った。


「どういたしまして。あの日、ソルさんが顔色を変えて保健室に来たんですが、極度の魔力切れと体調の回復には万が一の場合を考えると「聖女の祈り」を使える私の方が適任だったので…」


ソルとは同じクラスだったから、倒れた場所で何も出来なかった…じゃなく、わざわざ保健室に来たのか…。


「…もしかして、ソルさんが私の事どう思ってるか知ってました?」


学園長は気まずそうな顔をした…だから、昨日の抱擁は少し長かったのか…。


「ソルさんは、紳士なので…強引なことはしないと思っていたので…」


まあ、そうでしたけど…。


「そうですか…。ベルもニールさんもソルさんも形は違えど私の盾になろうとしています。思った以上に「聖女の魔法」というのは影響があるんですね。ところで、もうすぐ夏休みですが父と母に学園長の事を相談してもいいですか?」


「そうですね、お二人には話さないといけないですね。お二人の意向によって貴女をどう守るか違ってきます」


「反対されますかね…」


「腹違いとはいえ、弟が自分の娘と魅かれあってるっていうのは…倫理的にも感情的にも…理解は難しいでしょう」


難しい顔の学園長…。


私と兄の関係は兄妹というより、王と奴隷のような関係だった。

私の宝物は簡単に壊されたが、兄が母に叱られることはなかったし、逆に母は私を叱った…不注意だと。

でも、学園長とお母様は仲が良かったそうだし、なによりお母様にとっては命の恩人であり、私たちを今も守ってくれている存在だ…。


それでもやはり…難しいだろうか…。


学園長が私に抱擁以上をしないのは、学園長と言う立場もあるだろうが、それ以外の思いもあるだろう。

彼は両親が反対したら私を手放すつもりなんだ。



話はそこで終わって、授業を再開した。

今日の授業終わりの抱擁は…。






甘美さより切なさが大きかった…。


本日、19時にもう一度更新します。

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