王宮の青い薔薇の娘とそれぞれの最善 2
午後の選択授業、私は学園長室に入った。
私が学園長の机と椅子を使って、学園長は応接セットのソファーとテーブルをどけてホワイトボード?を用意してくれていた。
そのホワイトボードの前に学園長は立って教えてくれる。
「せっかくですから、初めての授業は「聖女の魔法」について説明しましょう」
学園長は聖女の魔法について説明してくれた。
聖女の魔法は「聖女の盾」「聖女の祈り」「聖女の剣」「聖女の雷」「聖女の光」の5種類
「聖女の盾」
あらゆる魔法攻撃・物理攻撃・自然災害を防ぎ鉄壁の防御で対象を守り抜く魔法
「聖女の祈り」
どんな病気・怪我・状態異常・欠損も再生できる究極の癒し魔法
「聖女の剣」
聖女が作り出す究極の剣で、この剣で切れない物は無いし、どんな人でも剣豪以上の力を振るえる魔法
「聖女の雷」
聖女の究極の攻撃魔法、攻撃したい相手だけを確実に100でも1000でも雷で確実に当てることができる魔法
「聖女の光」
全ての闇魔法・穢れ・瘴気・呪い等を完全に無効化&浄化が出来る魔法
元々は、数百年も前に王家に生まれた王女が発動した魔法。
その王女以外に発動した人間はいないので、伝説になり風化しそうな魔法だったのを学園長が発掘し世にまた知られることになった。
この王女がいた時代は日本で言う戦国時代で「聖女の魔法」を駆使した王女は今の王家の礎を築いた。
そして王女は聖女と呼ばれ、発動した魔法も聖女と冠した。
ここまでは普通の教科書にも載っている。
ただ、発見した人の名前は載っていなかったと思う。
学園長が学園に在学中に発見して、その研究成果を認められ伯爵の爵位を頂いたので貴族の中では有名な話らしい。
「ここからは、教科書にも載っていない話になります。教科書には聖女の魔法を発動させるには大変な魔力と特別な条件があり禁術に近いのでトップシークレットになってると載っているはずです」
だからすぐ王宮に呼ばれたんだろう。
でも、特別な条件って…。
「この魔法が風化した一番の原因は、呪文や魔方陣が判明しなかったため研究の仕様が無かった事です。ですが、私と貴女が発動させた時の状況を考えると、元々呪文や魔方陣は存在しない。強い魔力と、強い願い単純にそれだけなんです」
「本当にそれだけなんですか?」
「それだけです。数百年使われなかった魔法の発動方法や条件より、数百年ぶりに魔法を発動させた人間が重要という事です。呪文や魔方陣がない以上ね。だから私が聖女の魔法の第一人者なんです」
「なるほど…発動方法や条件より、魔法を発動させた者が重要。…具体的には何人発動させているんですか?」
「聖女と私と貴女だけです、公式でも非公式でも」
「三人だけ…」
「この三人に条件、もしくは共通点があるとするならば……この魔法を発動させた時期が全員10代という事です」
「……」
私と聖女の共通点は王家の血を引く娘という事。だけど平民出身で男性の学園長がそこに入ってくると、確かに魔力以外の共通点は発動時期くらいしかないか…。
とりあえず、私も学園長も伝説の聖女と同じくらいの魔力を持つ存在という事…。
「…発動時期が10代という事が確定なら、私がこの学園の学園長を勤めるのは理にかなっているんですよ。フローラさんの例を見ても明らかですが」
「確かに、そうですね」
「ところで、フローラさんが「聖女の魔法」を使えることは大勢の人に知られてしまいましたが、聖女の魔法の事を具体的に生徒に聞かれたりしましたか?」
「いえ、ほとんど安静にしてましたし、発動してから会話した友人のアナとミラとベルは私の体の心配が主で…アナを助けようとして発動したというのは多分皆さん知ってると思いますが…具体的に魔法の事は何も…」
「そうですか。教科書にも聖女の魔法はトップシークレットとされてますが、万が一誰かに具体的に聞かれたとしても、話すわけにはいかないという事にして下さい。幸い、フローラさんの聖女の魔法は「聖女の盾」なので悪用はされにくいと思いますが、これから新たな聖女の魔法を覚えたとしても「聖女の盾」しか使えないという事にしましょう」
「はい」
確かに、具体的にどうしたかと言われても「アナを助けたいと思っただけ」と言うしかないし、それだけの事だからこそ他の聖女の魔法を使えると思う人間も出てくるだろう。
そもそも私の場合は、この世界のヒロインという事を忘れてはいけなかった。
学園長の「聖女の祈り」は病気や怪我に悩む人には堪らない力だろうが、体にかかる負担も少なくないし、病気や怪我に苦しむ全ての人を助けるのは無理だ。
だからこそ極秘にする理由は想像に難くない。
「聖女の雷」はもっと分かりやすい。究極の殺人兵器になってしまうだろう…。
なるほど「聖女の魔法」「王女の娘」このセットを持った私って、例えば敵国からも狙われちゃう感じか…望めば王太子妃にもなれちゃうみたいだし…。
この目の前の学園長が隠しキャラだとして、敵国に狙われても守れるだけの魔力はありそう…伯爵の身分がある学園長と男爵家の娘なら問題ないと思うけど…。
「聖女の魔法」と「王女の娘」が付加された場合、私の方が身分が上になっちゃうとか?
学園長も「聖女の魔法」を使えますよ~って周りに言えたら、ベストカップルっぽいけど極秘だから無理だろう。
元は平民だから…みたいな感じで反対されるのかな…。
あ、その前に、この人が私を好きかどうかも分からないけど。そして私がどう思うかも分からないけど。
何となく、雰囲気は前世の夫に似てるんだよなぁ…。
こんなに優しそうで爽やかな人がヤンデレになって私を凌辱監禁するんだろうか…。
「どうしました、フローラさん。何か分からないことでも?」
「えっ、いや…大変な魔法を発動させてしまって…私の人生変わってしまうのかなって思って…」
ソフトに本音を言ってみる。
まあ、普通の女の子でもそう思うよね、おかしい発言じゃないはず…。
「…そうですね、私も「聖女の魔法」で人生は変わったかもしれません」
そう言う学園長の顔はどんな感情も読み取れない。
「私の場合は、良い方に変わったと思いますよ。フローラさんも、きっとそうなります」
爽やかな笑顔の学園長…。
私は、なんて思ったらいいんだろう…。
◇◇◇◇◇◇◇
初めての授業は割と順調に終わった。
学園長の教え方は上手で、隠しキャラを抜きにしたら、好きなタイプの先生だ。
でも、隠しキャラかもしれないと思うだけで、こんなにも神経をすり減らすことになるとは…。
改めて、イライザ嬢の精神力と努力に感服する…これは、想像以上のストレス…。
不用意な発言で自分の最悪の未来が待ってると思うと…本当に疲れる。
イライザ嬢、本当に頑張ったよ。
やっぱりイライザ嬢はスゴイ。




