王宮の青い薔薇の娘とそれぞれの最善 1
帰りの馬車のなかで学園長が言った。
「フローラさん、次の選択授業からは私が教えますね」
優しい笑顔の学園長、爽やか。
「はい、よろしくお願いします」
「…宮廷魔術師長の前では謙遜していたが、「聖女の魔法」は学園長が、この国では第一人者だ。そして、これは極秘だが学園長も「聖女の魔法」を使える、だから安心していいぞ」
「えっ、そうなんですか…」
あれ「聖女の魔法」って数百年前に発動されたきりって歴史の本には書いてあったような…。
「私が発動させたのは「聖女の祈り」だけなんですがね」
ああ、なるほど。まあ、でも学園長が発動させたのは極秘扱いみたいだから教科書には載らないか。
苦笑いの学園長だけど「聖女の祈り」は、どんな病気でも、どんな怪我でも治してしまう魔法。
充分すごいですよ…さすが学園長。
「私が聖女の魔法を使えることは極秘扱いですが、聖女の魔法の種類や効果などを古文書から発見したのは私というのは周知ですので、貴女に教えることに疑問を持つ人はいませんよ。 だから、フローラさんも私が「聖女の魔法」を使えることは内密にお願いします」
「わかりました」
「魔法のテストは、皆と同じ物を受けてもらうが、学園長と俺で協力してサポートするから安心してくれ」
「ま、私も教師の端くれですし、普通の魔法の授業も出来ますから」
学園長もエイブラム先生も笑顔で請け合ってくれた。
学園に着いたのは、ちょうどお昼前の時間だった。
「午後からの授業は受けたいんですが、どうしましょう?」
基本的に午前中は普通の授業で、午後からは選択授業になっていた。
「そうですね、早速、私が授業をしましょうか。 教科書やノートは同じ物を使いますので、それを持って学園長室に来てください。エイブラム先生もそれでいいですか?」
「大丈夫です、フローラしっかりやれよ」
「はい」
◇◇◇◇◇◇◇
学園内の食堂に行くと、アナとミラとベルがいたので一緒に食べた。
アナたちには王宮の様子や、王様の様子、魔術師長はどんなだったかを聞かれた。学生のうちは王宮に呼ばれるという事もめったにないし、王様も魔術師長も遠い存在なので興味があるようだ。
面白おかしく話して、これから選択の授業は学園長に教えてもらう事も説明した。
「わぁ~いいわね~」
ミラが言う。
「私の従妹がこの学園に居た時、学園長は魔法学科の先生だったんだけど、とてもモテたそうよ~」
アナとベルが「私も聞いた事ある~」と、同時に言う。
「学園長になったら、あまり生徒と関わる事ってないですもんね。 フローラ羨ましい」
ミラが笑って言った。
「今でも学園長のお話の時は、熱い視線で見つめてる女子生徒はいるでしょ? 嫉妬されないようにね」
ベルがちょっと心配そうに言う。
「学園長って「聖女の魔法」の功績で伯爵の爵位を頂いたそうよ。そんな才能が有りながら、30歳超えてるとは思えない美貌と容姿だものね、気を付けてよ…」
アナもベルに同調する。
「アナもベルもフローラを脅かさないの。大丈夫よ。フローラが「聖女の盾」を発動して「聖女の魔法」の研究者である学園長に教わるのに変な嫉妬する方がおかしいわよ」
ミラは羨ましいとはいうが、変な嫉妬はしない子なので、きっぱり言い切った。
そして「聖女の盾」は普通にバレてるよね~そうだよね~。
「まあまあ、大丈夫よ」
私は笑顔で言ったが、アナとベルの心配とは違う不安が生まれた…。
大丈夫じゃないかも。
「フローラさん、お帰りなさい。王宮ではどうでした? お話を聞きたいので放課後よろしい?」
後ろから声をかけられ振り向くと、イライザ嬢が令嬢らしく話しかけてきた。
「ええ、もちろん。放課後お話しいたしましょう」
私は笑顔で答えた。
◇◇◇◇◇◇◇
午後の2時間は、基本的に選択授業になっている。なので2時間学園長室で学園長と二人きり…。
イライザ嬢との昨日の会話を思いだす。
『聖女の魔法を使える私をさらって監禁できるって凄くないですか』
自分の言葉だが…今日、同じ「聖女の魔法」を使える相手に出会ってしまった。
宮廷魔術師長に
『クリストファー以上の才能の持ち主は魔術省の中にもいないからな…』
とも言われていた。
「聖女の魔法」の第一人者で、平民出身なのに、一代貴族で伯爵の爵位も手に入れた。
女子生徒の人気もある、プラチナブロンドに深い黒の様な青い瞳の美貌の主
クリストファー・メイヤー学園長
この人以上に隠しキャラ要素のある人っている??




