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王宮の青い薔薇の娘って? 1

私は今年の春、憧れの王立学園に入学した。


これから4年間、私は魔法学科で勉強することになる。


私は、フローラ・ベフトン。

王都から遠い豊かな漁場の港町と平野が広がる豊かな農地を持つ男爵家の娘。

身分は低い方だが、経済的には下手な貴族や豪商より上で、両親は仲睦まじく温かい家庭で何不自由なく育った。


この国では魔力を持つ者は青い目を持つが、その色が深い色であればあるほど魔力は強い。


私も生まれた時から母親譲りの深い青の瞳を持って生まれた。

ある程度の魔力の使い方、魔法の使い方はお母様に教えてもらったが、お母様よりも魔力が上らしい。


きちんと王立学園の魔法学科で教わった方が良いだろうという事で、試験を受け合格し今ここにいる。


久しぶりの学生生活…不安もあるけど、期待も大きい。



実は私は前世の記憶がある。

日本という国で生まれ、今の男爵家の領地に似た港と平野がある場所で生まれ育った。

親兄弟には恵まれなかったが、私には勿体ない優しい夫と結婚し、子供にも恵まれ平凡だが幸せに暮らしていた。

私が40歳の時、夫と娘と行った旅行の帰り、事故にあって全員死んでしまった。


そして、気づくと昔のヨーロッパのようだが、魔法があるこの世界に生まれ変わっていたのだ。


前世の記憶がある私には、夫も娘も一緒に逝けた事は、不幸中の幸いだったかもしれない。

夫も娘も残して死んでいたら苦しくてたまらないが、夫も娘も私のように生まれ変わって、新たな生活をしているかもと思えば立ち直れた。


前世の学生生活は楽しかった。

母親と兄は最悪だったが、友達には恵まれていて困った時に助けてくれたのは身内じゃなく友だった。


今回も、前世の時のような素敵な友達が出来たらいいなと、期待に胸を膨らませた。


この学園は、15歳から18歳まで(早生まれの子は14歳から17歳)の4年間を魔法学科・魔法騎士&騎士学科・政治経済学科・総合学科と専門の学科を選び選択授業を受ける。


クラスは学科に分かれているのではなくごちゃまぜで、言語や歴史地理や数学はクラスで勉強し、専門の学科は各自移動教室で同じ学科の人間が受ける。


私のクラスには、王太子と宰相の双子の兄妹、辺境伯の息子、平民だが魔術の天才、将軍の息子という大物がそろっていた。


6人は全員才能にあふれ、身分も申し分なく、見目麗しい存在だった。


正直、前世の漫画で映画やドラマにもなったF○のようで、前世も今も庶民よりの私には畏れ多くて近寄れない存在だった。


前世の私の特技は、優しい子と友達になれる事だったので、そのスキルを生かし今回も優しい女子生徒3人と友達になり、4人で楽しく穏やかに過ごしていた。

休みの日には、美味しいケーキのお店や雑貨屋さんに行ったり、たわいのないおしゃべり、懐かしくて本当に楽しい時間を過ごしている。


元々勉強は出来た方なので普通の授業も、選択の魔法の授業も未知で楽しく、若いうちしか勉強は出来ないと前世の記憶で痛いほど分かっているので前世よりもガッチリ勉強もし、勉強も魔法もトップの成績で充実した学園生活を楽しんでいた。


もうすぐ、1学年が終わろうという時、同じクラスの宰相の娘イライザ・グーチィに呼び止められた。


「フローラさん、少しお話がしたいのですが宜しいですか?」


放課後、寮に戻る途中だった私はビックリした。基本的に自分より上の身分の方に言われて用事がなければ断ることは出来ない。


「…はい」


と、短く答えた。歩き出したイライザ嬢について行く。

一体、何の用なのだろう…そう思いつつ、令嬢の鏡と言われる人格者なので大丈夫だろうと歩いて行く。


人気がない東屋に着いて座るように(うなが)される。

大きく息を吸うと、イライザ嬢は言った。


「単刀直入に聞きますね。貴女「王宮の青い薔薇の娘」って知ってる?」


「王宮の青い薔薇の娘?ですか? すみません存じ上げません」


正直に答えると、嘘でしょ?と言う目でイライザ嬢は私を見た。


「本当に「王宮の青い薔薇の娘」を知らない?」


知ってるでしょ!!と言う感じで聞かれたので、もう一度しっかり考えた。


「…申し訳ありません、よく考えてみたのですが、そのように呼ばれている方も噂も聞いたことが無いのですが…」


良く分からないが、イライザ嬢の役には立てないと思った。

すると、厳しい顔をしたイライザ嬢が言った。


「でも貴女、転生者でしょ? 日本の東北出身の方よね?」


な、なんで分かったんだろう…テンセイシャと言うのは聞きなれないが、確かに私の前世は日本で東北の生まれだ。


「…どうして、そう思われたか聞いてもよろしいですか?」


「兄が聞いたのよ、貴女が野良猫をなでながら「めんこいめんこい」って言ってたって」


確かに数日前、野良猫が学園の敷地内にいて、周りに誰もいなかったのでつい前世の方言を使ってしまっていた。

驚いているとイライザ嬢がさらに続ける。


「めんこいって言うのは、東北の言葉よね? 実は私も日本からの転生者なの。 だから安心して、貴女の敵じゃないわ」


テンセイシャっていうのは転生した人って事か。

私もイライザ嬢も前世日本人だというのは分かったが、それが何か問題になるだろうか?


「…確かに、私の前世は日本人ですが、それで何か問題でもありますか?敵じゃないって言われても…お互い前世が日本人だったってだけですし問題ないのでは?」


そういうと、イライザ嬢は驚愕(きょうがく)の顔を浮かべた。


「前世、日本人なのに「王宮の青い薔薇の娘」を知らないの??」


「え、日本人は皆、知ってるものなんですか? 何なんですかそれは?」


「…日本人なら…皆…知ってるって訳じゃないんだけど…知ってるって流れかなって…。…ああ、じゃあ貴女ヤバイですよ!!」


「ヤバイ?」


「だって、このままだと貴女はバッドエンドの凌辱監禁エンドですよ!!」






ど、どういう事ーー!?


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