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正統継承者と偽りの世界  作者: 長谷川
第1章 きっかけ
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キレイな人だなぁ・・・

 エメラルドグリーンの長髪、見目麗しく、落ち着いた色合いのワンピースを着た、清楚な女性が部屋に入って来たのです。


 キレイな人だなぁ…………美女って言葉が似合う女性。じいちゃんに『こういう人が美女って言うんだからな!』と、投影魔法で視せてもらったから分かるけど、ホントに実際に見るのは始めて。


「失礼します、お父様。おじ様がお見えになったと聞きましたので、挨拶に参りました」


 その女性は、ワンピースの裾を軽くつまみ上げ、会釈していました。


「よっ、お嬢! 少し見ない間に、ますます美人になって。母親──ナーラに似てきたな!」

「ありがとう御座います、おじ様。お世辞でも嬉しいです。それで失礼ですけど、其方そちらの方は?」

「あっ! ご、ごめんなさい!」


 ボクはソファーから立ち上がり、その女性に向かって、


「ボ、ボクはユキトと申します! そしてコッチの子が、ボクの大切な友達のユチィです!」

「よほしくなほー!」


 って、ユチィ! 頬張り過ぎて言えてないぞ!


「フフフ」


 女性は手を口元に寄せて、笑っていました。


「ごめんなさい。申し遅れました、わたくしゼヴァリ・パライソの娘、エステル・パライソと申します。ユキト様、ユチィ様」


 エステルと名乗ったその女性は、またしてもワンピースの裾を軽くつまみ上げ、会釈してきました。とても上品な挨拶を。


「エステル。今回の護衛はヴライとユキト君がする事になった」

「まぁ、2人だけですの?」

「ああ。だけどユキト君は、ヴライが信頼する程の実力の持ち主だそうだから、心配する事はないよ」

「分かりましたわお父様」

「それでだエステル。ユキト君はキミと同い年だと言うから、少しユキト君と話でもしていなさい。私はヴライと護衛の打ち合わせをするから。出発する時間になったら呼びに行くから」

「分かりましたわ。それではユキト様、ユチィ様、どうぞこちらに」


 と、サクサク話が進んでいますけど、と思ってヴライさんを見ると、手を振って送り出してきました。


 そう言うことでボクは、頬張り過ぎているユチィを肩に乗せて、エステル様の後を付いていきます。



 ボクとユチィはエステル様の後を付いていって、しばらく歩くと、エステル様はとある部屋の扉を開けました。


「どうぞこちらに、ユキト様、ユチィ様」


 そう言いながら、エステル様は中に入り、ボクも続いて入ります。


 中に入ると結構な広さで、衣装棚や化粧台、天幕付きのベッドなどの家具がキレイな状態でありました。


「ユキト様、出来ればよく見ないでもらえると嬉しいのですけど………」

「ご、ごめんなさい。しっかり整った部屋ですからつい………」

「フフフッ。ありがとう御座います。さあ、どうぞこちらにお掛け下さいませ」


 エステル様が丸テーブルと共にあったイスに座るように、手を差し出す仕草をして、ボクはイスに座り、エステル様は対面に座りました。


「それではユキト様、ユチィ様。一体何からお話ししましょうか?」


 エステル様は笑みを浮かべて、ボクをジッと見てくるのです。


「それでしたら、ボクの事はユキトって呼んでくれませんか? その…………様を付けられるのは慣れていなくて…………」

「それならユチィもなのー!」

「分かりましたわ。それなら私の事もエステルと呼んで下さいませ、ユキト君、ユチィちゃん」

「エステルがそれで良ければ」

「エステルー!」


 エステルはまたしても、口元に手を寄せて笑っていました。 ホント、仕草一つ一つが上品だよな、エステルは。


「それでユキト君は、今までどこでどんな暮らしをしていたのです? おじ様が信頼する程の方ですから、出来れば詳しく知りたいですわ」


 ………………エステルって、結構グイグイ質問するタイプなのかな……………?


「ユチィ達はあの山の村からきたのー!」


 ユチィはボクの肩から離れ浮遊して、窓越しにボク達が住んでいた山を小さな手で指差しました。


「…………あの山──ルミッシュ山の近くの村からですか………? 随分離れた所からお越しになったのですね、ユチィちゃん達は」


 どうやら、ユチィはボクとの約束を守ってくれて、エステルに嘘を付いてくれた。


「ボク達、じいちゃんと暮らしていたんだ。だけどじいちゃんが、世界を見て廻ってこいって言ったのがきっかけで、近くの町で冒険者になり、ヴライさんに冒険者とは何か、を教えてもらっている最中なんだ」

「まぁ、そうでしたの。確かにおじ様は、何だかんだとしっかり面倒を見て下さいますからね」


 エステルは、嘘半分、ホントの事半分の話を楽しそうに聞いてくれた。


 で、ボク達は身の回りの事やエステルの事などの話で盛り上がり、ユチィもすっかりエステルに懐いて、ボク達は友達になれた。


※※※

※一方、ユキト達が出て行った後のヴライ達は──


「でだ、ヴライ。あの子は一体何なんだ? まったく隙が無かったぞ?」

「おっ! 流石のお前も気付いたか。腕はなまっていないようだな」

「当たり前だ。忙しくしても、剣を振るう稽古は続けている。周辺の魔物相手なら町の兵士や冒険者達で対処出来るが、あの山──ルミッシュ山の魔物は別格だからな。まともに対処出来るのは、お前と私、後はほんの数人程度だろう」

「……………ああ、その通りだ」


 ヴライは紅茶を啜りながら飲んでいた。


「そして今お前が口にした山───あそこからユキトは来たんだ」

「なにをバカな……………」


 そう口にしたゼヴァリであったが、ヴライはニヤけることもせず、ただただ真剣な表情でゼヴァリを見ている。


「……………ホントのことなんだな?」

「ああ。そして確認もしてきた」

「確認? 何のだ?」

「あの山にはユキトの爺さんが眠っている」


 ヴライは座りながら執務室の外、ルミッシュ山を見ながら喋り出した。


「眠っている……………つまり、亡くなったのか?」

「いや、違う。言葉通り眠っているんだ。爺さんはまだ生きている」

「……………どう言う事だ?」

「ユキトの話だと、爺さんはどうやら呪いを受けたらしい。その呪いは“永遠の眠り”って名前らしいんだ」

「………“永遠の眠り”………」


 そしてヴライは喉を潤す様にまた、紅茶を飲んでいた。


「で、爺さんはその呪いを解呪するために、敢えて呪いに掛かり眠りに付いて、解呪する事を決めて、ユキトにその間、世界を見て廻ってこいって言われたらしいんだ」

「…………ふむ。それまでの間はあの山で生活していたと?」

「ああ、そう言うことだ。正直言って、ユキトは金等級かそれ以上の強さを持っている」

「………………金等級か、それ以上……………………」


 ゼヴァリは呟くしか無かった。


「でだ、ゼヴァリ。オレはしばしユキト達に付き添おうかと思っている。それで申し訳ないが──」

「ああ、分かった。ギルドの方は私が見ておこう。そうする必要があるってのは今の話を聞いて、理解したからな」

「すまねぇな、仕事を増やして」

「気にするな。でも、くれぐれもしっかりしてくれよ」

「ああ、分かっているさ」


 そしてヴライとゼヴァリはしばし話し合ってから2人して、エステルの部屋に向かった。 


お読みいただきありがとう御座います。

誤字、脱字などの報告や評価をして下さると嬉しいです。

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