よろしくお願いします
「……………………」
ヴライさんは、ボクの話を聞いて黙ってしまった。
ユチィは途中から鼻歌を奏でていたけど。
「あの~ヴライさん?」
「あ………あぁすまねぇ。あまりの衝撃的な内容で、すべてを理解出来た訳でもねぇけど、お前が強いってのは理解した」
あぁ、やっぱりか。ヴライさん程の人が理解出来ない程だから、やっぱり異常な生活だったんだ……………。
「だったらやる事は決まった。オシッ! そんじゃ上に戻るぞ!」
「は、はい!」
色々と説明をしてくれないヴライさんの後を追い掛けて、1階に戻ることになった。
「あっ、ヴライさん、どうでしたユキト君の試練は?」
1階に戻ってきて、受付のお姉さんマリーさんが声をかけてきた。
「ああ、文句なしに合格だ。そしてみんな聞け!」
いきなり、ヴライさんが室内に居る全員に聞こえるように、声を張り上げた。
「ここに居るユキトは、今日新たに冒険者の仲間入りをした! ちょっと世間知らずな所があるが、実力は確かだ! もし、お前らの中でコイツに何かすれば、冒険者としての資格を剥奪させる! そしてギルドマスターであるオレが宣言する! コイツのランクは銀等級だ!」
…………………………マスターって言うからには、偉いんだろうけど、銀等級ってなに?
そしてヴライさんが言い終えると、静かになったのですけど?
「「「「「「「おぉぉぉぉぉおっ! スゲぇぇぇぇぇ!!」」」」」」」
いきなり大歓声が上がりビックリしちゃったよ。ユチィもビックリして、ボクのほっぺに抱きついちゃったし。
「そして、そのユキトの大切な友人のユチィだ。もしユチィに何かあれば、全員死ぬ事になるから、気を付けろ!」
と、最後にダメ押しをしていました。
それにしても、全員死ぬ事になるって、それは言い過ぎですよ、ヴライさん。でも、ユチィに何かあればボクは…………。
「って訳で、野郎共! 宴だぁ!」
その合図で、スッゴい騒ぎが起こりだしたのです。
で、ボクはヴライさんから、マリーさんから冒険者に必要な話を聞いてこいと言われて、マリーさんの所に向かいました。
「それにしてもスゴいわねユキト君。まさかその歳で銀等級になるなんて!」
「あ、ありがとう御座います。それで何ですけど、ヴライさんも言っていた銀等級って何です? ヴライさん、そう言うことはマリーさんに聞けって言って、まったく分からないのですけど?」
「……………………はぁ~、まったくあの人ったら。まともに仕事をしたかと思うとこれなんだから………………」
マリーさんはヴライさんの行動に呆れていました。ヴライさんはそんな感じの人なんだと、改めて思った。
「まぁ、いいわ。それじゃあ説明するからイスにでも座って」
「はい」
ボクは受付の所に会ったイスに座り、マリーさんと対面になりました。
ユチィはボクの肩から下りて、ボクとマリーさんの間に座り、マリーさんが出してきたお菓子を食べて、大人しくしている。
「どこから説明しようかしら?……………………そうね、まず冒険者はどう言った事をするのかって事から話しましょうか」
「はい。ボク、じいちゃんから世界を見て廻れって言われてるんです。それが冒険者の仕事なら出来ると聞いたのですけど……………」
「ええ、そうね。確かに冒険者になれば、世界を見て廻る事くらい可能だわ。だけど、生きていく上では厳しい職業なのは確かね」
やっぱりマリーさんも同じ事を言うのか………………。
「まずこの施設はギルドと言って、街の人々が困っている事を請け負うの。兵士の人達は上からの命令でしか動く事しか無いから、町の人々からは重宝されているわ。まぁ、言ってしまえば、何でも屋ね。但し、人の護衛はする事はあっても、人を殺す様な事は請け負わないから安心して(……………だけど例外もあるけどね)」
ん? なんか最後、何か言っていたような? 小さくて聞き取れなかったな。
「そしてギルドで請け負った依頼=クエストをユキト君達、冒険者に頼んで、仕事をしてもらうの。もちろん報酬も出るわ。ただ、報酬にも色々と差があるの」
「例えば、どんなものです?」
「そうねぇ~。薬草採取や街の中だけの荷物運びなど、命に関わりにくいものは、比較的安いわね」
ふむふむ。
「そうすると、命に関わるものほど報酬が高くなるんですか?」
「えぇ、そうなるわ。命に関わるもの、それは魔物討伐や素材集めなど、魔物が関わるものは報酬が高くなるの」
「あっ! だから、冒険者は危険な職業なのか」
「気付いたようね。生活するには、どうしてもお金がかかるから、いつまでも安全なクエストだけを、って訳にはいかないからね」
やっと納得。そうか、そう言うことだったんだ。
「それじゃあ次ね。次はランクの説明ね。ランク=等級はその冒険者の実力を表すの。で、ランクは全部で六つに分かれているわ。まず、冒険者に成り立ての時は、一番下のランク“白”なの」
マリーさんは右指を一本立てて説明をしてくれた。
「その次に“黒”。冒険者として馴れた頃の人達ね。“白”から“黒”に昇格は割と直ぐになる事が多いわ。あっ、あとヴライさんの様なベテラン冒険者に、今回ユキト君がした試験で、一定基準を超えた場合は“黒”のランクに成れるわ。特例もあるんだけど、今はおいとくわね」
ん~? つまりボクがなったのは下の方では無いんだ。しかも、あの試験って、そう言う事だったんだ。
「で、“黒”の次が“青”その次が“赤”ね。そのランク辺りだとベテラン冒険者って言われているの。実力もかなりある者達ね。ちなみに、ここに集まっている人達は“青”と“赤”が多いわ」
まだ出てこない………………あっ!
「そして“赤”の次が“銀”よ。つまりユキト君がなったランクね」
ここの人達より上のランクになってたんだ……………。
「そして“赤”から“銀”に成れるのは更に厳しいの。ギルドの規則で正確な事は教えられないけど、クエストなどを一定数達成する必要があるの」
「その中で、オレと同じランクになったって訳だ」
声がする方を見ると、隣に顔が赤くなって、酒瓶を片手に持っているヴライさんがいました。
「ヴライさん……………」
「言い忘れてた。ユキト、一応銀等級にしたけど、冒険者の事を教える必要があるから、しばらくはオレの下で教えてやるつもりだから」
それだけ言って、ヴライさんは酒を飲み、片手をヒラヒラと振りながら、酒盛りをしているみんなの所に戻って行きました。
「もう、ヴライさんったら。曲がりなりにもこの街で唯一の銀等級なんだから。って、ユキト君も居たのよね、ごめんね」
「気にしないで下さい。ボク自身、まだ実感もしてませんから」
それに、ヴライさんが教えてくれるんだから、心配はないしね。
「そして最後に。“銀”より更に数が少なく、この世界でたった5人しか居ない“金”があります」
「…………“金”ですか?」
「はい。その昇格条件を満たすにはより厳しくしています。まぁ、この街では銀等級が精々ですね。そして最後にクエストの説明を」
「あっ! 更に言い忘れてた。マリー、しばらくお前のとこでユキトの世話をしろな」
またヴライさんは手を振りながら去って行きました。
「えっ、ちょっ、ちょっと、ヴライさん!」
マリーさんも大変だなぁ。
「なんかすみません、マリーさん」
「あっ。いいのいいの、ユキト君は気にしないで。あの人のいきなりの無茶ぶりは今に始まった事じゃないから。えっと、どこまで話したかしら?」
「クエストの説明をする所でしたね」
「ああ、そうだったわね」
マリーさんは手を口元に寄せて、コホンッと咳払いをしました。
「それじゃあ説明するわね。クエストを受けるときは、そこの掲示板に貼ってある依頼書をここの受付まで持って来て、私が受理すれば、その依頼を受ける事が出来るの。まぁ、直接受付で聞いても大丈夫だからね」
マリーさんは、入り口付近にある所を指差して教えてくれた。
「で、その際に注意して欲しいのが、依頼書の右上の所にその依頼を受けられる等級が書かれていて“赤”とかなら、ユキト君のランクでも大丈夫なんだ」
マリーさんは1枚の紙を出してきた。よく見たら、オーク10体の討伐の依頼書であり、ここねって言う様に、指を差して教えてくれた。
確かに“赤”って書かれている。
「ただ、上のランクの人は下のランクの依頼を受けるのは大丈夫なんだけど、あまり下のランクばかりを請けると、下のランクの冒険者が育たなくなるから程々にして貰っているのね。そして“黒”のランクの人は受けられないの。受けられるのは、そのランク例えば、“黒”の人なら一つ上のランクまでしか受けられないの。つまり“青”の依頼書までが“黒”で受けられる範囲って事になるの。と、だいたいこんな所かな」
「ありがとう御座います、マリーさん」
「いいのいいの。本来、試験をする前に説明をしないといけないのだから。順番が前後しただけだから」
ははは。確かにそう言われると色々と納得がいきましたよ。
「それじゃあ説明も終えたし、そろそろアッチに行って料理を食べましょうか。ユチィちゃんもちゃんと紹介しないとね」
「はい」
マリーさんの出したお菓子をもりもり食べていたユチィは、最後のお菓子を食べ終えて、マリーさんにお礼を言って、ボクの肩に戻ってきて、ボク達はヴライさん達が居る場所に向かった。
「あっ、そうだマリーさん」
「どうしたの?」
「これからよろしくお願いします」
「えぇ、こちらこそよろしくね」
マリーさんは片眼を閉じた仕草をしていた。
その後は、みんなと仲良くなり、夜遅くまで騒ぎました。
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