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正統継承者と偽りの世界  作者: 長谷川
第1章 きっかけ
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仕方ないなぁ

「ねぇーユキトー」


 しばらく歩いていると、ユチィが話掛けてきた。


「なに、ユチィ?」

「どうしてさっきは嘘をついたのー?」

「山で暮らしていたって話かい?」

「うんー!」


 やっぱりユチィは、聡い子だな。


「多分だけど、さっきの兵士さんが言っていたのは、ホントの事だと思うんだ」

「ホントの事ー?」

「うん。ボクが小さい頃じいちゃんが言っていたけど、ボク達が暮らしていた山は特殊な所なんだって」

「とくしゅー? なにそれー?」


 ボクがユチィと出会った頃にはそんな事、気にもしなくなったから、忘れていたけど。


「ほら、あの兵士さんも言っていただろ。 凶暴な魔物が棲んでいるって」

「んー? 凶暴なの居たー?」


 まぁ、みんな()()()()()()()()()()、ユチィが来た頃から、ボクの良い遊び相手になっていたからね。


「今じゃ居ないけど、きっとボク達がそれ程気にもしなくなったからだと思うよ」

「そうなのー?」

「だからユチィ。出来れば、ボク達があの山で暮らしていたって事は、内緒にしよう」

「分かったのー! 内緒なのー!」


 そう言ってユチィはまた、鼻歌をして楽しそうにしていた。


「おい、小僧!」


 突然、野太い声を掛けられた。


 その声がした後ろの方を向くとそこには、長身で、髪がないツルッとした頭に、厳つい顔立ち、スゴくムキムキの筋肉の背格好をして、服が張り裂けそうになっている、見分けの付かない同じ格好をした人が、3人居ました。


「小僧! 随分珍しいモノを連れているじゃ無いか!」


 と、辺りを見渡すと、それらしいモノは見当たらないのですけど?


「オジサンは、何を言っているんです?」

「オメェの肩に乗っているモノだよ!」


 どうやらユチィの事を言っている事だった。しかもこの人、ユチィをモノ扱いしてきている。


 ユチィは気にすること無く、鼻歌を続けているけど…………


「この子が何か?」

「ちょっとオレ達に貸してくれねぇか!」

「…………オジサンは、何を言っているんですか? 見ず知らずの人に、ボクの大切な友達を渡す分けないでしょ」

「そう言わずに貸してくれねぇか! 珍しいモノだから、じっくり見てみたいんだよ!」


 この人達、声は微妙に違うだけで言っている事は一緒。


 しかも、ニタニタとした笑みを浮かべているし。


「お断りします!」

「ちっ! ガキが! 大人しくソレを渡せば痛いめを見ずに済んだものを!」

「やっちまおうぜ!」

「妖精なんて珍しいからな、高く売れるぜ! しかもメスだからな、余計に高く売れるんじゃないか!」


 それが目的だった様だ、この人達は。しかも、臨戦態勢になっている。


「やれ!」

「「おう!!」」


 仕方ないなぁ。


「ユチィ、この手紙を持って離れていて」

「わかったのー!」


 手紙を受け取ったユチィは、羽根をはばたかせ、ボクの後ろで浮遊してくれた。


 その間に、間合いを詰めてきた2人が、ボクを取り押さえる様な感じでいた。


 ボクはその場から、2人の片方に向かって、距離を詰め、


「っ!?」


 ボクが近寄ったのが意外というように、驚いている表情をしている隙に、お腹目掛けて、右肘鉄を喰らわした。


「ゴホッ!」


 ボクは離れ、肘鉄を喰らわした男は、苦しんでその場にうずくまってしまった。


「この、クソガキィ!!」


 もう1人が右手を握って拳を作り、ボクに殴りかかって来ていた。


 その男のパンチを左手で受け、そのままその男の力を利用し、男の足を払い込み、転ばせた。


「ガハッ!!」


 そしてボクは、手の平の汚れを落とす様に、両手をパンパンとした。


「それでオジサン。まだやるの?」


 最後の1人は身動きもせずに、ずっと見ていたから。


「や、やらねぇよ! す、すまん! オ、オレ達が悪かった! み、見逃してはくれねぇか!」

「まぁ、ボク達に関わらないならいいよ?」

「あ、あぁ、もう、お前達に関わらねぇ! 約束するよ!」

「そう言う事なら、さっさと連れ帰って。一応、急所は外したけど、手当てはした方がいいよ」

「わ、分かった!」


 そう言って、転ばせた男を叩き起こし、2人して肘鉄を喰らわした男を両脇から支えながら、ボク達がこれから進む方向の反対側に歩いていった。


「ふぅ~」

「お疲れ様なのーユキトー」


 ユチィは労ってくれながら、ユチィの指定席、ボクの肩に座りこんで、手紙を受け取った。


「何ともないよね?」

「大丈夫なのー、ユキトがしっかり守ってくれるのー」

「はは、ならよかったよ」


 ふと、周囲を見ると、それなり通行人達がポカーンと口を開けて、こちらを見ていたのです。


「────す、すげぇ! 兄ちゃん、すげぇな!」

「格好良かったわよ!」

「大人しそうな顔をして大したもんだ!」


 などなど、いきなり声を掛けられてしまった。


 ボクは苦笑いをしつつ、恥ずかしさのあまりその場から走り出した。


※※※


 しばらく走っていると、ライアンさんが言っていた通りの建物を発見した。


 レンガ造りの二階建て、そしてその建物の脇には木造平屋の建物がくっついている造り。


「ユキトー、ここー?」

「そうみたい」


 そして扉を開けて中に入った。


 中に入れると、結構広い造りになっていた。と、言うより、木造平屋の方と繋がっているから、そういう造りをしているのだと分かった。


 そして木造の方には、イスやテーブルが何台かあり、そこで食事をしていたり、コップを片手に話し合いをしていたりする人達が居て、入ってきたボク達の方を見ては、直ぐに視線を戻していた。


 ボクの正面には、何人かの列が出来ていたから、ボクもそこに並んだ。


 そしてボクの順番になると、カウンター(板の台)を挟んだ向かい側に、青と白を基調とした服装の女性が座って居たのです。


「ようこそ。あら、見ない顔ね。本日はどう言った御用でしょうか?」


 女性は言い慣れた感じでした。


「あの、冒険者になりたいのですけど…………」

「冒険者ですね。ちなみに歳はいくつですか?」

「15です」

「15歳…………それなら大丈夫ね」


 大丈夫? 冒険者になるには歳が関係しているの? それにしても、ユチィは建物に入った時から、鼻歌も辞めて大人しくしてくれている。 


「そしたら、書き物があるのだけど、キミは文字は書けるかな?」

「はい、大丈夫です」

「それなら、この書類に必要な事を書いて欲しいの。って、お昼時だから、ここで書いちゃっていいから」


 どうやら、ボクの後ろに誰も居ないのを確認したみたい。


 で、女性の人から渡された紙に目を通した。


「あっ!そうだ。お姉さん、ここにヴライさんって人居ますか? 居たらこの手紙を渡して欲しいのですけど……………」


 そう言った途端、お姉さんは視線を食事などをしていた方に向けて、


「……………居るには居るけど…………」


 どうやらあの中に、ヴライさんが居るみたい。


「その手紙は?」

「この街の門番をしているライアンさんが、ヴライさん宛にって」

「…………分かったわ。それじゃあその手紙を渡してくるから、キミはその書類を書いちゃって」

「はい」


 お姉さんは手紙を受け取って、その場から去って行った。


 そしてボクは、そこに書かれていた事を、その台の傍らにあった羽ペンで書いていった。


※※※


「───お待たせ。どう書けた?」


 少ししてからお姉さんが戻って来て、またイスに座ってました。


「─────はい、今書き終わりました」

「それじゃあ、確認するからね」


 お姉さんは手を差し出して紙を受け取り、ボクが書いていた紙を見ていた。


「名前は…………ユキト君ね。 年齢は15歳───」「この坊主か?」


 と、いきなりボクの脇から、お姉さんが持っていた紙を取り上げる人物がいた。


「ちょっとヴライさん! 今、私が確認しているのですけど!」

「細けぇ事は気にすんなよ。せっかくの美人が台無しだぞ」

「そう思っているなら、ちゃんと仕事をして下さいよ!」

「へいへい。そしたら、ちゃんと仕事をしますかね」


 そう言ってその人は、お姉さんから取り上げた紙に目を向けていた。


 お姉さんとやり取りしていたその人は、ボクより背が高く、体格も引き締まっていて、髪は残念ながらなくツルッとして、顔は厳つく整った髭を生やした、壮年の男性だった。


「───ユキト、オレに付いてこい」


 どうやら紙に書かれていたのを確認し終えたみたい。


「えっと、貴方は?」

「あぁ? お前が捜していたヴライだよ。分かったんなら、オレが直々に試験をしてやるから、付いてきな」

「は、はい」


 どうやら、本人に会えた様だ。

お読みいただきありがとう御座います。

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