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久しぶりの共同戦線

おれたちが玉座の間に行くとそこにいたのは現時点で騎士団長代理を努めているグレンだった。


「あれ、グレンさん、なんでこんなところに?」


おれはここにいるはずのない人物を目の前にして当然の疑問を投げかける。グレンは騎士団長代理という立場であり、今はこの国を守るための戦略の要である。いくら王の護衛が重要だからといって、こんなところに総指揮権を持つグレンがいるなんてありえないのだ。


状況がわからない王はおれたちとグレンを交互に見る。


「どういうことだ?」


「つまり、このグレンさんは偽物ってことよ!」


アリスは言葉と同時に無詠唱で氷の礫をグレンに向かって飛ばす。どうやら、アリスも怪しいと思っていたようだ。そもそも、アーガンス王を守るために信用のおける人物に護衛させろといったのはグレンで、そのために娘のアリスを向かわせたのに、その指揮をした張本人のグレンがこの場にいるのはどう考えてもおかしいのだ。


「だから連れてこられる前に殺せばいいと言ったのに。」


そう言いながら、グレンに扮していた何かはまるで水をかけた泥人形のようにグニャグニャとその場で緑色に色と形を変えながらアリスの放った氷の礫を躱す。突然の魔物の登場に王と王妃は驚いていた。


「お二人は部屋の角にいてください!」


おれは2人に声をかけると2人と正体を現した魔物の間に位置取る。


「こうやって2人だけで戦うのは初めて会った時依頼ね!あの時みたいにヘマしないでね!」


「あぁ!アリスこそ!」


おれとアリスは距離を少し置いて魔物に対峙して剣を抜く。


早速おれは斬れ味味付与をした剣でグニャグニャのそいつに斬りかかるが、残念ながら半分液体のようなこいつには打撃、斬撃の類は効かないようだ。おれの剣戟はスルリとそいつの体をすり抜け、すぐさま元に戻ってしまう。


斬れないなら、と、アリスが今度は氷の礫を再び飛ばすが今度は器用に形を変えて氷の礫を避ける。なるほど、やっぱり氷は嫌らしいな。


「アリス、氷魔法は行けそうだよ!」


「そんなこと、言われなくてもわかってるわよ!」


アリスは胸の前で手を組み、その手に魔素をこめ始める。すると相手はどうやらアリスを驚異だと感じたらしく、風魔法で作った刃をアリスに向かって飛ばす。


おれは咄嗟にアリスと飛んでくる風の刃の間に体を入れ込み、飛んでくる風魔法に対し、斬れ味付与の斬撃を合わせる。すると緑色の風の刃とおれの赤い斬撃がぶつかり、その衝撃箇所を中心として小さな爆発が起きる。


おれは咄嗟に爆風からアリスを守るためにおれたちを囲うように真上に吹き出す風の壁を作り出し、爆風をやり過ごす。そして、その間にアリスの準備が整ったようだ。


「氷よ!」


そうアリスが叫び、緑色のソイツを囲む白い霧が発生するとそこから数多の氷の槍が中心に向かって一斉放射される。


おれはその射程のギリギリ外の位置で相手の動きを確認するが、動きは特になさそうだ。これで終わってくれるとよいのだが、やはりそうはいかないらしい。


白い霧がなくなり、そこから姿を表したのはこれまでの緑色から色を変え薄水色になった姿だった。おれはその姿を見ると、確認のため氷の礫をそいつに放つが予想通り今度は避けることすらしない。氷の礫はソイツの体を突き抜け、通り抜けるが、すぐさま元に戻ってしまう。


そして、お返しとばかりに同じような氷の礫をおれたちに向かって飛ばしてくる。おれはその礫を剣で叩き落とすが、さて、どうしたものか。


「まぁ姿をあれだけ器用に変えれるんだから、属性くらい変えられても不思議ではないよな。」


「ちょっと、こんなやつどうやってやっつけるのよ!?」


次々と迫りくる氷の礫を避けながらおれは対策を考える。


おそらく、アリスの最初の礫は避けて、2回目の氷の槍の一斉放射で初めて属性を変えたことから、おそらく属性を変えるのは何かしらのデメリット、例えば魔力の減少などがあるのだろう。だから確実にあたるソイツの苦手属性の魔法を次々とあてればいつかは倒せるかもしれない。しかし、この方法を取ると時間がかかる可能性があるし、おれの魔素量との勝負でもある。これまでの戦いで散々魔素を使いまくってきたおれの魔素の残りは体感的にはあと半分くらい。もちろん、氷魔法と風魔法はアリスも使えるが、アリスもそこまで魔素に余裕があるとはいえないだろう。その点ならこの状況で不確実な賭けに出るのはあまり得策とは言えない。となれば、できるのはあれか。


おれたちが攻め手にかけるのを好機とみたのか、そいつはガンガン氷の礫を放ってくる。それだけではない。飛んでくる礫に気を取られていると床から氷の柱が突如突き出てきたりする。終いには、そいつの魔力が高まっていると思ったら、おれたちの周りが真っ白になっていく。これ、アリスが普段使ってるやつだ。


「にゃろう!」


おれは急いでアリスの側により、その腰を抱き寄せる。アリスは突然のことに驚いているが、そんなことにかまってる余裕はない。おれは一気に魔素を高め、詠唱した。


「炎よ!」


すると、おれの詠唱と同時におれたちを取り囲むように炎の壁を作り出し、周囲にその炎を解き放つ。


その炎の勢いで白い霧がなくなると、なんとか氷の槍は出現しなかったが、やはりそれも見越されていたのか、再び次々と氷の礫が飛んでくる。


「ったく、キリがないな。」


おれはその礫の対処にいい加減嫌気が指してきたから、一気に斬れ味付与の斬撃を飛ばし、氷の礫を吹き飛ばす。攻められるのはこっちが攻めてないからだ。よし、一気にケリをつけよう。


「アリス、あいつを風魔法で何とかして浮かせないか?」


おれはすぐそばにいるアリスに耳打ちする。


「それくらいならできると思うけど、何かいい手はあるの?」


「あぁ、ちょっと試したいことがある。合図をしたらお願い!」


おれはそう言うとアリスから離れ、迫りくる氷の礫を剣で捌きながら魔素が溜める。よし、そろそろいけそうだ。


「アリス!」


おれの呼びかけに合わせ、詠唱が聞こえる。


「風よ!」


アリスの詠唱とともに、そいつを中心に竜巻が発生し、フワリとその体が持ち上がる。


「後は頼んだわ!」


アリスの言葉に答えるようにおれは右手を前に出し、この日何度めかの炎魔法を詠唱する。


「炎よ!」


その言葉にあわせて宙に浮いたそいつの周りを炎の壁が囲む。おれが突き出した掌を握ると、炎の壁はそいつに向かってどんどん小さくなっていく。


「ショウ、これじゃあまた属性を変えられてしのがれるわよ!」


「わかってるよ!」


アリスの言う通り、炎の壁はそいつを包み込んでいるものの今以上に小さくなることはなかった。


「アリス、最後だ!氷魔法をあの炎の中に!」


アリスは疑問を浮かべているような顔をしていたが、返事の代わりに詠唱が聞こえる。


「氷よ!」


すると、見た目には氷の発生は見えないが、炎の中でボゴンとこもった破裂音がする。その破裂音と同時に、一瞬火球は振動したように見えるが、次の瞬間にはスルスルと萎んで消えていった。


「アリス、ありがとう。おかげでなんとか倒すことができたよ。」


おれはそう言うと魔素の使い過ぎのせいで立ちくらみ、その場に座り込んでしまう。


「ちょ、ちょっと、大丈夫?」


アリスは慌てておれにかけより、おれの顔を見る。その顔は本当に心配そうに見てくれていた。思わずおれは何も言わずにアリスの顔に見惚れてしまっていたら、どうやら勘違いさせてしまったようだ。


「ショウ?」


アリスが少し慌てるのを見ておれはようやく正気にかえる。


「あ、あぁ、大丈夫、ごめん。ちょっと魔素を使い過ぎただけだよ。でも、きっとすぐ戻るよ。」


「そう、ならよかったわ。それにしても、何が起きたの?」


そう、なぜ属性変更できる魔物があの中で死んだのか。それは、あの火球の中でやつをバラバラにしたから。高熱の炎の壁に囲まれた中に氷を入れると、一気に氷が溶け水になり、さらには水蒸気になる。水蒸気は水や比べて同じ量で体積が1700倍と格段と体積が大きいため、それをあの火球に留めた場合はものすごい圧力が中でかかるわけである。その圧力をまともに受けたらいくら物理攻撃が効かないと言っても消滅せざるを得ないだろう。それに、水と火の両属性による攻撃、という点ももう1つポイントである。おれがこれを簡単に説明するが、どうやらあまり理解できなかったようだ。


「まぁともかく、なんだか物凄いことが起きたってことね。」


「ま、まぁそんなとこかな。さぁ、んじゃ王と妃を安全なところに連れて行こっか。」


こうしておれたちは無事、秘密の通路まで連れていき、その後は特に何事もなく2人を守ることができた。

ショウの凄まじい攻撃力の前には敵を圧倒していますね。この調子で街の外もなんとかできるとよいですよね!

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新作、始めました! 不遇な扱いを受けていた少年コウが、その境遇に隠された力を使いこなし、内面と向き合いながら強くなっていく冒険譚です! 是非、お読み頂けると嬉しいです!

忌み子のボクが、“気”と自分を受け入れたら、いつの間にか世界の命運を握ってました-

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