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秘密を明かす

翌日、おれたち3人と1匹はクエストに向かうため馬に乗りアーガンス城を出ると、トメリアの街で一泊し、さらに東へと進む。アーガンス城を出発するときに、何故猫なんか連れてくの!?とアリスは最初は否定的だったが、その後のココのデレデレ戦略により、見事にアリスは陥落されていた。


「ココ、可愛いわね、ショウなんかのとこじゃなくて、うちにこない?フカフカのベッドがあるわよ?」


アリスの誘いにその場はにゃあにゃあ、とだけ答えているように聞こえるが、その内容、実は「魔素を供給できない奴に用はないにゃ。」なんてことを言っているのはここだけの話だ。


そんな珍道中の休憩中、幾度か魔物に襲われる。木の形をした魔物や大きなハエ人間、地面に同化したようなやつなど、様々だったがやはりアリスがいると戦いの安定感が違った。おれたちが攻撃を仕掛ける前に、アリスの攻撃で先制できるし、相手が遠距離攻撃が得意の場合なんかもアリスの攻撃が冴え渡っていた。


「アリスがいるとやっぱりだいぶ楽だね。」


「えぇ、やっぱり遠距離攻撃が1人いると全然違います。それに、アリスさんの腕前も素晴らしいですしね。」


おれたち2人でアリスを素直に褒めると少し照れ臭そうにふん、とお決まりのように腕を組んで強がる。


「わ、わたしの力があればこんなもんよ!」


こうしておれたちは順調にアーガンス城を出て翌日の昼前にはトメリアの東にある目的地のデザートドラゴンがいる砂地地帯に辿り着く。


「さぁて、ドラゴンちゃん、出ておいで。」


そんなことを言ってると、遠くからブゥゥゥンと小型のバイクのような音をした羽音が聞こえてくる。


「アリス!」


「わかってるわよ!」


アリスはその羽音がした瞬間に、既に魔素を溜め始めていた。


デザートドラゴンはドラゴンと言いながらイメージは蚊が巨大化したようなイメージで、そこそこの数で群れて行動する上に空を飛びながら火のブレスを吐いてくるので近距離戦に持ち込まれるとなかなか厄介なのである。しかし、今日はアリスと一緒だから非常に心強い。デザートドラゴンの群れが視野に入ると、アリスは溜めた魔素で魔法を行使し、群れとおれたちの間に白い霧が立ち込める。そして、群れがその霧に差し掛かるとアリスは魔法を発動させる。


「氷よ!」


すると、霧の中に無数の氷の矢が放たれ、次々とデザートドラゴンが地上に落下する。アリスが選抜試験でラキカが扮したアキラに放った魔法だ。あのときも凄い魔法だと思っていたがまさかここまで一方的だとは思いもしなかった。やはり対多での威力は半端ない。


辛うじてアリスの魔法を避けたデザートドラゴンも、寒さの影響で動きが鈍くなっている。


「あとは任せたわ!」


アリスの声と同時におれとゼラスは生き残りを殲滅し、デザートドラゴンは1匹残らず青白い光の粒となる。おれたちは消えた後に残ったデザートドラゴンの魔石を回収しながら、アリスの元へ集まる。アリスの顔色をみると、アキラとの試合の時同様、青白い顔をしていた。


「アリス、大丈夫か?」


おれは顔を覗き込み声をかける。


「これくらいは全然平気よ。」


アリスは強がってみせるが、誰がどう見ても強がりだとわかる。ゼラスも強がりだとわかったらしく、結局おれたちはここで少し休むことにした。


休憩しながら、おれたちはこれからの計画を立てる。アリスには強い剣を探すために近くの洞窟に行くことを伝えており、その日のうちにその洞窟の手前まで移動し、夜を明かした上で洞窟に潜ることを決める。


しばらく休むと顔色が良くなったアリスはいつもの調子に戻る。


「強い剣って一体なんなのよ?それに、あんた今以上にその歳で強くなって何を目指してるの?」


「たしかに、洞窟のことも剣のこともあまり詳しいことは聞いてないですが、どんなところなんですか?」


ゼラスもアリスも興味津々のようだ。おれは事前にココに聞いていた情報を、ラキカに聞いたことにして2人に説明する。


「師匠から聞いた話だからどこまで本当かわからないんだけど、そこの洞窟、ある魔素の波長を持った人しかあげられない扉があるらしくて、その波長がおれの持ってる魔素の波長とよく似てるんだってさ。」


「なるほど、そしてその扉の奥には。」


ゼラスの言葉におれら頷く。


「そう、扉を開けた人間の魔素に反応する魔剣があるんだってさ。」


「ふぅーん、そんな剣、聞いたことないけど本当にあるのかしら?」


アリスの疑問もごもっとも。もしおれが何も知らなかったら、アリスと同じことを言っているだろう。だけど、ここは最もらしい嘘を突き通すしかない。


「それが、どうやらおれの家系を遡ると、その剣が実在してて、さらにそれを使えたって言い伝えが残ってるらしくてさ。」


アリスがジト目でこっちを見ている気がするが気にしたらダメだ。おれはアリスの眼力に負けないように説明を続ける。


「それに、さっき言った扉の前には守護者がいるらしいんだけど、そいつとの戦いが結構良い訓練になるらしくてさ。」


おれのその発言に、普段はポーカーフェイスのゼラスが神妙な顔つきをしていた。


「扉を守る守護者で、しかも良い訓練になるって、きっと只者じゃないですよね。」


それは正直おれも不安だった。何せあのディーナが生み出した守護者だ。とんでもない壊れ性能である可能性すらある。だが、ここでおれが不安な顔をしたら話がお流れになる可能性すらある。ここは嘘の一点突破だ。


「大丈夫。そのためにおれはそいつを倒す技を練習してるから、きっとなんとかなるよ。それに、さっきあれだけ強かったアリスがいてくれるからさ。」


どうやらおれの作戦は成功したようでアリスは満更でもない顔をしてその気になる。


「まぁ、ダメなら最悪逃げれば良いわ!ショウが強くなれるなら行ってみましょう!」


ゼラスはやはり鋭く、まだ不安そうな顔をしているが賛成多数で決定だ。これは民主主義であって数の暴力ではない。


「よーし、そうと決まれば行きますかー!」


休んでる間、おれの足の上で魔素を採取しながらココが「デタラメばっかりいって、キミは全然信用できないにゃ。」とか言ってるが放っておくことにした。こいつ、人様の魔素を貪り吸っておいて、なんてことを言うんだか。


◇◇


翌朝、おれたちは目的の洞窟の中を進めていた。ここは洞窟というよりも、山全体の起伏が激しく、谷と谷を縫いながら進んだ先に短い洞穴があり、その奥に目的の扉があるそうだ。


奥へと進む間に度々魔物に襲われる。山岳地帯のためやはり鳥や虎、熊などが魔物化したらこうなんだろうなぁと言った魔物が多かった。アリスは昨日の疲れが少し残っているようであまり顔色が良くなかったため極力魔法は使わずに剣で戦ってもらっていた。実はアリスから申し出があって、こういった機会もよくあるから、剣術の稽古もしておきたいのだそうだ。ここくらいの魔物であれば、特に危険もないので問題ないだろう。


おれたちは目的の洞窟まであと半分くらいの位置で休んでいると、アリスが口を開く。


「私自身が剣で戦ってみてわかったけど、ショウ、あんたの剣術はやっぱり凄いわね。」


まさかアリスの口からそんなことを言われるとは思いもしていなかった。


「そ、そう?」


「あんたが前に私に稽古をつけてた時に言ってたわよね。攻撃の繋ぎと剣速、どちらもまだまだ私は足りないって。あの時はどれほだの違いがあるのか全くわからなかったけど、今回、同じ魔物と戦った時の私とあんたの戦い方を比べて見てつくづくそれを思い知らされたわ。」


ゼラスはアリスに同意する。


「ぼくから見てもショウくんはちょっと異常です。正直、ショウくんくらいの年齢だとどれだけセンスがあっても、身体的にも精神的にも未熟な子が多いんです。でも、身体能力も大人並みにあるし、精神的にも落ち着いてるんですよね。一体どんな修行や経験をしたらこうなるのか、とても疑問です。」


多分身体面の理由は森での身体強化による修行によるものだとおれは思っている。精神面は言わずもがな、であるが。魔法の話、アリスは知ってるけどゼラスにもそろそろ言っておいた方が良いかな。そしておれは決意する。


「ゼラス、ごめん、おれ謝らないといけない事がある。」


この流れから謝られるなんてゼラスは当然予想しているわけがなく、首を傾げておれをみる。


「おれ、今まで黙ってたけど、実は2種類の魔法が使えるんだ。」


「え?魔法、ですか?そう、なんですね。でも、それとショウくんの実力に関係があるんですか?だって、戦う時には魔法を使ってませんよね?」


おれは頷き説明する。


「まず、おれの身体能力の秘密はこれだ。」


そう言うと、おれは久しぶりに身体強化を発動させ、青白い光がおれの体を覆う。


「その魔法、ぼくと同じじゃないですか。」


「うん、だから、初めて戦った時はすごい驚いた。ゼラスはわかると思うけど、この魔法、使った時間が長いと使用後に全身が痛くならない?」


ゼラスは頷く。


「実はこれ、筋肉が痛んでる証拠らしいんだけど、筋肉は痛んで治る時にさらに強くなるらしいんだよね。だから、おれはこの魔法で筋肉を短期的に痛みつけて、それを回復薬で回復してっていうのを1日に何度も繰り返して無理やり身体能力を向上させたんだ。」


「そ、そんな無茶苦茶な。」


ゼラスは思わず絶句する。どうやら、この世界では筋肉の超回復という現象は知られていないらしい。


「だからおれの身体能力は同年代よりもベースの時点で上にあるんだと思う。」


「なるほど、よくわかりました。そう考えるとショウくんはこれからまだまだ身長も伸びるだろうから身体能力はもっともっと向上するってことですね、きっと。」


ゼラスは少し羨ましそうにおれを眺める。おれは頷き、そして剣を構える。


「そして、もう1つの魔法が斬れ味付与の魔法。」


おれが剣に魔法をかけると刀身が赤い光で包まれる。おれはそのまま、無造作にその剣を岩に向かって斜めに振り降ろすと剣が当たった部分がズルリとずれる。


「な、何よこれ。」


アリスは一度おれがイータを斬ったときに見ていたはずだが、まさか岩が斬れるとは思っていなかったようだ。


「まぁ、最初からこの力を使っちゃうと剣の技術が身につかないって師匠に言われてずっと使ってこなかったんだけど、ピンチの時はもしかしたら使うかもしれないから、その時は驚かないでね。」


おれは可愛らしく笑いながら言うが2人は呆気にとられていた。


「それだけとんでもない力があるのに更に強くなりたいなんて、頭おかしいんじゃないの?」


アリスのその言葉におれは笑うことしかできなかった。さぁ、気を取り直して守護者退治にいこう。

遂に秘密を明かしちゃいましたね。それだけこの2人をショウが信用している、ということでしょう。でもやっぱり少し白い目で見られているので、ここまで使わなかったのは正解だったかもしれませんね。


さて、いよいよダンジョンも深くまで来たようです。お目当てのディーナの剣まであと少しです!

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新作、始めました! 不遇な扱いを受けていた少年コウが、その境遇に隠された力を使いこなし、内面と向き合いながら強くなっていく冒険譚です! 是非、お読み頂けると嬉しいです!

忌み子のボクが、“気”と自分を受け入れたら、いつの間にか世界の命運を握ってました-

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