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姉、登場

グレンに連れられて城内を回ってるといろんな人に声をかけられる。


「あら、グレンさん、そんな可愛らしい子たちを連れて見回りかい?」


「グレン様、お久しぶりです。自ら見回りなんて珍しいですね。」


「グレンさん久しぶりですわね。よかったら、今晩、ムゴゴゴ。」


グレンは慌ててどこぞの貴婦人の口を抑え、必死にその先を言わせまいとしている。うん、このグレン、なかなかの人気者のようである。


「ゴ、ゴホン。王宮の色んな人に顔を知ってもらえていると言うのは大切なことだからな!」


確かに、タリスも色んな情報を仕入れるのに王宮の給仕の人や従者から聞いたと言ってたな。その意味ではグレンの言ってる事は間違いではない。


こうして、おれたちはグレンに連れられて城を一周すると、城の一角でおれたちは集まる。


「まぁこれで一通り城の外周は回ることができただろう。基本的には今のルートをそれぞれ回っていれば良い。何かあれば、これを打ち上げてくれ。」


そう言うと、おれたちは片手大の筒状のものを受け取る。


「これは、、信号弾ですか?」


ゼラスがあっちこっちから見るとグレンは頷く。


「これを使う事はないと思うが、まぁ先日のこともある。念には念を、と言うことだ。」


おれたちは頷くと、グレンは後は任せた、と言ってどこかへ行ってしまった。きっと、さっきの口を抑えた貴婦人のところに行ったのではないだろうか。


そんなグレンを横目におれたちは新任らしく着々と任務をこなす。


「んじゃぼくはこっちから回るからショウくんはこっちから回ってください。」


おれは頷くとゼラスが歩き始めた方向と反対の方向に向かって歩き出す。


「さぁて、んじゃ見回り行ってみますか!」


おれは慣れない場所に少し緊張しながらも、初めての騎士らしい仕事に少しウキウキしながら城を回る。


しかし、そんな気持ちも城を一周もすればなくなった。


「あぁ、平和だなぁ。」


おれは2周目も中盤に差し掛かると、中庭から覗く空を見上げて呟く。


「あ、そいえば城で思い出したけど、おれアリスに剣術教えないといけなかったんだな。今頃アリスは何してるんだろ?」


きっと、この思考がこの状況を生んだのだろう。曲がり角を曲がった先に、見慣れた金色のウェーブのかかった後ろ姿が中庭で剣を振るっていた。


「あ、アリス!」


おれが名前を呼ぶとその声に気がつき、こちらを振り返る。


「あれ、ショウ、こんなところで何してるの?」


うん、至極ごもっともなご質問。


「今日は騎士の仕事で城内の見回りなんだ。アリスはいつもここで剣を振ってるの?」


アリスはその額に輝く汗を拭いながらこちらを振り返る。汗で首元に貼り付いた髪におれは思わずドキッとしてしまう。


「ええ、騎士団が稽古を付けられない日はこうやってね。最近、あんなことがあったし、騎士団も私の相手なんかしてられないだろうしね。」


その顔には少し寂しさが見え隠れしていた。そっか、アリスからしてみれば身内が殺されたんだもんな。というかそいえばマーナから見てもアーガンス王ってお父さんだよな?と言うことは、もしかしてアリスはおれの叔母にあたるのか?おれは恐る恐るアリスに聞いてみる。


「アーガンス王って、アリスのお父さんだったの?」


すると首を振るアリス。


「アーガンス王は私のお爺ちゃん。第四王子が私のお父さんよ。」


あ、よかった。流石にアリスが叔母ってことはないらしい。あれ?ちょと待てよ、タリスたちの話によると、第一王女は病気で、第二王女は死んだことになってて、第三王子もタリスに殺されたってことは。


「もしかして、王位継承はアリスのお父さんが一番有力ってこと?」


アリスは体の横で両手を上にあげてさぁ?とポーズを取っていた。


「正直、よくわからないわ。上から順に数えたらそうかもしれないけど、王様ってそうやって本来決めるものではないわよね?父は、子供の私が言うのも変なんだけど平凡なのよ。本人もあんまり王になりたいって気持ちがないらしいし。」


そんなことなら、いっそのこと王政を辞めて民主制にしたら良いのに、とか思うが、こんな有事の際にやることではないな。そんなことを考えていると、おれの後ろから見知らぬ女性がアリスを見つけて声をかける。


「あら、アリス、今日も剣の稽古?そんなに稽古ばかりしてるとドレスが似合わなくなってよ?」


その声に振り向いたおれは、思わず全身に衝撃が走る。


「あら、今日はお友達もいましたの?初めまして、アリスの姉のセシルですわ。」


おれはその完成された美と佇まいに思わず惚けてしまい反応が遅れる。ベージュをベースに花の刺繍が散りばめられたドレスはおそらくアリスより少し上くらいのセシルの年齢をより落ち着かせて見せた。そして、アリスの姉と言うだけあってアリスの髪と同じ金色のウェーブがかかった髪をしていたが、セシルは髪を、後ろでポニーテールに纏めていた。


「あ、は、初めまして。アリス様とは選抜試験で一緒に回らせていただいたショウと申します。」


おれは思わずお辞儀をしながら上目遣いでセシルのことを見てしまう。そんな様子を見てアリスはいささか不満げだった。


「何よ、お姉ちゃんが来たからって急に畏っちゃって。」


それを聞いたセシルは口元に手を当てふふっと笑うとアリスの方に向く。


「あらあら、わたくし、お邪魔だったかしら?ショウくん、でしたね。いつも妹から話を聞いてますよ。」


こちらに顔を向けたセシルは天使のような微笑みでおれを見ていた。


「い、いつもアリス様とは懇意にさせて頂いています。」


「アリスも言ってるけど、そんな畏まらなくていいのよ?その方が私たちも嬉しいわ。気の強い妹だけど、仲良くしてあげて下さいね。」


おれは頷く。


「はい、こちらこそよろしくお願い致します。」


おれがお辞儀をするのを見てセシルは嬉しそうにアリスの方を見る。


「よかったわね、アリス。それでは、わたくしはそろそろ行かせて頂きますわ。それではショウくん、またどこかでお会いしましょう。」


セシルはそう言うとおれに向かってドレスの端を持って広げ優雅にお辞儀をする。おれもそれに合わせてもう一度セシルにお辞儀をするとセシルはにっこりと微笑みくるりと踵を返しそのポニーテールがユラユラと揺らしながら廊下の向こうへ歩いて行った。や、やばい、おれは猫ではないがあのユラユラのポニーテール、おれの心を鷲掴みだ。おれがその後ろ姿に惚けているとアリスの肘がおれを突く。


「ショウ、あんたまさかお姉ちゃんに惚れたの?あんたって、結構歳上が好きなのね。」


アリスの言葉に我に返ったおれは慌てて首を振って否定する。


「いやいや、そんなんじゃないよ!ただ、綺麗な人だなぁって思っただけだよ。」


アリスはおれの答えに不満そうに腕を組みながらこちらをジロジロ見ている。


「ふぅーん、まぁでも妹の私から見てもお姉ちゃんは綺麗だと思うわ。ただ、ライバルは多いわよ。」


確かに、あれだけの美貌ならそうだろう。まぁそもそもおれがどう思おうが、セシルはおれのことをただの妹の友達くらいにしか見ていないだろうから、ライバルとかそんな話は全くないな。おれはそう自分に言い聞かせ、この浮ついた気持ちをなんとか丸め込んだ。おれは必死に話を変えるべく、アリスに話を振った。


「そいえば、アリスがセシル様にしたおれの話って、何を話したの?どうせろくな話じゃないんでしょ?」


するとアリスは肩の周りの髪をくるくると指で遊びながら右上を仰ぎ見る。


「んーなんだったかな。あ、そうそう、私が川で水浴びしてたら覗かれた挙句押し倒されたって話をしたのよ。そ、そんなことよりあんた、こんなところでいつまでも私と話してていいの?」


こいつ、本当はなんの話をしたんだ。人間が右上を見るときは過去を思い出しているのではなく、妄想で話をしているときだ。まぁ話を向こうも変えようとしてるし、ちょうどよかったのかもしれない。


「そうだね、それじゃあそろそろ見回りに戻ろうかな。」


おれはそう言ってその場を去ろうとすると、アリスがおれを呼び止める。


「そ、そいえば、あんた今日この仕事が終わったら時間あるんじゃないの?」


おれは振り返る。


「うん、ゼラスとご飯食べに行くくらいかな。」


それを聞いたアリスはなにかを言いにくそうにモジモジしてる。それを見たおれが首を傾げると、何かを決心したようだ。


「前に約束した稽古、よかったら今晩つけてくれない?」


そいえばそうだった。色々あって忘れていたが約束していたんだった。


「うん、いいよ。じゃあ、仕事が終わったらアリスのとこに行けばいい?」


アリスは少し照れ臭そうに頷いていた。ゼラスにも言っておかないとな。

こうして、今度こそ本当にアリスと別れ再び城の見回りに戻ることにした。

やはり騎士団ともなると女性陣からの人気も高いのでしょうか?もちろん、グレンの人当たりの良さもあると思いますが色々楽しそうです。


そして出てきたアリスの姉、セシル。その美しさにはショウもタジタジのようです。しかしその様子を見て不満げなアリス。果たしてショウの気持ちはどこにむかうのでしょうか?

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新作、始めました! 不遇な扱いを受けていた少年コウが、その境遇に隠された力を使いこなし、内面と向き合いながら強くなっていく冒険譚です! 是非、お読み頂けると嬉しいです!

忌み子のボクが、“気”と自分を受け入れたら、いつの間にか世界の命運を握ってました-

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