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それぞれの戦い

ゼラスの待つ穴の下に辿り着き、ゼラスに声をかける。


「ゼラスー、お待たせー!引き上げてもらっても良いかなー?」


おれは穴の上に向かって呼びかけると、少し遅れて物音がする。


「今ロープを降ろすのでちょっと待っててください!」


言葉と同時にスルスルと上からロープが降りてくる。きっと、おれがいつでも戻ってくることができるように準備しておいてくれたのだろう。おれはそのロープを手に取り、引っ張っても抜け落ちることがないことを確認すると岩肌に足をかけながら岩の壁を登る。


「ったく、ココが穴を開けなければこんな壁登りしなくても良かったのに。」


おれは道具袋の中で丸まってるココに向かって文句を言ってみるが聞こえないフリをしている。しばらく登るとゼラスのいるところまで辿り着く。


「災難でしたね。まさかこんなところに穴があるなんて。地図にも載ってないところですよ、ここ。」


ゼラスはおれにギルドで渡された地図を指差すが、たしかにそこにはおれが見てきたような穴は空いていなかった。おれはココに落とされた話をしようかとも考えたが、その話をすると最終的にはおれが転移者であることを説明しないといけなくなるため、ココはただの猫ってことにしておこう。


「そうなんだ、なんなんだろうね、この穴。あ、そいえば、穴にね、どっかから迷い込んじゃった白猫がいて、そいつを助けてたら時間かかっちゃったよ。」


おれは道具袋に入ってたココを取り出すと、地面にそっと降ろしてやる。すると、媚びを売るかのように「にゃぁ」とか言いながらゼラスの足元にすり寄っている。


「あはは、可愛いですね、この子。でも、こんな洞窟にこんな綺麗な白猫、珍しいですね。」


おれは頷いてしらばっくれる。


「あぁ、ほんとに。こんなとこにいるのにお腹も空かせず、こんなに綺麗なんてちょっと不思議過ぎるんだけどね。まぁでも白猫は縁起がいいって言うし、おれについてくるからとりあえず外には連れて行ってやろうかなって思って。」


ゼラスはココの媚びにすっかり当てられたらしく、なんの異論もないようだ。


「うん、それが良いですね。ちなみに、名前はもう決めたんですか?」


おれがココだと伝えると、ゼラスはいい名前ですね、と褒めていた。きっとゼラスは猫が好きなのだろう。ゼラスがココと戯れているのを見て、ふと転移前に実家で飼っていた猫のことを思い出す。もうかなり歳だと思うんだけど、元気にしてるのだろうか?


◇◇


おれたち一行は洞窟をさらに奥へ奥へと進んでいた。やはり深く潜れば潜るほど、魔素がどんどん強くなってくるのを感じる。先を歩くゼラスが地図を見ると、目的のキングスライムまであと少しのようだ。


「この先を曲がればもうキングスライムのナワバリで」


ゼラスがそこまで言いかけると同時に大きくバックステップを踏んで回避する。


「と思ったら、すぐそこにいました!」


ゼラスの回避とともに既におれも臨戦態勢に入っていて、剣を構えていた。ちなみに、ココはなんてことないと言った顔でおれたちの後ろで顔を洗っている。ゼラスに攻撃を仕掛けてきたのはキングスライムそのものではなく、ただのスライム君の色違いだった。


「ここは狭くて戦いにくいから、何とかして少し先の広いところまで行こう!」

ゼラスが色違いスライムをその爪で切り裂き、前に進むのに続いておれも後を追う。すると、曲がり角を過ぎた先にはこれまで見たこともない大きなスライムとその周りに何十匹かスライムが群がっていた。


「うげ、こりゃちょっと気持ち悪いな。」


そう、まるでスライムの楽園と言わんばかりに、色とりどりの色んなスライムがそこには集っていた。おれたちの侵入に気がついたようで、手前にいたやつから順にこちらに向かって飛び跳ねて近づいてくる。


「まずは周りのやつから倒していきましょう。」


ゼラスは早速自分に飛びかかってきた緑色のスライムをその爪で切り裂き、更に違う方向から飛んでくるスライムを蹴り飛ばして壁にぶつけて潰していた。


「さすがゼラス、おれも頑張らなきゃな。ココ、危なくないところでじっとしてろよ?」


おれもそう言うと目の前の水色のやつやら、既に潰れかかった形をしたスライムなど、手当たり次第に切り刻む。


「よーし、ゼラス、どっちが多く倒すか競争だね!」


こうしておれたちはスライム達を駆逐し始めるのであった。


◇◇


どれくらい時間がたったであろうか。しばらくおれとゼラスがスライムを倒すと、一際大きなスライム、キングスライムが動き始める。どうやら子分たちにはおれたちの相手は無理だと判断したのだろう。


「遂に動き出したぞ!おれがこいつを相手するから、ゼラスは小っちゃいの頼んでもいい?」


ゼラスは足元のスライムを蹴飛ばしながら返事をする。


「ぼくのリーチが短い爪よりも、ショウくんの剣の方がやりやすいと思います。小っちゃいのは任せてください。」


しかし、そう言うと同時に、目にも留まらぬ速さの銀色をしたスライムがゼラスに向かって体当たりを仕掛ける。


「ぐ!?」


本能的に気配を感じ取ったゼラスは咄嗟に腕を出して身を守るが、その衝撃に元いる場所から吹き飛ばされる。


ゼラスはその攻撃を受けた方向を見ると、その銀色のスライムは今度は大きな口を開いてゼラスへ突っ込む。


「そんな直線的な攻撃では!」


ゼラスは突っ込んでくる軌道に爪を残し、その身を避ける。


ガギギギギッ


金属と金属が擦れる音がすると、衝突した衝撃で暗闇の中に無数の火花が飛び散る。


「ツッ!?」


相手に傷くらい付くかと思ったら、傷ひとつない相手に驚くゼラス。


「こんなやわな爪じゃ話にならないってことですね!」


そう言ったゼラスは自らの爪を外し、再び迫り来る銀色スライムに意識を集中し、対峙するのであった。


◇◇


その少し前、おれは周りのちびっこスライムを切り刻みながらキングスライムを立ち向かおうとしていた。ようやくキングスライムへの道が開き、おれは必殺の横斬りを繰り出す。


ザクッ!


景気の良い音と共に振り抜かれる剣。決まった。おれは手応えからそう確信していた。しかし、やはり現実はそんなに甘くなかったらしい。


確かに切り口はしっかりと広がっていたがなんてことはないようで、キングスライムはおれに向かっておれよりも遥かに大きな口を開いてこちらに飛びかかってくる。その光景は、初めてスライムに襲われた時のことを彷彿とさせ、おれは一瞬飛び退いてしまう。


そして、その隙を狙うかのように取り巻きのスライム共がおれに向かって飛び掛かってくる。


「にゃろめー!」


おれは迫り来るスライムらをあるやつは斬り、またあるやつは蹴りながら、何とか退路を切り開く。そして、なんとかおれはその攻撃を凌ぎきると、目の前で起きている光景に思わず目を疑った。


ピギュゥゥゥ


何と、おれが斬り傷を付けたキングスライムに、取り巻きのスライムが集まり、その傷口を補修していたのだ。


「うげ、まじかよ。こりゃ長丁場になるな。」


おれは再び剣を握りしめ直し、消耗戦を覚悟するのであった。

いよいよ始まる討伐対象キングスライムとの攻防。相手の攻撃こそたいしたことなさそうですが、その回復量はかなりのもののようです。

そしてゼラスが戦う銀色スライム、倒せたら一気にレベルがあがりそうな相手ですがゼラスは斬撃の効かないこの相手をどう倒すのでしょうか?

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新作、始めました! 不遇な扱いを受けていた少年コウが、その境遇に隠された力を使いこなし、内面と向き合いながら強くなっていく冒険譚です! 是非、お読み頂けると嬉しいです!

忌み子のボクが、“気”と自分を受け入れたら、いつの間にか世界の命運を握ってました-

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