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満月の夜

オルバとマーナの桃色の話に浮き足立つ城内だったが、再び満月の夜が近づいてくると、次第にマーナは例の人格が顔を出し始め、不安な夜を過ごしていた。


そんな様子をみたオルバは、城内の噂もあってか、少し調子に乗っていた。


「大丈夫です、マーナ様。私がちゃんとお守りしますよ。」


しかし、浮かない顔をするマーナ。もちろん、自分の別人格のことも気になるが、オルバとの噂を聞いたタリスの反応が気になっていた。


一方その頃のタリスは、ステンとマリに宥められていた。


「まぁまぁ、タリスもいい加減マーナ様のことを諦めろよ。あのオルバが相手じゃ流石のタリスでもどうしよもないさ。」


マリも頷く。


「そうそう、あの騎士団ナンバーワンモテ男のオルバが相手じゃねぇ。それに、マーナ様から誘いがあったらしいじゃない。」


2人の追い打ちに、タリスはがっくりと落ち込み、頭をテーブルに突っ伏する。ただ、突っ伏したままタリスは考える。どうも腑に落ちないでいたのだ。しばらくそのままいると、ステンにバーンと背中を叩かれる。


「まぁさ、いつまでもクヨクヨしてたり、ストーカーみたいに情報集めたり、気持ち悪いぜ!男なら直接気持ちを確かめに行ってこいよ!」


マリも大笑いしながら賛同している。こいつら、人ごとだと思って話のネタくらいにしか考えてねぇな、とタリスは思うが、一方で2人の言うことも一理あるとも思っていた。そして、突然スクッと起き上がると、タリスは宣言する。


「よし、おれ、次の満月の夜にマーナのところに会いに行ってみる。」


そこでステンはずっこける。


「この流れ、普通なら今から行く流れだろうよ?何で満月の夜なんだ?」


しかし、マリはふと閃く。


「タリス、もしかして女性の月の力を借りるつもり?」


そこに食いついたのはタリスではなくステン。タリスはそんなものがあったのかと、キョトンとしている。


「な、なんだ!?月の力って。」


マリはしょうがないわね、といった雰囲気で話し始める。


「女性はね、満月の夜になると精神的に不安定になるの。で、その不安定な感情と相手を好きって言う気持ちは、実は切り分けることができなくて、不安定な気持ちでいるときに対して好きでもない相手と一緒にいると、自分がその相手のことを好きなのかもって勘違いしちゃうことがあるんだって。」


「「な、なるほど。」」


2人声を揃えるとマリは呆れていたが、エールを飲むと続ける。


「でも、たしかに悪い選択ではないと思うわ。頑張って、振られたら、私が代わりに慰めてあげるわ。」


マリはその胸元を人差し指でぐいっと下げると、マリのその仕草にタリスは無関心だったがよこでステンが思いっきり鼻の下を伸ばしていた。


「ん、んじゃあおれも誰かに振られて、」


そう言いかけた瞬間、マリの平手打ちがステンの猿頭をはたき飛ばしていた。


◇◇


そしてやってきた満月の日、タリスは仕事を終えるといつも王宮内で情報収集をする従者と話しながら、マーナの部屋に案内してもらう。


「今はオルバ様がすぐ隣の部屋で待機しているようですね。」


流石に寝る時まで一緒なんてことはないか、とタリスは安堵で胸をなでおろすと、緊張しながらマーナの部屋の扉をノックする。


「マーナ、おれだ、タリスだ。2人でちょっと話がしたい。」


すると、声が聞こえたのか、中から物音がするが次に聞こえたのはタリスが予想だにしない内容だった。


「だめ、タリス。来ないで。」


一瞬タリスは耳を疑う。しかし、マーナは続ける。


「もう、私が、私で無くなってしまう。こんな私を、あなたには見せたくないの。だから、帰って。」


マーナはタリスに話しかけながら、泣いているようだった。タリスはどうしていいかわからずその場に立ち尽くしていると、話し声が聞こえたのか、オルバが部屋からでてくる。


「あれ、タリスじゃねえか。マーナ様に何か用か?マーナ様は、おれに守って欲しくて、おれに声をかけてくれたんだ。護衛は2人もいらねぇよ。用がないならさっさと帰んな。」


タリスは自分の爪のせいで手のひらから血が滲むほど、自分の手を握りしめる。そして最後の駄目押しと言わんばかりに、マーナの声が聞こえる。


「オルバ、そこにいるの?もう、ダメみたい。助けて。」


それを聞いたオルバはマーナに返事をすると、タリスにむかって言い放つ。


「今のでわかっただろう?マーナ様が必要としているのがおれだってことを。さぁ、わかったらさっさと帰ってくれ。」


オルバはマーナの扉の鍵を開けると中に入っていき、再び鍵をかける。1人残されたタリスは、来た廊下を戻りながら考えていた。


「マーナのあの取り乱し方、一体どうしたんだろう。それに、私が私でなくなってしまうって、どう言うことだ?」


タリスの頭の中は疑問でいっぱいだったが、マーナはタリスに会いたくない、その気持ちだけは間違いなかったようなので、タリスは大人しく帰ろうとしていた。その時である。


ドゴン!


何か重たい物が壁にぶつかった音がしたと思うと、狼のような咆哮がマーナの部屋から聞こえる。


「ワォーン!」


タリスは慌てて踵を返し、マーナの部屋へ戻ると、中て何かが暴れまわってる音が聞こえる。


「マーナ、大丈夫か、マーナ!」


タリスが扉をノックするが返事はない。そして、二度目の咆哮が城内に響き渡っていた。

満月の夜に響き渡る狼の声。オルバが守っているはずのマーナは無事でしょうか?そして、オルバに完全に出し抜かれた形のタリスは立ち直れるのでしょうか?筆者だったらこんな状況だったら走り出して逃げたくなってしまいたくなりますが。。

いよいよ回想編も終盤に差し掛かってきています。引き続き、お楽しみください!

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新作、始めました! 不遇な扱いを受けていた少年コウが、その境遇に隠された力を使いこなし、内面と向き合いながら強くなっていく冒険譚です! 是非、お読み頂けると嬉しいです!

忌み子のボクが、“気”と自分を受け入れたら、いつの間にか世界の命運を握ってました-

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