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王宮に立ち込める暗雲

なんだか、今日投稿したら高評価とブクマを何件かまとめて入れていただけたので全く予定していなかったのですがちょうどキリも良いので第4章終わりまで連続投稿してしまいたいと思います。


皆さま、引き続きお楽しみ下さい!

魔物と化したイータを魔法を使ってなんとか倒したおれ。イータは魔物となってしまったようだったが、倒した後に魔石は残らなかった。その点からすると、魔物と言うより、まだ人間に近かったのかもしれない。それにしても、本人はこうなることをわかっていて、望んでああなったのだろうか。そもそも、どうやってあんな風になってしまったのか。色々と疑問が残る。それはさておき、おれは目の前のアキラに、いや、ラキカに助けてもらったことを謝らなければならない。


「すみません、最後の最後でラキカさんに助けられなかったら危なかったです。」


おれはアキラに向かって言うとアキラは大笑いする。


「あはははは!誰だ、ラキカさんって。」


おれがへ?と呆気に取られた顔をする。あれ、違ったのか?でもさっき、いつから気がついてた?とか言ってたよな、と思っていると。


「なーんてな、やっぱりバレちまったか。一度お前と真剣勝負してみたかったんだよな。なにせ今のお前じゃ多分相手できるやつが試験を受ける中にはほぼおらんからな。」


おれはやっぱりそうか、と胸を撫で下ろしていると歩けるようになったのか、タリスが近づいてくる。


「やっぱりお師匠様だったんですね。それにしてもショウ、本当に強くなったな。」


それを聞いたアキラは頷いているが、タリスはおれの頭をガシガシと撫でてくる。


「ちょっとお父さん、痛いよ。」


そんな様子を微笑ましそうに見ながらアキラはドテッと倒れこみながら言う。


「さぁ積もる話は後だ。とりあえずおれを医務室に連れて行ってくれ。」


タリスが肩を貸してアキラを医務室に連れていく。そしてしばらくすると、そこへアリスとマーナがやってきた。タリスもアキラもグレンからもらった回復薬ですっかり回復していたが、逆におれたちが元気だとわかると、マーナとアリスは無茶をし過ぎだとか、逃げれば良かったのに、とか怒っていた。きっと心配だったのだろう。この場では、グレンがいるからかアリスはおれの魔法のことについて一切触れなかった。


男3人が女性2人にこっ酷く言われているのを聞いて気の毒に思ったのか、一緒にいるグレンがおれとアキラに声をかける。


「さぁ、優勝、準優勝の2人がこんなところにいつまでもいてはダメだな。すぐに選抜試験の閉会式がある。元気になったならステージへ戻ろうか。それに、アリス様もですよ。」


そう言われたアキラは好機と見たのか、おれと外に出るように促す。


「そっか、んじゃおれたちは行かなきゃな、ショウ、行こうぜ!」


こうしておれはアキラに連れられるようにそそくさとその場を後にするのであった。


ステージまでに行く廊下でおれはアキラに気になっていたことを確認する。


「みんなの前ではアキラとして振る舞った方が良いんですよね?」


アキラはコクリと頷く。


「あぁ、そうしてくれ。」


「それにしても、どうやって子供の姿になったんですか?」


アキラはおれの問いに口の前で指を振って答える。


「それは秘密だよ、ショウくん。」


こいつは一体何の真似なんだろうか、本当に中身はあのオッチャンラキカだと思うとちょっと引いてしまう。そんなことをおれは思ったが、まぁしょうがない。言えないこともあるだろう。大人の事情ってやつだ。


広場に着くと、おれたちがイータを倒してから少し時間が経っていたからか、観客席には人がもどってきていた。そして、ステージ上には二次試験の参加者たちが待っていた。


おれとアキラを見た二次試験参加者は思い思いの言葉を口にする。


「おれたち、あんなとんでもないのと戦ったのか。ある意味良い経験になったな。」


「あいつら、歴代の騎士団の中でも相当強くなるんじゃねぇか?」


「木刀でよかったな、あれ、普通の剣だったらおれたちあっという間にあの世行きだぜ。」


おれはそんな言葉を聞きながらステージに上がると、後ろからはアリスとグレンがやってきた。


グレンがステージ上で閉会を宣言する。


「今回優勝したアキラや準優勝のショウを始め、本当に実力のある受験者が沢山いた。これはこのアーガンスの力が強くなっている証拠だ!今年は残念な結果に終わってしまったものもいるかもしれない。だが、是非この国のために、ここにいるみんなが精進してほしい。それでは、これで王宮騎士選抜二次試験、並びに王宮騎士選抜試験の閉会を宣言する!」


会場からはステージ上の全員に向けて盛大な拍手が送られる。観客の目から見ても、今年の試合はレベルが高かったのだろう。そして、横にいたアキラはおれの腕を取ると、自分の腕と合わせてその腕を高らかと上げると、更にその拍手はより大きくなり、その拍手の音は遠く離れた町の端まで聞こえるほどだった。


◇◇


時は少し遡りおれ達がイータと戦っている頃。


二次試験での非常事態で兵士はほぼ出払っている王宮内のアーガンス王の側にそいつはいた。


「アーガンス王、王妃、なんでも騎士選抜試験の受験者が魔物になってしまったそうです。ここも万が一のことがあるといけません。しばらくの間身を隠して下さい。」


アーガンス王と王妃はお互いの顔をみて頷くと、玉座の後ろにある緊急用の隠し通路へ向かう。そして、その無防備な背中に、話しかけていた張本人の凶刃が迫る。


その気配に気がついたアーガンス王は護身用に携帯している短剣でなんとかそいつの第一撃を躱し、大声で助けを呼ぶ。


「曲者じゃ!この者をとらえ、ろ」


しかし、その声も半ば、アーガンス王はそいつに斬られ絶命する。


横でそれを見ていた王妃は恐れのあまり腰を抜かし、声も出ない。


「王妃なら王妃らしく、気丈に最期まで振る舞ってもらわないと。守る価値がないじゃないですか。」


そいつはそう言うと、王妃に向かって剣を一振り。その剣は王妃の頭と体の間を綺麗に分け隔て、一帯を血の海に染めるが、そいつはまるで興味がないようで、斬った先も見ずに、どこかへ歩いていった。


◇◇


舞台は再びステージ上に戻る。解散を告げられた試験者たちは各々の帰路についていた。そしておれは気になっていたことをグレンに確認する。


「ねぇ、これで試験終わりって言うけど、おれの面接は?」


グレンは答える。


「あぁ、そうだったね。言い忘れていた。君達2人については、勝敗がどうであっても合格にすることを、騎士団内部で了承済みだ。」


「へ?」


おれはグレンの言葉を聞いて思わず情けない声を出す。


「はっきりいって君達の実力は騎士団の現メンバーと比較しても遜色ない実力だ。それに、おれへの態度や相手への立ち振る舞いなども含め、騎士として問題ないと判断している。」


いつのまにか近くで聞いていたアリスがおれの背中を叩く。


「あんたやったじゃない!私は今年はダメだったけど、次回こそ選抜試験を通って見せるわ!」


おれは突然のことすぎてどう喜んだら良いかわからなかった。正に青天の霹靂だ。ただ、少しずつ実感が湧いてくる。


「そっか、そうなんだ。おれ、選抜試験を通ったんだ。」


あの辛く、長い修行生活を思い返す。ラキカに放置されたり、略奪者に扮して思いっきり殴られたり、とことん打ちのめされかけたと思ったら暗殺者に暗殺されかけたりと、この日の為だけにここ数年頑張ってきた。それが報われたと思うと、熱い想いが込み上げてくる。それを見たアキラはおれの肩をポンポンと叩き、声をかける。


「これまでよく頑張ったな。おめでとう。」


おれは思わず涙ぐみながら、アキラに縋るように膝をついてしまい、声にならない声をあげる。


「本当に、今までありがとうございました。」


そのおれを落ち着かせるようにアキラはおれの肩をポンポンと叩くのであった。


そんな感動的な場面はグレンに向かって凄い形相で走ってくる兵士によってガラリと変えられてしまう。


慌てて走ってくる兵士からグレンが何かを告げられるとグレンはおれたちに本当におめでとう、とだけ残して兵士に連れられて王宮の方に走っていった。


この時グレンが兵士から告げられた話が、アーガンス王と王妃の暗殺だったと知るのはそれからしばらくしてからだった。


どうやら、この一連の騒動は何者かに仕組まれたものだったようですね。ショウは無事騎士団は入ることになって安堵しているでしょうが、実はこの一件は始まりにしか過ぎないようです。

次話は第4章クライマックスです!お楽しみにしてください!

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新作、始めました! 不遇な扱いを受けていた少年コウが、その境遇に隠された力を使いこなし、内面と向き合いながら強くなっていく冒険譚です! 是非、お読み頂けると嬉しいです!

忌み子のボクが、“気”と自分を受け入れたら、いつの間にか世界の命運を握ってました-

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