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全員参戦

イータが誰かの手によって魔物にされ、観客は大混乱、そしてアキラはイータを止めるべく戦っていた。


「ちくしょう、流石にあれだけ動き回って、第二門まで開けたせいでちょっと疲れて来たぜ。」


相変わらず丸腰で戦っていたアキラに、イータの攻撃が当たることはなかったが、アキラには少しずつ疲れの色が見えて来ていた。更に、イータはただ攻撃するだけではアキラに攻撃が当たらないと悟ったのか、その手に人間の頃使っていた電撃魔法を纏っていた。

アキラは先程見せた赤色の気の力を使えば素手でもイータを倒せる可能性があると思っていたが、倒せるか倒せないかわからない賭けに出るよりも、この場にいるタリスや、グレイブ、そしておれがくる確率の方が高いと踏んで最初の攻撃が効かなかった時点で逃げに徹していたのだ。


そして、しばらく逃げに徹していたが、ようやくアキラの読みが当たる。避難する観客の人混みから何とか抜け出てタリスが来たのだ。イータに向かって背後から走るタリス。アキラはその様子を察し出来るだけイータがタリスに気がつかないようにイータの気を引くために攻撃する。


そして、遂にタリスがイータに剣が届く範囲になり、イータの背中から全力で斬りつける。背後から斬りつける卑怯者、なんて言う話は無しである。


ザクッ!


タリス自身の剣がイータの背中に大きく斜めの傷をつける。


しかし、その斬撃を受けたことでイータはタリスの存在に気がつくと振り返りざまに裏拳を放つ。まさか全力で斬った斬撃の直後に攻撃を受けると思っていなかったタリスは、この攻撃を躱しきれず、咄嗟に腕で防ぐ。なんとか直撃は避けたものの、その裏拳の勢いでステージの外まで吹き飛ばされ、その腕にかけられていた電撃の魔法の効果でタリスはその場でうずくまった。


「おい、タリス!」


辛うじてタリスは手をあげるが、まともに戦える状態ではなかった。すぐにアキラはタリスの元へ行き、様子を見ると、命に関わるほどの怪我ではなかった。


「お前の剣、ちょっと借りるぞ。」


タリスの剣を持ち、タリスとイータの間に割って入るアキラ。タリスの剣をビュンビュン振り回す。


「ったく、相変わらず重たい剣使いやがって。」


アキラはその剣を構えるとイータを睨む。


「だが、さっきよりはずっとましだ!ちょっとの間、そこで大人しくしててくれよ、タリス!」


そう言うと、アキラは地面を蹴ってイータの腕を再び掻い潜り斬りつける。さっきのように、全力で斬りつけて今度は剣が折れたら元も子もないから様子を見ながらの一撃だった。


ザシュッ


爽快な音と共にアキラの剣はイータを捉えるが、残念ながらその斬撃は痛くも痒くもなさそうに、相変わらずイータはその腕をアキラめがけてバタバタと振っている。


「こいつ、痛覚が無くなってやがる。」


アキラは自分の剣戟でつけた傷を見ながら呟く。さっきのタリスやアキラのつけた傷からは確かに血が流れている。痛みを感じないほど浅くもないように見える。だが、現にイータは全く痛そうではない。


「めんどくさいな、全く。」


アキラは深いため息をつきながら、ただひたすらイータを全身傷まみれになるまで斬りつけ続けていた。


◇◇


おれは医務室から出て、イータと戦うアキラの元へ急ぐ。


「流石にやられてるってことはないと思うが持ってるのが木刀じゃあな。」


廊下を抜けてステージのある広場に出ると、その明るさに一瞬目が眩む。しばらくして目が慣れてくると、イータを全身傷まみれにしているアキラ、そして観客席の壁に吹き飛ばされたタリスの姿が見える。


おれは急ぎタリスの元へ走る。


「お父さん、大丈夫!?」


おれの呼びかけにタリスはその目を開ける。


「あぁ、大丈夫だ。あいつの魔法で今は体が思うように動かないだけだ。」


おれはホッとしているとタリスは続ける。


「だが、アキラがヤバい。お前との試合で相当力を使ってるし、相手がタフすぎる。普通に剣で斬るだけではやつは倒せない。この剣で、お前も手助けしてやってくれ。」


タリスはその腰に差していたもう一振りの剣をおれに手渡す。おれは剣に目をやると見覚えのある剣だった。


「これは、アリスの?」


タリスは頷く。


「本当はおれとアキラで、おれの剣とこの剣を使ってやつをなんとかするつもりだったがこのザマだ。息子にこんなことを頼むのは情けないが、よろしく頼む。」


おれはアリスの剣を受け取る。


「うん、お父さんはゆっくり休んでて。ぼくの本当の力、そこで見ててよ。」


そう言うと、おれは剣を持ってアキラが戦うステージへと飛び乗る。


「待たせたね、アキラ。いや、ラキカさん。」


アキラの元へたどり着いたおれはアキラに話しかける。そして、それを聞いたアキラは鼻で笑い、おれに伝える。


「いつから気がついてた?まぁいい、その話は後だ。こいつをなんとかするぞ!」


おれは頷くとイータがおれたち2人を目掛けてその腕を振り下ろす。おれとアキラはそれぞれ反対側に避けると、アキラはイータの正面、おれは背面に位置を取る。


「ハッ!」


おれは無防備なイータの背面を斬りつけるとその背中に傷をつけることはできるが、やはり全く効いている様子がない。ステージは、イータの血で血だまりができていて、イータは相当量出血しているはずだがそれでもピンピンしていた。


そしてイータは背中側に攻撃したおれと、正面にいたアキラが視界に入る位置までバックステップでさがると、今度はおれを目掛けて攻撃してくる。おれはイータの腕を躱しながら、何度か攻撃するが、アキラの時と同様、表面に傷をつけるだけだった。


斬れ味付与を使えば一瞬だったが、まだ観客の逃げ遅れがいるし、マーナとアリスはこちらを見ている。今ここで魔法を使うのは良くないだろう。また、このまま攻撃を続けていればいつかはイータもあの出血では動けなくなる。それまでは我慢比べだ。


アキラもどうやら同じ考えなのか、攻撃を避けて、斬ってのヒットアンドアウェイを繰り返す。


しかし、いつまでたってもイータの動きが衰えることがなく、逆におれとアキラの疲れの色が出始めていた。おれはイータの腕を攻撃をしながら、観客席をちらりと確認すると、観客席はほぼ避難が完了していた。アリスはいるが、そろそろ決めるか。そう思って地面に着地した瞬間、地面の血だまりでおれは足を滑らせる。やっぱり実践はこう言ったことがあるから怖い。


「クッ!?」


そして、足を滑らせてバランスを崩したおれを、待ってましたと言わんばかりにイータの腕が襲う。だめだ、この距離は逃げ切れない。その時だった。


「ハッ!」


アキラが咄嗟におれの目の前に飛び出し、剣でイータの腕を薙ぎ払う。しかし、イータの腕には電撃魔法がかけられているため、その腕を払ったアキラは電撃を浴び、その場で硬直してしまう。


おれはすぐさま体勢を立て直し、イータの標的をおれにするためにイータへ攻撃を仕掛ける。しかし完全にイータの標的はおれではなくアキラになっていた。


なんてことだ、おれのせいでアキラが、いや、ラキカがやられかけている。その瞬間、ラキカに言われたことを思い出した。


「魔法の使用は命の危険が迫った時だけにしろ。」


そうだ、今はおれの命の危険はないが、ラキカには危険が迫ってる。今使わないでいつ使うんだ?そう思うと同時におれはその右手に込めた魔素を剣に流す。そして、斬れ味付与を発動させると手に持った剣が魔法の光で赤く輝く。


観客席で見ていたアリスはボソリと呟く。


「何よ、やっぱり魔法をちゃんと使えるんじゃない。」


おれは腰を低く落とし、そしてしっかりと剣を構えるとこれまで何百回と練習してきた滝斬りをイータ目掛けて行う。


「ハッ!」


気合いと同時におれの放った一閃はスッという音と共にイータの体に横一線の筋をつける。イータは一瞬何が起きたかわからないようで、その顔をキョロキョロとさせている。しかし、アキラに向けて振り上げていたその腕はいつまでたっても振り下ろされることはなかった。そして、上半身はおれにつけられた剣筋を境に、下半身だけを残して後ろに倒れていくと、青白い光の粒となって元のイータの体諸共消えていった。


「全く、大した弟子だぜ。」


アキラはその様子を見ながらポツリと呟いた。

タリス、折角出てきたのにあっさりやられてしまってちょっと申し訳ない展開でした。そしてアキラの正体がラキカだと言うことが出てきましたね。Akiraの名の由来はRakikaを並び替えるとできるから、と思いついた当初は思ってましたが実はKの数が合わないってことに後から気がつきました。ちょっと展開的にはベタ過ぎる気もしますが、まぁ良しとしてください。

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新作、始めました! 不遇な扱いを受けていた少年コウが、その境遇に隠された力を使いこなし、内面と向き合いながら強くなっていく冒険譚です! 是非、お読み頂けると嬉しいです!

忌み子のボクが、“気”と自分を受け入れたら、いつの間にか世界の命運を握ってました-

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